今、世界、そして日本でフィランソロピーに新たな動きが生まれている。「社会変化に対する明確な意図のもと、資源と関係性を戦略的に設計し、学習を重ねながら、その実現可能性を高めようとするフィランソロピー」を意味する「インパクトフィランソロピー」だ。フィランソロピー新潮流に迫る。
世界で今起きている「フィランソロピーの新たなうねり」。米国発の大きな動きは日本にどのような影響を及ぼすのか。
米『Forbes』2026年2月・3月号では、毎年恒例の米国フィランソロピスト(慈善家)「TOP25」が発表された。全米TOP25のフィランソロピストたちは、生涯で2750億ドルの寄付をしており、昨年比で340億ドル増加した。(巨額の資金だが、彼らの総資産に占める割合はわずか14%で、21年以来の最低水準だ)
米『Forbes』が、今年のフィランソロピストの顔として紹介したのは、マッケンジー・スコット。そして、メリンダ・フレンチ・ゲイツ、Facebook共同創業者ダスティン・モスコヴィッツの妻、カーリー・ツナの3人だ。米『Forbes』が注目したのは、上位25人のうち6人が独身女性で、11組が夫婦(または元夫婦)である点だ。非営利団体「Lever for Change」CEOのセシリア・コンラッドは「女性がより迅速に、かつ、寛大に寄付する傾向があること。富の創出者や創業者ではない人々は、所有する意識が薄いため、フィランソロピーにおいて『より多くのリスク』を取ることに前向きだ」と話す。
なかでも、特に注目したのがマッケンジー・スコットだ。スコットは、多様性、公平性、包摂性(DEI)をめぐる激しい政治的反発が巻き起こるなか、自身の信念を貫き、25年末の3カ月間にわたり、18大学に対し、少なくとも7億6000万ドルを寄付した。19年にジェフ・ベゾスと離婚して以来一貫して、派手な宣伝を避け、ほとんど条件を付けずに寄付をしてきた。最大の寄付先はハワード大学への8000万ドル。1700万ドルは医学部へ充てられ、残りはハワード大学が自由に使える寄付だという。「この規模の制限のない資金は過去に前例がない」とハワード大学の広報担当者は米『Forbes』誌に語り、同大学が寄付について知ったのは、スコットの寄付プロジェクト「Yield Giving」の担当者からメールが届いてからだったと述べた。
マッケンジー・スコット「年72億ドル」寄付
彼女の25年の寄付総額は72億ドルにのぼり、米『Forbes』による12年以降の調査で、最大の年間寄付額となった。支援した団体は186にのぼる。これまでスコットは7年足らずで、2500以上の団体に264億ドルを寄付してきた。それは資産の40%以上にのぼる。スコット以上の寄付をしているフィランソロピストは、ウォーレン・バフェット、ビル・ゲイツとメリンダ・ゲイツ以外にいなくなった。
こうしたマッケンジー・スコットのフィランソロピーは日本でも話題となった。米日財団在日代表の岡部晴人は「1.桁外れの寄付金額であること、2. 静かな寄付であること、3. お金の使途や効果について報告を求めない寄付であること。異例ずくめだった彼女の寄付は大きな注目を集め、フィランソロピーに新しい風を巻き起こしている」と話す。



