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2026.08.28 11:00

AIが「How」を担う時代、人は「What」で勝負する──GenerativeXが語る、AI時代の仕事・組織・人材論

生成AIの急速な普及によって、企業における仕事の設計や意思決定の時間軸が変わり始めている。資料作成や調査、開発が高速化する一方、AIが生み出すアウトプットを受け取り、次々に判断する人間の負荷はむしろ高まる。問われるのは、AIに何を任せるかだけではない。人は何を決め、どんな価値を生み出すのかという、仕事と組織の根幹だ。

創業4年目で国内外80社以上の企業変革を支援してきたGenerativeX。同社執行役員/パートナーの株田達矢氏、松本卓也氏と、外資・日系・スタートアップを横断してハイクラス人材の転職支援を手掛けるエンワールド・ジャパン代表取締役社長の山本裕介氏が、AI時代の競争力を左右する「人」と「組織」のあり方を語り合った。


出演者

株田 達矢(GenerativeX 執行役員/パートナー)
松本 卓也(GenerativeX 執行役員/パートナー)
山本 裕介(エンワールド・ジャパン 代表取締役社長)

人が自律的に働くためにAIを使う働き方

山本裕介(以下、山本):AI時代に“人が働く意味”はどう変化していくのか──。今、多くの人が関心を持つテーマだからこそ、AI前提の業務設計を自社で体現しながら大企業の変革を支援するお二人のお話をとても楽しみにしていました。改めて、御社の事業内容から教えていただけますか。

株田達矢(以下、株田):当社は、生成AIやAIエージェントに関するコンサルティングから開発・実装までを一気通貫で手掛ける会社です。フロントに立つコンサルタントが、営業、業務設計、開発までを横断して担います。お客様に「この業務はAIで完結できます」「そもそも、この業務自体が不要ではないでしょうか」と提案する以上、まず自分たちがAIを徹底的に使わなければ説得力がありません。

当社はスタートアップでもあるので、限られた体制でその期待に応え、より大きな価値を届けていかなければならないという、切実な事情もあります。だからこそ、AIを活用して一人ひとりの生産性を高めることが欠かせません。自分たちで使い、試行錯誤して得た知見をお客様に還元する。その循環が、当社の働き方の土台です。

松本卓也(以下、松本):AIは、単発のタスクを処理する道具から、複数のタスクを自律的、可変的に組み合わせて目的を達成する存在へと進化しています。

ただし、人間が楽になったかというと、必ずしもそうではありません。以前は数日後に返ってきた判断事項が、今は10分後に返ってくる。その場で判断し、修正し、すぐに次の判断を求められます。生産性は"爆上がり"しましたが、判断のスピードが上がった分、人間側の思考負荷はむしろ高まっています。人がAIに合わせるのではなく、人が自律的に働くためにAIをフル活用している、という感覚が近いです。

AI導入の効果は、自然に「出る」のではなく経営が「出す」もの

GenerativeX 執行役員/パートナー 株田 達矢
GenerativeX 執行役員/パートナー 株田 達矢

山本:多くの企業がAI導入を進めるなかで、お二人はどのような課題に直面することが多いですか。支援の現場から感じていることを聞かせてください。

松本:AIへの期待値が正しく設定できていない企業が多いと感じています。役員研修などでまずAIを触ってもらい、「AIはここまでできるのか」と実感値を持ってもらうところから始めると、「これもあれもAIに任せたい」と願望が広がっていく。

その次に見えてくるのが、組織のガバナンスが全然追いついていないという課題です。生産性が10倍、20倍に高まれば給与や待遇はどうするのか。1週間かかっていた仕事が30分でできるようになれば意思決定者の判断案件が膨大に増えるが、従来のやり方で間に合うのか。セキュリティ上、この業務にAIを導入してよいのかというテーマもある。AIによって社員の働き方がどう変わり、経営のあり方をどう変革させるか。その議論を同時に進めなければ、"変化"は起こりようがありません。

株田:もう一つ、避けて通れないのがコストです。AIを導入して社員に時間が生まれても、その時間には別の仕事が入ります。したがって、AIを入れただけで人件費や業務委託費が自然に下がるわけではありません。

AI導入の効果は、勝手に「出る」のではなく、経営が意図して「出す」ものです。例えば業務委託費をどこまで見直すか、どの業務をやめるか、浮いたリソースをどこへ振り向けるかを経営が決める。その後、回らなくなった業務をAIで補う。そこまで踏み込んで初めて、AI投資を経営成果につなげられます。

AI時代に問われる、組織設計と意思決定のスピード

山本:AIができることが見えてくると、たとえば「中間層はいらないのでは」だったり、逆に「若手はいらないのでは」といった様々な議論が出てきますが、企業はこうした変化をどのように捉え、組織や働き方を見直すべきとお考えですか。

松本:そうですね、そういった議論も出てきますが、ここで改めて立ち返るべきなのが、自社のミッションやパーパスです。企業として社会に何を残すべきなのか、どこまでをAIに置き換えてよいのか。各社がその答えを考え続ける必要があります。 

また、全員がAIを使いこなせるわけではありませんし、全員が同じ働き方を望んでいるわけでもありません。一方で、日本では人口が減り、企業の人手が不足するなかでも、社会のニーズは増えていく。そのギャップを埋める一つの突破口がAIです。米国のように、AI導入に合わせて一気に人員を削減することは日本では難しいため、AIを使って高い生産性を発揮する人と、それ以外の人が共存する組織へ、企業ごとに調整していくことになると思います。

