国際サッカー連盟(FIFA)は、2030年ワールドカップ(W杯)の放映権を販売する1つの方法をすでに示している。それは、他の大会とのセット販売(バンドル)だ。アイルランド共和国において、FIFAは2026年大会と2030年大会の放映権を単一の入札にまとめた。米国での次回の入札は、テレビとストリーミング視聴者に対する期待値を塗り替えた北米開催のW杯の後にやって来る。
数字はFIFAに強い交渉力を与えている。だが、それで採算の計算が単純になるわけではない。
決定的な問いは、どの企業が最も大きな小切手を切れるかではない。その小切手に見合う価値を生み出せる事業モデルを持つプラットフォームはどこか、である。
2030年W杯が再定義するスペイン語圏視聴者の価値
米国のヒスパニック系人口の割合は全体の約20%にすぎないにもかかわらず、テレムンド(Telemundo)とピーコック(Peacock)は、2026年大会のグループステージにおいて、米国のW杯視聴者全体の48%を獲得した。両プラットフォームのデジタル平均分視聴者数は200万人に達し、2022年大会グループステージの57万8000人から251%増加した。
これは単なる人口動態上の成功物語ではない。放映権の価値そのものを変えるものだ。
FORBES | モーリーン・カー
FOXはいかにしてW杯中継を記録破りの装置へと作り替えたのか
英語とスペイン語を組み合わせたパッケージになれば、スペイン語需要は二次的な販売対象ではなく、価格の下限を形成する要素になる。英語放映権の入札者は、テレムンドが示した視聴者を考慮せずに大会の価値を見積もることはもはやできない。一方でスペイン語放送事業者には、米国向け商品の全体を取得し、配信するための財務力が必要になる。
ピーコックは全104試合をスペイン語でライブ配信した。その後、テレムンドとピーコックは準々決勝4試合で平均1040万人の視聴者を獲得し、この段階におけるスペイン語視聴者数として過去最高を記録した。ストリーミングは単なる別の配信窓ではなく、大会の視聴者拡大の一部になった。
2030年W杯は5つの異なる事業モデルを試す
FOXは、制作経験、広告主との関係、大会ブランドとの結びつきを備えた既存権利者であり、放映権を守る立場にある。同社が提案しているロク(Roku)の買収は、企業価値で約220億ドル(約3兆6100億円)と評価されており、ファーストパーティーの視聴データと、世界で1億世帯を超えるストリーミング利用世帯との直接的な関係をもたらすことになる。同時に、次の大会を前に資金調達と統合の負担も生じる。
FORBES | モーリーン・カー
FOXの220億ドル(約3兆6100億円)規模のロク買収は、Tubiにホーム画面上での支配力をもたらし得る
NBCユニバーサル(NBCUniversal)には、1つの大会が複数の事業に同時に貢献し得ることを示す最も明確な証拠がある。テレムンドの広告、ピーコックのサブスクリプション、そして放送によるリーチである。しかし、コムキャスト(Comcast)が計画するNBCユニバーサルとスカイ(Sky)の非課税分離は、スポーツ予算がどこに置かれるのか、分離後の会社が将来の放映権にどれほど積極的に支出するのかについて不確実性を生んでいる。
YouTubeは、最も明確な挑戦者モデルを持っているかもしれない。同社はすでにYouTube TVと主力プラットフォームを通じてNFLのサンデーチケット(Sunday Ticket)を販売している。マルチビューやキープレーを含む機能により、大会を放送スケジュールの集合ではなく、インタラクティブなサブスクリプション商品として扱うことができる。
ディズニー(Disney)とESPNは、確立されたスポーツ運営体制に加え、ライブイベントを軸に構築された消費者向け直接配信(DTC)サービスを持つ。問題はポートフォリオへの圧力だ。ディズニーのNBAおよびWNBAとの11年契約は2035-36年シーズンまで続き、すでに過密な放映権予算にさらに大きな負担を加えている。
ネットフリックス(Netflix)は異なるタイプの入札者だ。2027年と2031年の女子W杯に関する米国での独占契約は、全試合と全言語を対象としており、英語とスペイン語の個別放送も含む。このFIFAとの契約は、男子大会の放映権が再び市場に出る前に、ネットフリックスに制作面での試金石と統括団体との実務関係を与える。
時差による「減価」が伴う2030年W杯
2026年大会の記録は、カナダ、メキシコ、米国で開催された大会によって生み出された。対して、2030年W杯は主にモロッコ、ポルトガル、スペインを拠点に開催され、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイで100周年記念の3試合が行われる。
この地理的条件は、米国の広告商品を変える。マドリードで夏の午後9時にキックオフする試合は、米東部では午後3時、ロサンゼルスでは正午になる。試合の価値はなお高いが、米国のプライムタイムに自然に収まる試合は少なくなる。
これこそが、FIFAの記録的視聴者数を前面に出した販売ストーリーの内側に隠れたディスカウントである。2026年大会には、開催国チーム、有利な時間帯、そして大陸内で行われる104試合があった。W杯は依然として希少なメディア資産である。しかし2030年には、米国での視聴時間帯はそれほど有利ではなくなる。
生成AIが一部の脚本付き制作コストを引き下げるにつれて、その希少性はさらに価値を増す。制作ツールは決勝戦をシミュレートできる。だが、生中継で実際に起きる不確実性を再現することはできない。
勝者となるのは、最大のスポーツ予算を持つ企業ではない。米国のオフピーク時間帯を、複数の事業にまたがって収益化できるプラットフォームである。



