同報告書は、「女性が所有する企業は1570万社にのぼり、これは全企業の40.6%を占める」と主張している。
一見すると、これは祝福すべき事態だ。女性はかつてないほどのハイペースで起業しており、起業こそが経済的自立や世代を超えた資産形成への道であるという言説に後押しされている。
だが、見出しの背後にあるデータをよく見ると、まったく別の物語が浮かび上がる。確かに、起業する女性はかつてないほど増えている。しかし、実際の家計にとって重要な指標のほとんどにおいて、女性の状況は改善していない。
過去3年間のデータが実際に示すもの
過去3回分の報告書を並べてみると、主要な数値が上昇した後に下落しているのがわかる。ウェルズ・ファーゴの報告書「女性所有企業の影響力(The Impact of Women-Owned Businesses)」によると、女性が所有する企業が創出した売上高は、2024年が2兆7000億ドル(約442兆円)、2025年の報告書では3兆3000億ドル(約540兆円)、そして2026年の報告書では2兆8000億ドル(約458兆円)だった。全企業の売上高に占める彼女たちのシェアは、5.8%から6.2%へと上昇したものの、その後4.6%へと低下した。毎年、より多くの企業が設立されているにもかかわらず、経済全体から得られるパイの分け前は縮小しているのだ。
現在、男性が所有する企業の平均年間売上高が89万6000ドル(約1億4700万円)であるのに対し、女性が所有する企業の平均は17万9000ドル(約2930万円)にとどまる。しかも、これはあくまで平均値だ。典型的な売上高(中央値)を見ると、年間わずか3万5000ドル(約573万円)にすぎない。
人種間の格差はさらに深刻であり、状況は悪化の途をたどっている。従業員を雇っていない「ソロビジネス(個人事業)」に目を向けると、白人女性の平均年間売上高が3万8000ドル(約622万円)であるのに対し、黒人女性の企業は2万3000ドル(約376万円)から2万2000ドル(約360万円)へと減少している。また、従業員を雇っている黒人女性の企業の総売上高は、企業数が増加しているにもかかわらず、約740億ドル(約12兆1000億円)から585億ドル(約9兆5800億円)へと減少した。最も急激な落ち込みを見せたのは上位層だ。2025年の報告書では、従業員を雇っている黒人女性企業の平均売上高は102.8%増の100万ドル(約1億6400万円)を超えていた。しかしそのわずか1年後、同平均は65万ドル(約1億600万円)へと急落している。
そして、黒人女性による起業件数の増加を歓迎している人々のなかで、その推移が黒人女性のW2(給与所得者)としての雇用喪失とほぼ完全に一致している事実に気づいている人がいるだろうか、と問いかける価値はある。
雇用から押し出されている層と、「起業」が賞賛されながらも同時にビジネスの売上高が急落している層は、全く同じ人々なのである。
女性の収入がもともと低い分野に集中する事業
低い総売上高は、意欲の欠如によるものではない。報告書によると、女性が所有する企業の大部分は「その他のサービス業」に分類されている。これはヘアサロンやネイルサロン、ランドリー、ドライクリーニングなどを一括りにしたカテゴリーであり、女性が働くあらゆるセクターのなかで最も平均売上高が低い。それに続くのが、ヘルスケア・社会援助、事務支援、そして小売業だ。これらはケア、清掃、サービスを提供する業界であり、それらが低収益である理由は、低賃金である理由と同じである。
私たちは社会として、他人の世話をする労働に対してごくわずかな対価しか支払わないことを選択してきたのだ。
これらは、雇用されて働く女性が、男性よりも収入が少ない分野と同じである。サービス職は、政府が追跡している主要な職業カテゴリーのなかで最も賃金が低い。専門職に就く女性の3分の2は教育と保健分野に集中しており、そこでは女性の賃金が同等の仕事をする男性よりも依然として低い。その一方で、高給のコンピューターやエンジニアリングの分野で働く女性は約8人に1人にすぎず、専門職の男性の半分がこの分野で働いていることと対照的だ。そのため、女性が仕事を辞めて起業する場合、すでに自分がいたのと同じ低賃金の分野で始める傾向があり、売上高が高く男性が主流のセクターは、彼女がそこに就職しようとする場合でも、その隣でビジネスを構築しようとする場合でも、依然として障壁に阻まれたままである。
