その理由は謎でもなんでもない。原油価格が上昇したことで、インフレ懸念や金利の先高観が強まった。その結果、金相場に下押し圧力がかかっているのだ。
こうした動きは債券市場を見ればよくわかる。10年物米国債の利回りは先週4.71%まで上昇し、2025年1月以来の高い水準をつけた。ドイツ国債の利回りも2011年以来の水準まで切り上がっている。
長年の読者ならご存じかと思うが、筆者はかねて金相場を左右する最も重要な要因は実質金利だと主張してきた。実質金利が上昇すると、金は苦戦する傾向がある。債券などの利付き資産と異なり、金には利息がつかないためだ。
また米国債の場合、保有者に占める外国勢の割合が2008年の56%から2025年末には30%にまで下がっている。いまでは米国債の「限界的な買い手」(市場価格や利回りを最終的に決めることになる買い手)は、価格に敏感な米国の投資家になっているということだ。彼らは、より高い利回りという形で十分な見返りを求めている。こうした状況は、戦闘が終結しても大きくは変わりそうにない。
中国は下落局面で金をせっせと買い増している
中国人民銀行(中銀)は6月に金を15トン購入した。これは2023年10月以降、単月では最大の購入量だ。この結果、中国の公式の金保有量は2346トンに達した。国際的な金業界団体のワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、中国の金保有量は20カ月連続で増えており、この期間は過去最長となっている。
ここで注目すべきなのは、中国が何を買っているかよりも、どのように買っているかだ。金価格が下落するにつれて、中国による金の買い増しペースは加速している。今年上期、金価格が1月下旬につけた最高値から30%近く下落するなかで、中国は金を40トン追加購入した。ニューヨークを拠点とするヘッジファンド、ツワイグ・ディメンナのアナリストによると、中国による今年上期の金購入額はおよそ57億ドル(約9300億円)と推定され、購入の大部分は第2四半期に行われた。金価格が大きく上昇していた2025年、中国による金購入額は通年でおよそ20億ドル(現在の為替レートで約3300億円)だった。
伝説的なヘッジファンドマネジャーであるジョン・ポールソンの見立ても踏まえれば、中国は歴史に残るような大勝負に出ているのではないか。2007年にサブプライム住宅ローン市場の空売りで巨額の利益を上げたポールソンは先週、米CNBCのインタビューで、金の長期的な上昇相場はまだ始まったばかりだとの見方を示した。
「人々が法定通貨への信認を失うにつれて、代替資産としての金は引き続き成長していくでしょう」とポールソンと予想し、「金は法定通貨に取って代わり、世界で最も適した『準備通貨』になりつつあります」とも述べている。


