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経営・戦略

2026.08.10 13:30

日本のCFOに求められる「3つの顔」:柳良平

柳良平

柳良平

「守り」を司り「攻め」にも携わる。そして、CEOの最強のパートナーでもある。元エーザイCFOの柳良平が語る、日本企業の価値を最大化するCFOの役割とは。

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CFOには本来、大きくふたつの役割がある。それは、「バリュースチュワード」と「バリュークリエイター」だ。バリュースチュワードとは企業価値の長期的な維持、保証を担うこと。具体的には決算や納税、コンプライアンス、内部統制といった「企業価値の番人」としての役割だ。これらは日本の伝統的なCFO、あるいは財務経理担当役員が注力してきたことの延長線上にある。

一方、「バリュークリエイター」は、事業戦略にかかわり、時に大胆な意思決定をしてCEOをサポートし、企業価値を創造していく役割だ。こちらは、多くの日本企業のCFOにとっては、まだまだ道半ばだ。財務規律、リスク管理という「守り」を司るバリュースチュワードと、企業価値創造という「攻め」に責任を負うバリュークリエイター。このふたつの顔をもつことが、CFOのあるべき姿といえる。

ではCFOは、どうやって企業価値を最大化していけばよいのか。具体的な戦略は、財務戦略と非財務戦略に分かれる。重視すべき財務戦略のひとつ目は、ROE(自己資本利益率)経営やROIC(投下資本利益率)経営と呼ばれるような、資本コストを意識した経営。ふたつ目は、厳格な採択基準を設定したうえでの価値を生む投資サポート。3つ目は、持ち合い株の売却や株主還元、現預金の活用など最適な資源活用を含むバランスシートマネジメントだ。今年予定されている金融庁と東京証券取引所による「コーポレートガバナンス・コード」の改訂の目玉のひとつは、企業の「稼ぐ力」の向上に向けた現預金の活用だ。「現預金等の金融資産や実物資産等の経営資源を成長投資に有効活用できているかを含め、不断に検証を行うべき」といった内容が盛り込まれる可能性がある。

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非財務戦略こそ日本の「伸びしろ」

そして、日本企業の「伸びしろ」と言えるのが、非財務戦略だ。これからの時代は、知的財産や人的資本、自然資本などの「見えない価値」を「見える化」することで、企業価値を高めていく必要がある。実際、世界的にみて人的資本などの無形資産の価値が企業価値に占める割合が、徐々に大きくなっている。知的財産の評価を手がける米Ocean Tomo社が2025年に発表した調査によれば、米国市場(S&P500)における時価総額に対する無形資産の割合は92%に達している。一方で、日本市場(日経225)では52%にとどまっている。したがって、日本企業のCFOは、無形資産の価値を定量化することで企業価値を創造するリーダーシップを発揮することが求められる時代になっている。

次ページ > CFOのもうひとつの役割

文=中居広起

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