リーダーシップ

2026.07.30 08:28

AI導入を成功させるリーダーに欠けているものとは

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『アンダーカバー・ボス(潜入ボス)』という番組がこのアイデアをゴールデンタイムのテレビ番組にする何世紀も前に、アッバース朝のカリフであるハールーン・アッラシードは、すでに同じ秘策に気づいていた。自分の帝国で何が本当に問題になっているのかを知るための賢明な方法の一つは、臣民に変装して自国を歩き回ることだ。伝説によると、彼は貧民の格好をして臣民たちの話に耳を傾け、自身の治世に対する彼らの率直な意見を聞き出していたという。

長年にわたりSalesforce(セールスフォース)のグロース&イノベーション・エバンジェリストを務めたティファニー・ボバによれば、AIの導入に取り組む現代のビジネスリーダーたちも、彼の知恵を参考にできるという。今年9月、ボバはバンクーバーで開催される『TruNorth AI Leadership Summit(トゥルーノースAIリーダーシップ・サミット)』の北米大会で基調講演を行う予定であり、同イベントでは私がホストを務める。このサミットは、企業のリーダー、経営幹部、SVP、VP、AI部門の責任者やGM、創業者、政策立案者、研究者、投資家を対象とした完全招待制の限定イベントであり、人間中心で責任あるAI導入の促進に焦点を当てている。

変化の量という問題

サミットの開催に先立ち、私はフューチュラム・グループのチーフ・ストラテジー&リサーチ・オフィサーであり、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のベストセラーとなった『Growth IQ(グロース・アイキュー)』および『The Experience Mindset』の著者であるボバにインタビューを行い、リーダーたちがどのようにしてテクノロジーを成功裏に、かつ細心の注意を払って組織へ導入できるかを探った。ハールーン・アッラシードの戦略を彷彿とさせる彼女の解決策を深く掘り下げる前に、まずは経営陣の頭を悩ませている、関連する難題を認識する必要があるとボバは指摘する。

「今日、リーダーたちが直面している最も困難な課題の一つは、押し寄せる変化の量です」とボバは語った。「AIは、彼らが管理を求められている数ある課題の中の、単なる“もう一つのもの”にすぎません」。リーダーシップにかかるプレッシャーの一例として、オリバー・ワイマン・フォーラムの『CEOアジェンダ2026レポート』は次のように指摘している。「時間軸は圧縮され、取締役会は監視を強めている。現在、CEOは全計画プロセスの半分を1年未満の短期的な時間軸に費やしており、これは2025年の43%から上昇している。また、96%のCEOが少なくとも1つの分野で取締役会の関与が増加したと報告している」

可視化された盲点

すでに押し寄せているあらゆる変化を前に、過密な業務に追われるリーダーたちがいざAIを受け入れる決断を下したとしても、依然として立ち塞がる「盲点」があるとボバは言う。彼女はこの盲点について長年研究してきた。2022年のChatGPTの登場や、Suno AIやGemini Veo(ジェミニ・ベオ)といったアプリをもたらした生成AI革命よりもはるか前に、彼女がSalesforceで行った研究では、経営陣と彼らに報告を行う現場の一般社員との間で、最も顕著な認識ギャップを生んでいるのは「テクノロジーのリテラシー(精通度)」であることが突き止められていた。

AIは、ある一つの重大な理由によって、その広がる溝をさらに深めることとなった。それは、AIの導入を望むトップ層の人間が、自社を強化するために使おうとしているまさにそのツールを、自身で使った経験がほとんど、あるいはまったく持っていないということだ。結局のところ、個人がAIを利用することと、企業組織がそれを導入・運用することの間には大きな違いがある。そのため、CEOはAI統合が自社にもたらすものについて壮大なビジョンを描くことはできても、導入成功の鍵を握る実践的な知識や経験が不足しているのだ。

『アンダーカバー・ボス』のジレンマ

ここで先述のテレビ番組の比喩に戻る。この番組を通じて浮き彫りになるボバの指摘は、CEOたちが自社の工場の現場で何が起きているかを知るために変装しなければならないほど、いかに現場から乖離しているかという点だ。社員を欺くためのウィッグやメイクといった変装は、そもそも不要なのだ。「どうせ誰も彼らの顔などわかりません。なぜなら、彼らはオフィスから一歩も出ないからです」とボバは指摘する。「もしオフィスを出て現場に行っていたなら、番組内で発見したような問題の数々には、とっくに気づいていたと思いませんか?」

