会社で働いていても、雇用が以前ほど安定しているとは言えない状況のなかで、起業に踏み切るプロフェッショナルが増えている。米国勢調査局によると、2026年6月に提出された事業申請は53万1000件を超えたという。そのうち、1年以内に従業員を雇用する事業になるのはごく一部だとみられるが、この申請件数を見れば、従来の雇用形態以外で収入源を確保しようと模索する人が多いことがわかる。
経験豊富なプロフェッショナルであれば、コンサルティングやフリーランス、コーチング、顧問サービス、あるいは、取得済みのスキルを使ったスモールビジネスというかたちでの起業が考えられる。そうすれば、副収入を得られると同時に、従来の働き方では欠けていたであろう「オプショナリティ(選択肢)」も手に入るかもしれない。
オプショナリティがあれば、状況が変化した時に進める道が1つ以上になる。では、起業する労働者が増えている要因は何か、そうした動きが雇用の安定を巡る考え方を変えつつあるのはなぜかを説明していこう。
事業設立の動きは引き続き盛ん
2020年のパンデミックを受けた混乱によって、事業を設立する動きが一時的に急増したが、現在でもこの動きは、コロナ禍前を優に上回っている。その一方で、米国勢調査局によれば、事業設立の申請件数と、従業員を雇用した事業構築とのあいだには、大きな開きがあることもわかっている。
事業申請は、単なる意思表示だ。事業の立ち上げに向けて正式な一歩を踏み出したことを意味するが、実際に開業し、売上を得て、継続運営が可能なビジネスになった証しではない。個人事業主のまま続ける人も多いし、少しずつ事業を構築していく人も多いだろう。あるいは、自分のビジネスアイデアでは事業が成り立たない、という判断に至るケースもあるかもしれない。
本業を辞めずに、実験的な試みとして起業することも可能だ。自分の専門知識が、人に「お金を払いたい」と思わせるだけの力があるかテストすることを、当初の目標とすることも多い。その過程では、金銭的なリスクに直面することもあるが、その一方で、新たな収入源を獲得したり、単一の雇用主への依存度を下げられる可能性もある。
雇用市場の減速により、「リスクの見積もり方」も変わりつつある
労働市場は、たとえ表面上は健全に見えても、求職者にとっては依然として厳しい場合がある。米イェール大学予算研究所(Yale Budget Lab)によると、失業者が失業している期間の平均は、2023年はじめは20週未満だったが、2026年はじめには約26週間と、より長くなっている。また、失業した翌月に新しい仕事を見つけた人の割合は24%で、2022年の30%より低下している。
こうした状況により、単一の雇用主に依存するリスクは変わってきている。失業率が比較的低い状況が続いているとはいえ、いったん解雇されれば、何カ月も収入が途絶えてしまうおそれがあるのだ。しかし、別の収入源を確保しておけば、適切な機会が見つかるまで待つ時間的な余裕ができるし、最初に見つかったオファーをすぐに受けなければ、と焦らずに済む。



