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2026.07.29 11:36

AI競争を勝ち抜くために必要な「見失われた市場」

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2025年、世界の人工知能(AI)市場の価値は3000億ドル(約49兆1000億円)近くに達した。2034年までに、その規模はほぼ2兆5000億ドル(約409兆円)にまで拡大すると予測されている。AIサービスへの需要は急増しており、AIプロバイダーは対応に追われている。その背後では、AIを支える半導体(チップ)やデータセンターといった「コンピュート(計算資源)」のサプライヤーが、処理能力の拡張に向けて奔走している。

では、この成長を可能にするために、コンピュート市場に何ができるのだろうか。

一見すると、解決策は単純に思える。容量を増やすことだ。処理能力の向上、データセンターの大型化、エネルギーの増強である。このアプローチはこれまでは機能してきたが、筆者の観察では、すでに限界に達しつつある。それは、AIの運用に必要な電力や土地、水が希少になり、コストが高くなっているからという理由だけではない。

AIの成長を阻むもう一つの要因が存在する。それは、電波帯域やエネルギー、その他の限られた資源の市場設計という筆者のこれまでの仕事の中でも目にしてきたもの、すなわち、既存の処理能力の非効率な利用である。AIの可能性を解き放つ鍵は、単にインフラを増設することではなく、すでに手元にあるものをより生産的に活用することだと、筆者は信じている。

AIジョブに求められる要件の違い

コンピュート能力を、共有されたデータの高速道路としてイメージすると分かりやすいだろう。各車線はデータセンターを表し、走る車の一台一台がAIジョブ(処理タスク)を表す。大半の時間帯は交通量が少なく、車は目的地に時間通りに到着する。しかし、ラッシュアワーになると、あまりにも多くの車が同時に走るため、車線が渋滞してしまう。解決策は単に車線を増やすことではなく、交通管理を改善することである。

AIの高速道路の速度を上げるには、既存のコンピュート市場が抱える課題に対処する必要がある。そして、主な問題の一つは、コンピュートに対するすべての需要を一律に扱っていることだ。新しいAIモデルのトレーニング実行を含む一部の大規模なコンピュートジョブは、動きが遅く複数の車線を占有するトラクターのようなものだ。これらのジョブは大量のコンピュートを必要とするが、いつ完了しても問題ない。深夜に実行しても、その価値が下がることはない。一方で、リアルタイムのAIクエリや時間に敏感な回帰分析などは、レースカーのようなものである。その価値は完全にスピードに依存している。到着が遅れれば、まったく無価値になってしまう。

今日、トラクターとレースカーはしばしば同時に同じ車線を奪い合っている。ラッシュアワーにトラクターがすべての車線をふさげば、レースカーは通り抜けられない。適切に割り当てられていれば渋滞を回避できるだけの容量があるにもかかわらず、高速道路システム全体の効率が低下してしまうのだ。

高速道路に新しく車線を増設することは可能だが、筆者の経験では、信号機やロードプライシング(混雑課金)を導入するよりもコストがかさむことが多い。適切に設計された市場は、さまざまなコンピュートジョブが実行される時間帯を誘導するインセンティブを生み出すべきである。リアルタイムのスポット市場を通じて、緊急のジョブは必要なその瞬間に、容量に対して高い料金を支払う。先を見据えた先物市場を通じて、柔軟に対応できる大規模なジョブは、事前に低価格を確保することができる。

この戦略は、行動を義務付けるのではなくインセンティブを生み出すことによって、AI高速道路の利用をより効率的にできると筆者は信じている。トラクターは価格が安い深夜に走行を開始し、レースカーは必要なときにアクセス料を支払う。価格と優先順位をリンクさせることで、市場設計はラッシュアワーの混雑を緩和し、交通の流れを維持することができる。

市場設計を通じた協調

もう一つの問題は、市場の断片化である。コンピュートを購入しようとするAI企業は、多くの異なるサプライヤーから調達できるが、サプライヤーごとにハードウェアの仕様や契約条件、価格設定が異なる。このため、選択肢を比較して最適な取引を見つけることが困難になっている。車両はスピードとコストのどちらを優先するかに応じてコンピュート高速道路での走行スケジュールを立てるべきだが、現状では無数の乗り口(オンランプ)が存在し、それぞれ異なる料金が設定されているため、ドライバーはそれぞれの乗り口まで実際に行ってみなければコストを知ることができない。

筆者が提案する解決策は、これらの選択肢を標準化することだ。バラバラのサプライヤーを探し回って個別に交渉する代わりに、コンピュートの買い手はコモディティ化された製品が揃う統一された市場で、シンプルに買い物をすることができる。筆者の経験上、一元化されたスポット市場や先物市場があれば、買い手と売り手がお互いを見つけやすくなり、将来の計画も立てやすくなる。サプライヤー間の協調があれば、高速道路は走りやすくなり、予測可能性と効率性が高まる。

建設すべき場所の把握

よりスマートな交通インフラは、車が適切なタイミングで道路に入れるようにするだけでなく、高速道路の建設チームにとっても重要である。彼らは、新しい車線が最も必要とされている場所を理解するために交通パターンを観察する必要があるからだ。

価格シグナルと一元化されたインフラを通じて、新たなデータセンターの建設を計画するコンピュートサプライヤーは、投資を最適化できる。また、コモディティ価格に含まれる情報は、サードパーティの金融関係者がサプライヤーに資金を提供し、市場リスクを軽減することを可能にする。

さらに、標準化された市場は、コンピュート市場とエネルギー市場のギャップを埋めることができると筆者は考えている。現在、インフラの容量は、電力が最も安価で手に入りやすい場所を考慮せずに建設されている。このようなモデルは、コストの上昇やエネルギーの無駄、そして不適切な場所での拡張につながることを筆者は知っている。

共に進める、AI高速道路の改善

適切に設計されたスポット市場や先物市場は、さまざまなコンピュートやジョブの価値を明らかにすることができる。それらの価格シグナルによって、AIの買い手と売り手は効率的に取引できるようになり、コンピュートサプライヤーは投資計画を立てやすくなる。サプライヤーは1日を通じて交通量をより均等に分散させ、不確実性を減らし、高速道路が適切な場所で拡張されるよう手助けすることができる。まさに三方よしだ。

そこに到達するためには、企業やビジネスリーダーはより広い視野を持ち、個々の成功や利益の先を見据える必要がある。もしあなたが売り手なら、広く役立つ製品を提供し、価格設定を透明にすることを検討してほしい。もしあなたが買い手なら、自社の利益のために個別の取引を求めるのではなく、競争を促すようなシンプルな契約を求めることをお勧めする。そして、この業界のすべての人が協力し、標準化された製品を定義し、共有された市場インフラを開発すべきである。

コンピュートの配分こそが、今後数十年でAIをどれだけうまくスケールアップさせ、導入できるかを決定づけると筆者は信じている。しかし、豊かなAIの未来を確保するためには、単に処理能力(キャパシティ)を構築するだけでは不十分だ。すでに私たちが手にしているチップやデータセンターを、よりインテリジェントに活用することが求められる。適切な市場設計があれば、同じインフラでも、チップ、エネルギー、あるいはデータセンターを比例して増やすことなく、より多くのコンピュートジョブをサポートできるようになる。これにより、データの高速道路は動き続け、ジョブは時間通りに到着し、私たちは皆、AI処理能力の可能性を最大限に引き出すことができる。

forbes.com 原文

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