判断と意思決定を研究する心理学者たちは、「努力ヒューリスティック」と呼ばれる現象を特定している。これは、客観的な基準ではまったく同じ成果物であっても、より多くの労力を費やして作られたものの方が、簡単に得られたものよりも価値が高いと思い込む人間の傾向のことだ。
その典型的な例が絵画や詩を用いた実験だ。制作者が完成までに長い時間をかけたと知った瞬間、同じ作品であってもより優れた芸術として評価される。しかし、このヒューリスティックは他人の仕事を評価するときだけに留まらない。自分自身の1日の過ごし方を評価する際にも影響を及ぼす。実際に何が生み出されたかに関わらず、骨の折れる仕事は「価値ある成果」として評価され、簡単に終わった仕事は「どこか手抜き」のように捉えられてしまうのだ。
この事実に深く向き合う価値はある。なぜなら、パフォーマンスや燃え尽き症候群(バーンアウト)に関する研究で常に現れるパターンを説明しているからだ。すなわち、「最も懸命に働いている」と自認する人が、必ずしも最も多くの成果を上げているわけではなく、心身の負荷という感覚は、実際の進捗を示す指標としては驚くほど当てにならないということだ。
以下に紹介する5つの習慣には、ある共通点がある。一見すると努力の放棄のように思えるが、よく観察してみると、どれも非常に洗練された自己管理術なのだ。
習慣1:午後のスランプを無理に乗り切ろうとせず、仮眠をとる
午後遅くに訪れる注意力の低下は、夜間の眠気を制御する体内時計と同じ「概日リズム(サーカディアンリズム)」による予測可能な生理現象だ。これに抗って無理をしても、目覚ましい成果が得られるどころか、かえって効率が低下するのがオチである。
しかし、仮眠が単なる一時しのぎ以上の効果を持つことは、学術誌『Nature Neuroscience』に発表された2003年の研究で、学習との関係性から明らかになっている。深い睡眠段階に達するのに十分な長さの仮眠をとると、知覚学習タスクにおいて、丸一晩の睡眠をとった場合とほぼ同等の学習効果が得られ、夜間の記憶定着と同じような形で、新しい情報が脳に定着することが示された。
眠気でかすむ頭のままデスクに向かい、非効率なままスランプを乗り切ろうとすることは、単にその瞬間の快適さを損なうだけではない。午前中の努力を持続可能な成果へと変換するプロセスそのものを台無しにしてしまう可能性がある。
習慣2:つまらないタスクは(可能であれば)お金を払って他人に任せる
幸福度と時間の使い方に関する研究には、「時間的豊かさ(Time Affluence)」と呼ばれる概念がある。これは、1日の中に十分な時間があると感じられる感覚のことだ。学術誌『Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)』に掲載された2017年の研究によると、時短サービスにお金を払う人々(モノを買うのではなく、家事をアウトソーシングするなど)は、人生の満足度が高いことが分かった。さらにその後の追跡実験では、働く大人はモノを購入したときよりも、時間を節約できる買い物をしたときの方が、幸福感が高いと感じることが示された。



