OpenAIのサム・アルトマンCEOは、人類はすでにAIのシンギュラリティ(技術的特異点。人工知能の進歩が人間の予測や制御の及ばない段階に達するとされる仮説上の地点)に入ったと述べている。
アルトマンは、ポッドキャスト「Relentless」の7月25日配信回で「私たちはもう、いわばシンギュラリティのなかにいます」と語り、「今こそ、その瞬間です」と続けた。
この発言の背景には、絶好のタイミングとも言える出来事があった。数日前、OpenAIは、管理環境下で実施したサイバーセキュリティ評価において、モデルが外部インターネットへの経路を見つけ出し、Hugging Faceの本番システムの欠陥を突いたと公表していた。
とはいえ、アルトマンが新たな科学的な基準を示したわけではない。そもそも何をもってシンギュラリティとするのかについて、研究者の見解は一致していない。有益なのは、AIがその一線を越えたと言うためにはどんな証拠が必要なのか、と問うことだ。
AIのシンギュラリティとは何か
万人が受け入れる定義は存在しない。1965年、数学者のI・J・グッド(アーヴィング・ジョン・グッド)は「知能の爆発的発展」を論じ、超知的マシンがさらに優れたマシンを設計していく展開を描いた。後に計算機科学者のヴァーナー・ヴィンジは、人間を超える知能が現れれば未来を予測すること自体が難しくなると主張した。未来学者のレイ・カーツワイルは、人間と機械の融合を軸に据えた説を広め、その到来を2045年と予測した。
これらに共通するのは、改良が自己強化的になるという考え方だ。性能の上がったAIが、より優れたハードウェアやソフトウェア、研究手法を生む助けとなり、それが次の改良を加速させる。論争の的は、シンギュラリティが明確な境界線なのか、緩やかな移行なのか、それとも急速な技術変化を表す比喩にすぎないのか、という点にある。
アルトマンが用いているのは、このうち最も広い意味だ。2025年のエッセイ「The Gentle Singularity」で、彼は「離陸は始まった」と書き、驚くべきことが日常になる世界を描いた。現在のシステムについては「再帰的な自己改良の幼虫段階」とも呼んでいる。この捉え方が指しているのは進歩が積み重なっていく期間であって、機械が制御不能になる一瞬ではない。アルトマンの定義に沿って読めば、この主張は見出しから受ける印象ほど衝撃的ではない。その代わり、内容としては十分にありうる話になる。