彼女の言いたいことは、テレビで放映される劇的な「気づき」の瞬間はCEOを驚かせるかもしれないが、現場で働く人々にとっては少しも珍しいことではないということだ。実際、業務を滞らせているのは、極めてありふれた不具合であることが多い。例えば、在庫管理機能との連携が不十分なPOS(販売時点情報管理)システムであったり、在庫への事前タグ付け機能を改善すべき倉庫管理システムであったりする。もしCEOが、会社の稼働を支える不可欠な実務を行っている従業員たちと共に、現場の泥臭いディテールにもっと時間を割いていれば、そうした不具合に気づけたはずだ。さらに言えば、組織的な大混乱に発展する前に問題を予測できていたはずである。

この洞察をAIの議論に応用してみると、リーダーシップがこのように現場を人任せにしたままでいた場合に、どのような問題が待ち構えているかが見えてくる。コールセンターの担当者に突然AIアシスタントを支給したところで、最先端の技術を導入したという理由だけで売上数字が向上することはない。特に、それ以外のワークフロー環境がほとんど変わらないままであればなおさらだ。

繰り返すが、この時代に対応するためにリーダーに本当に必要な資質は「テクノロジーのリテラシー」であり、この話は再び「TruNorth AI Leadership Summit」へとつながる。ボバをはじめ、EQUSのCEOであるサンディ・カーターや、ブリティッシュコロンビア州の人工知能・新技術担当大臣であるリック・グルマック閣下らが登壇する際、そのメッセージはまさにこの聴衆、すなわち、自社でAIを実装する実務者たちの立場に身を置くべきCIO、最高AI責任者(CAIO)、CEO、そして創業者たちに向けられたものになるだろう。

「企業におけるAI変革は、リーダーがAIを単なるテクノロジーの取り組みとして捉えるのをやめ、人間中心の取り組みとして捉え始めたときに成功します」と、TruNorth AI Leadership Summitのセールス&マーケティング担当SVP、ジェームズ・“ジミー”・スチュワートは語る。「そのためには、経営陣が現場の業務に最も近い従業員たちとより多くの時間を過ごす必要があります。なぜなら、導入の状況、摩擦、および機会に関する最高のインサイトが、役員室で生まれることはめったにないからです」

現場で「手を汚す」ことの必要性

企業がワークフローに人工知能をうまく統合するのを阻む隠れた摩擦に話を戻すと、ボバが提案するリーダーシップの解決策は、ウィッグをつけて潜入調査するよりもシンプルで実行しやすい。それは「30日間、現場で過ごす」というものだ。これはトム・ピーターズが1982年のビジネスの名著『エクセレント・カンパニー』の中で提唱した「歩き回る経営(MBWA)」を応用したものだが、彼女はさらに一歩踏み込んでいる。

「コールセンターの部門長がIT部門の責任者とただミーティングを重ねるだけでは、AI導入はうまくいきません」とボバは言う。「リーダー同士が集まるだけではダメなのです。導入を成功させるには、コールセンターの個々の担当者とITマネージャーが、トップ経営陣と共に動き、プロジェクトを最後までやり遂げることが必要です」。その成果として、組織図の枠を超えて社内の多様なステークホルダーが密接に協力し合い、課題と解決策の双方を自分事として共有するソリューションがもたらされることになる。

このように現場に深く関わって協力することは、古代の戦略を現代的に改良したものと言える。かつてのカリフのやり方には、すべてを完璧に把握しているように装う欺瞞が必要だったが、現代のリーダーは自身の弱さや未熟さを率直に認めることで利益を得られる。大昔の君主は、自分の無知を認めつつ力強くあり続けることはできなかった。これに対して、現代のリーダーは、包み隠さずオープンに導くことで報われるのだ。そしてそのすべては、アッラシードとは逆のことをすることから始まる。すなわち、自己改善のために自らを低くすることだ。そうすることでリーダーとしての品格が高まり、組織という『帝国』がどれほど大きくとも、より良い成果を生み出す信頼関係を構築できるようになるだろう。

forbes.com 原文

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