起業は、女性を職業上の分断から解放していないようだ。
称賛される「一人起業」に潜む、経済的破綻の危機
1400万社を超える企業のうち、10社中9社には従業員がいない。
典型的な「一人企業」の年間売上高は約3万5000ドル(約573万円)だが、ここから15.3%の自営業税を支払い、雇用主からの補助がない健康保険料を支払わなければならない。つまり、平均的な女性の一人企業の総売上高は、国内で最も低賃金とされる主要な仕事カテゴリーのフルタイム雇用で得る賃金よりも、額面の時点で低いということになる。
雇用されて働く通常の仕事であれば、社会保障の記録が自動的に構築され、雇用主が税金の半分を負担してくれる。しかし個人事業主は、その両方を自分で支払わなければならない。そして、多くの企業がそうであるようにビジネスの純利益が少なければ、将来受け取る給付金はごくわずかか、あるいはほぼゼロになってしまう。中規模の雇用主のもとで給与所得者として働いていれば、家族医療休暇法(FMLA)に基づき、雇用が保障された休暇を取得する権利が得られる。しかし、自営業者はこの対象から除外される。有給の家族休暇や医療休暇制度を設けている一部の地域であっても、自ら経営者である彼女たちが自動的にカバーされるわけではない。自分で制度を探し、加入手続きを行い、保険料を自己負担しなければならず、たとえそうしたとしても、休職中のポジションを維持してくれる雇用主がいないため、通常は雇用保障を得られない。通常の雇用であれば、退職金の積立マッチングが得られる可能性もある。
起業や独立という名のもとに、私たちは、どれほど低くともセーフティネット(底板)を持っていた何百万人もの女性たちからそれを取り上げ、代わりに「野心」というスローガンを渡してしまったのだ。
浅薄なデータ分析がもたらす、浅薄なインセンティブ
これが、こうした報告書がこのような形で書かれ続ける理由に他ならない。
企業の数を数えるのは簡単であり、その数は増加傾向にあるため、右肩上がりの数字を公表するのは気持ちが良いものだ。しかし、データを浅くしか見なければ、現状を変えようとするインセンティブも浅いものになってしまう。評価基準が「どれだけ多くの女性がLLC(合同会社)を所有しているか」であれば、解決策はウェブセミナーやマインドセットに関するセミナーの開催、そして拍手を送ることだけで済む。しかし、評価基準が「女性の経済的安定が向上したか」であれば、取り組みはより困難で、誠実なものにならざるを得ない。
もちろん、起業は素晴らしい道である。私自身、これまでに3度起業しており、その都度、経済的にもキャリア的にも大きな飛躍を遂げる機会を得てきた。
とはいえ、もし私たちが女性の経済的な幸福を真剣に考えるのであれば、システム全体の変革が必要となる。女性のための雇用の機会を減らすのではなく、増やすことだ。つまり、特に黒人女性に深刻な影響を与えている現在のレイオフ(一時解雇)の波を、「自分のボスになる」機会などではなく、まさに緊急事態として扱うべきだ。また、リスキリング(学び直し)や女性の就労支援に対する本格的な公的投資も必要となる。さらに、同一労働同一賃金と資本の公平性を同時に実現しなければならない。なぜなら、これらは同じ闘いだからだ。他人のために働く女性には公正な賃金を、そして自営する女性には、ビジネスが生計の手段となり得るよう、長期的に支援する十分な資金を提供する。
それらを測定しようとしない限り、「起業する女性が増加」という見出しは進歩を示すものではない。それは、実質的なキャリア形成や資産形成につながる雇用から静かに押し出され、確かな足場を物語と引き換えにせざるを得なかった女性がいかに多いかを示す見出しにすぎないのだ。



