ポーランドは、大規模な公共部門の技術調達を対象とした「技術主権テスト」の導入準備を進めている。デジタルインフラを国家安全保障上の問題として扱う政府が増えるなか、米国の技術プロバイダーへの戦略的依存を軽減しようとする欧州各国政府の最新の一員となる。
提案されている仕組みは、大規模な公共ITプロジェクトに適用され、公的機関が重要システムとデータに対する管理権を維持しているか、また外国ベンダーへの依存を低減しているかを評価するものだ。
この構想の背景には、少数の外国製技術プロバイダーへの依存が、ポーランド国外で下される政治的・法的決定に不可欠な公共サービスをさらしかねないという懸念の高まりがある。政府は、外国製技術を完全に排除するのではなく、レジリエンスを強化し、運用の継続性を維持し、重要なデジタルインフラに対する国家の統制を強めることが目的だと説明している。
主権テストの仕組み
ドナルド・トゥスク首相が発表したこの評価は、500万ズロチ(130万ドル(約2億1300万円))を超える政府の技術調達、および1500万ズロチ(390万ドル(約6億3900万円))を超えるインフラ事業に適用される。
評価項目には、システムのアーキテクチャに対する国家の統制、AIモデルの重みに対する所有権もしくはアクセス権、ベンダーロックインからの自由などが含まれる。
ポーランドのデータセンターおよびクラウドサービス提供会社Polcomでセキュリティ・品質担当ディレクターを務めるアルベルト・シュチェパニアク氏は、最大の脅威は「技術的なものではなく、司法管轄権に関するもの」だと述べる。
同氏は、外国法制下にあるプロバイダーに依存することは、重要インフラを外部の法体系にさらすことになると主張し、特に米国のFISA 702条やCLOUD法などの法律を挙げている。
CLOUD法に基づき、米国当局は、米系企業が保有するデータが欧州に設置されたサーバーに保存されている場合であっても、そのデータへのアクセスを要求できる。
ポーランドが技術主権の強化を求める理由
この提案は、ポーランドが公共行政のデジタル化において欧州連合の主導国の一つである一方で、輸入デジタル技術への依存が拡大し続けているなかで登場した。
ポーランドのデジタル輸入は、2016年の90億ズロチ(23億ドル(約3770億円))から2024年には約480億ズロチ(125億ドル(約2兆500億円))へと拡大し、年平均25%の成長を記録した。同時期のデジタル輸出は約30億ズロチ(7億8000万ドル(約1280億円))でほぼ横ばいであり、同国のデジタル貿易赤字は約450億ズロチ(117億ドル(約1兆9200億円))に上っている。
アナリストは、10年後までにデジタル輸入がポーランドの石油、ガス、石炭の輸入総額を上回る可能性があると試算している。
クラウドコンピューティング市場はこの依存構造を象徴している。マイクロソフト、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、グーグルの3社を合わせると、ポーランドのクラウド市場の70%以上を占めており、競争を制限し、少数のグローバルプロバイダーへの依存を強めている。
米国製技術を放棄せずに依存を減らす
政府関係者は、技術主権とはポーランドを外国製技術プロバイダーから切り離すことを意味しないと強調している。
デジタル省と、トゥスク首相が任命した諮問機関「未来評議会(Future Council)」の提言によれば、米国製技術プロバイダーを完全に置き換えることは技術的にも経済的にも望ましくないという。
その代わり、政府は市場のおよそ20〜30%に相当する戦略的セグメント、すなわち政府向けクラウドサービス、データベース、比較的単純なエンタープライズシステムなどの分野で、国内代替品の構築を目指している。関係者は、これらの分野で代替品を開発することで、国家の交渉力が高まり、レジリエンスが向上し、デジタル支出のより大きな部分をポーランド国内に留めることができると主張する。
デジタル省サイバーセキュリティ局副局長のマルチン・ヴィソツキ氏は、技術主権は外国のサプライヤーからの孤立ではなく、国家が情報に基づいた選択を行い、データを統制し、運用の継続性を確保し、技術的依存関係を管理する能力として理解されるべきだと述べている。
シュチェパニアク氏は、この目標達成は野心的だが5年以内に実現可能だと考えている。同氏が指摘する欧州の試算によれば、2035年までにクラウドサービスやソフトウェアへの現在の支出のうちわずか15%を欧州域内に留めるだけで、370億ユーロ(420億ドル(約6兆8800億円))の付加価値を生み出し、46万人以上の雇用を創出できる可能性があるという。
公共調達がビッグテックの支配を強めてきた
ワルシャワに拠点を置くInstrat財団によれば、ポーランドの現行の調達モデルは外国製技術プロバイダーへの依存を強めてきたという。同財団の最近の報告書では、分析された72件の公共入札のうち99%が、競争を不必要に制限する仕様を禁じる調達規則があるにもかかわらず、マイクロソフト製品の代替を直接的または間接的に排除していた。
結果として、国内企業や欧州企業は、独自ソフトウェアで競争するのではなく、マイクロソフトのライセンス再販業者としての役割に留まることを余儀なくされている。
「セキュリティの低下、レジリエンスの低下、そしてポーランドや欧州で開発される技術への投資の減少は、EU域外のたった一つのサプライヤーにこれほど依存することの結果である」と、報告書の著者であるヤロスワフ・コペチ氏は述べた。同氏は、単一プロバイダーへの依存が公共行政を価格上昇、サービス中断、サービス撤退の脆弱性にさらすと警告している。
シュチェパニアク氏は、ポーランドの機関が「国内産クラウド」を購入したとしても、それが単に米国のハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)のインフラを再販しているだけのものであれば、技術主権の向上にはつながらないと主張する。「請求書のロゴではなく、サプライチェーン全体を評価すべきだ」と同氏は述べている。
ポーランド経済ネットワーク(Polish Network of Economics)による別の報告書は、デジタル主権は国家安全保障の問題として扱われるべきであり、クラウドサービス、政府のITシステム、公共データはエネルギーや交通ネットワークに匹敵する重要インフラとみなされるべきだと主張している。
ポーランド・クラウド協会(Polish Cloud Association)会長のヴィエスワフ・ヴィルク氏は、公共サービスを提供するためにポーランドが統制できない技術に依存し続けることは、長期的な戦略的脆弱性を生み出す可能性があると述べた。
「極端なシナリオでは、そうしたサービスへのアクセスを失うことは、重要な原材料やエネルギー供給の途絶に匹敵する影響を国家の機能に及ぼしうる」と同氏は語った。
技術主権を巡る欧州全体の動き
ポーランドの取り組みは、欧州全体で形成されつつあるより広範なトレンドを反映している。各国政府は、技術的な完全なデカップリングを回避しつつ、非欧州系の技術プロバイダーへの戦略的依存を減らそうとしている。
米国との関係が不透明さを増すなか、少数の米国企業へのクラウドサービスの集中に対する懸念が高まっており、欧州の技術的レジリエンス強化に向けた取り組みも進んでいる。
6月、欧州委員会はEU域内の技術主権強化に向けた最も包括的な取り組みを発表した。同パッケージは、半導体、クラウドコンピューティング、人工知能、オープンソースソフトウェアなどの戦略分野において、非欧州系プロバイダーへの欧州の依存を減らすことを目的としている。



