「IPを次の石油に」急成長する中東アニメ市場の未来

ブカーリ・イサム|マンガプロダクションズ CEO、マンガアラビア代表兼編集長

ブカーリ・イサム|マンガプロダクションズ CEO、マンガアラビア代表兼編集長

今春行われた世界最大級アニメイベント「AnimeJapan 2026」。会場の東京ビッグサイトにはコンテンツの世界観を表現するさまざまなブースが並んでいたが、学園モノでもファンタジーでもない、趣がやや異なるブースがあった。出展していたのは、サウジアラビアのアニメ会社「マンガプロダクションズ」。ナツメヤシがデザインされたブース内では伝統的なお菓子がふるまわれ、会場にそこだけ中東が出現したようだった。CEOのブカーリ・イサムは、出展の意図をこう語る。

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「ビジネスデーはネットワークを広げることが目的です。一方、パブリックデーのこだわりは、サウジにも漫画やアニメ、ゲームが好きな人、日本の文化を愛する人が大勢いることを知っていただくこと。それが伝われば成功です」

実際、サウジで日本のアニメは人気が高い。

「私は『キャプテン翼』『ベルサイユのばら』『るろうに剣心』を見て育ちました。アメコミの主人公は最初からスーパーヒーローですが、日本の主人公は弱い立場から努力を重ねて最終的に自分の夢を実現します。中学生になった私の娘は『ハイキュー!!』を見てからバレーボールを始め、性格が明るくなって学校の成績も良くなった。日本のアニメはジャンクフードではなく、精神と頭にいい栄養を与えてくれるのです」

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日本のコンテンツを愛したのは、マンガプロダクションズ創業者、サウジのムハンマド皇太子も同じだった。彼は20代だった2011年に、「日本のコンテンツのパワーで次世代に夢と感動とインスピレーションを与えたい」と同社を設立。18年には東京オフィスが開設された。

事業は多岐にわたる。柱となるのはIP制作だ。20年1月に東映アニメーションと協働でテレビシリーズ『アサティール 未来の昔ばなし』を制作。全世界で1億回以上再生された。さらにアニメ長編映画『ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語』を制作。この作品はディストリビューション(配給・配信)も自社で行い、50以上のプラットフォームを使って6カ国語で展開した。

自社IPのディストリビューションで自信を深めたことで、日本のIPのディストリビーションにも進出。『キャプテン翼シーズン2 ジュニアユース編』や『グレンダイザーU』といったIPを中東その他の地域で展開。さらに『アサティール』はゲームの開発・配信も行い、『グレンダイザーU』ではゲームのディストリビューションを担当した。

「360度でビジネスが広がっているのは、私たちが自社でIPをつくってきたからでしょう。IPクリエイションの痛みをよくわかっているから、『あの会社ならヘンなことはしない』と信頼してもらえる」

イサムは自社の強みをこう分析したが、事業が広がった要因として、中東市場の拡大は見逃せない。「2024年から30年までのアニメコンテンツ産業成長率は、日本が4%、世界が7%と予測されています。それに対して中東は14%で、世界で最も高い成長率が見込まれている」。マンガプロダクションズは、その市場を開拓するパートナーとして、日本や世界のIPホルダーから期待されているのだ。

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文=村上 敬 写真=平岩 享

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