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経済・社会

2026.08.09 13:30

国内外のフィランソロピー新潮流「インパクトフィランソロピー」とは何か

イラストレーション=ヴィクター・ミラー・ガウサ

特に、桁外れの寄付金額のインパクトは大きい。25年の年間寄付金額は円換算すると1兆円を超え、かつ、186団体という多くの団体へ支援を行った。「ふるさと納税を除く日本の個人寄付の年間総額(7533億円)を上回る金額をひとりで寄付したカタチだ。しかも、1団体への寄付額も大きく、『厚く、広く』といった点が新しい」(岡部)。

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また、静かな寄付というスタイルも従来の常識とは異なるという。米国の寄付や助成は、既に関係性がある団体に寄付するか、公募に応募した団体から選んで寄付をする形式が一般的だ。一方、彼女が行う寄付は「勝手に寄付先を選び、勝手に金額を決め、事後的に団体に連絡するのである。これは『静かな寄付』と呼ばれ、彼女の寄付における極めて特徴的な点だ」。いくつかのコンサルティングファームを活用しながら支援先となる団体の調査をし、寄付先を選定している。

米マイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツは、2000年に設立したゲイツ財団について「2045年での解散」を発表。設立から25年間で1,000億ドル、今後20年間で2000億ドルの寄付を行う。(Getty images)
米マイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツは、2000年に設立したゲイツ財団について「2045年での解散」を発表。設立から25年間で1,000億ドル、今後20年間で2000億ドルの寄付を行う。(Getty images)

最後の「お金の使途や効果についての報告を求めない寄付」も、ゲイツ財団が使途やインパクト(効果)を求めるのと対照的だ。背景には、社会課題やその解決先に対する解像度が高いのは団体の方だという思想がある。

「資金の出し手側がコントロールを手放し、パワー(権力)を資金の受け手側にシェアしていくべきであるという考え方は現在アメリカを中心にひとつのトレンドとなっており、関連する概念として近年では『信頼に基づく寄付(トラストベースド・フィランソロピー)』も普及している」(岡部)

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マッケンジー・スコットによってもたらしているフィランソロピーの新潮流のほかに挙げられるのが、財団の資産を早期に使い切る「スペンドダウン型フィランソロピー」の流れだ。

その象徴的な存在が、ゲイツ財団だ。ゲイツ財団は25年、計画を前倒しして「2045年に解散」することを発表。ビル・ゲイツは財団を通して「事実上、全財産を寄付する」と述べ、45年までに2000億ドルを世界的な公衆衛生(グローバルヘルス)などの取り組みに寄付する。当初、ビル・ゲイツとメリンダ・ゲイツは、自分たちの死後20年ほどで解散する予定だったが、現在では投資を倍増すれば財団の目標がさらに短い期間で達成できると考えているという。実際に、25年に発表された26年の年間拠出金は90億ドルに増加している。ビル・ゲイツは「緊急に解決しなければならない問題があまりにも多く、人々を助けるために使うことができるすべてのリソースを注ぐ」としている。

岡部はもうひとつ、活動を永続化させるのでなく、数年単位の短期間で資金を使い切り活動を終えることを前提とした「ポップアップ型財団」の創設も今後の潮流になるとみている。「フィランソロピーが定着しているアメリカだからこその新たなアプローチだ。社会課題の解決という目標にいかに迅速に、効率的に、たどり着けるか、そのための資金提供へと変化している」と指摘する。

気候変動、格差、地域社会の疲弊をはじめ「社会課題が複雑化」し、特定の組織への資金提供だけでは十分な変化が起きにくくなった。だからこそ、資金の量だけではなく、社会課題に対して資金の流れる構造をつくり、課題の構造から変える動きとも言い換えることができるだろう。

次ページ > 新たな概念と呼応する「起業家フィランソロピー」の動き

文=山本智之

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