株田:当社では、一人が営業・コンサルタント・エンジニアの3役を担い、顧客対応から業務設計、実装までを一貫して行っています。AIをフル活用し、生身の人間だけでは受け止めきれないほどの仕事を動かしていく、いわば“社会実験”のような働き方です。ただ、すべての企業や働く人に、このスタイルが適しているとは考えていません。限られた人材でより大きな価値を生み出すための一つのモデルにはなり得ると考えています。

人を増やしたからといって、その人数に比例して価値が増えるとは限りません。むしろ、チームが大きくなるほど連携経路が増え、管理コストも高まります。一人の能力をAIで大きく拡張できるようになれば、少人数で進めた方が効率的な領域は増えるでしょう。

松本:そのうえで、今後より大きな問題になるのは、組織の階層そのものよりも、それが意思決定のスピードにどう影響するかです。例えばデューデリジェンスでも、数時間〜1日で分析を終え、その場で入札できる企業と、稟議に数週間かかる企業とでは、競争力に大きな差が生まれます。

AIはまずコスト構造に影響するといわれてきましたが、その次に来るのは意思決定スピードの変化です。グローバルに展開するBtoB領域では、「日本企業のスピードでは間に合わない」という外圧がかかり、意思決定のあり方そのものを変えるよう迫られる。そのとき、日本企業がどのような選択をするのかが、次の課題だと思っています。

ただ、すべての企業が同じスピードや働き方を目指すべきだという話ではありません。グローバル市場で外圧を強く受ける企業には速い意思決定が求められる一方、そうした外圧を受けにくい企業まで無理に変える必要はない。それぞれの事業環境に応じて、企業のあり方は分かれていくのではないでしょうか。

GenerativeX 執行役員/パートナー 松本 卓也
GenerativeX 執行役員/パートナー 松本 卓也

AI時代、インパクトを生む人材とは──「How」から「What」へ

山本:組織における人の役割はどう変わっていくのか。改めて、AI時代に事業や組織にインパクトを生み出す人材には、どのような資質が求められるとお考えですか。

松本:AIは進化しても、出力は"最頻値に収束し、無難な型"に収束する特性があります。人との境界線がどこにあるかといえば、意思決定や判断力です。みんなが「行くべきではない」と考えるところへあえて進み、新たな価値をつくる。AIには、その判断に必要な情報収集や下準備を担わせる。だからこそ、人にはこれまで以上に主体性やリーダーシップが求められると思っています。

私自身がGenerativeXに参画するとき、代表と「日本の産業復興に寄与したい」という話をしました。日本企業にはマネジメントを担う人は多くても、自らやりたいことを定義し、意思決定して実行を担う人はまだ十分ではありません。その結果、構想や実行を外部のコンサルタントやベンダーに委ね、企業の内側に力が蓄積されにくくなっている面があります。

社内の人が自らやりたいことを定義し、AIを使いこなし、責任を持って実行まで回せるようになれば、企業は内側から強くなれる。「How(どう実現するか)」をAIが担えるようになるほど、人には「What(何を実現したいか)」が問われます。

企業にとっては、誰と働き、どのような価値を社会へ届けたいのかというミッションやバリューが、より重要になります。個人も、自分は何に共感し、どのような価値を発揮したいのかへ回帰していく。やりたいことが明確な人ほど、AIを活用して大きなインパクトを生み出せると思います。

株田:私も、「やりたいことがある人、動ける人、自分で自分を律することができる人」が、AI時代にインパクトを生み出す人材だと考えています。指示を受けて動くだけの仕事は、言い換えれば、AIにプロンプトを与えて実行させることと同じです。誰かから指示されなくても、自らやるべきことを見つけ、動ける人の価値が高まっていくと思います。

松本:そこで重要になるのが、判断する力です。私にとって判断とは、お客様がどのような目的を持ち、現状との間にどんなギャップがあるのか、そのギャップを埋めるためにどのようなストーリーなら納得して動いてもらえるのかを見極めることです。

自分がどれだけ頑張って資料をつくったかではなく、その資料が相手に刺さり、意思決定を後押しできるかが重要です。相手にはどのようなステークホルダーがいて、どんな反対意見を受けるのか。そこまで相手の立場に立って考えなければ、判断はできません。

そのために必要なのは、頭の良さだけではありません。現場へ行き、相手の顔を見て、関係を築き、何に不安を感じるのかを理解する経験が必要です。特に若手は、AIと対話する前に、まずお客様と仲良くなり、誰がどんな情報を持ち、何に関心を持っているのかをつかみに行くべきだと思います。

株田:クライアントに顔を見せず、現場にも行かずに、「お前、本当にGPTに勝てるか」と問われたら、私は勝てません。だから当社では出社する、スーツを着ることを基本にしています。必要なときには、私自身もお客様のもとへ駆けつけられる状態でいる。それが重要だと思っています。

研修ではなく、実践が人を育てる

エンワールド・ジャパン 代表取締役社長 山本 裕介
エンワールド・ジャパン 代表取締役社長 山本 裕介

山本:御社では、研修や1on1、社内会議をあえて設けないという組織運営も特徴的です。人材の育成という観点では、どのように考えていらっしゃるのですか。

松本:手厚い研修はありません。ただ、手厚い研修があれば人が育つのかというと、そうではないと思っています。知識やスキルは、実務の中で本当に必要に迫られ、自分で試行錯誤して初めて身につくものです。

成長したいのであれば、自分から「フィードバックをください」と言えばいい。それは当社に限った話ではなく、自分から必要なものを取りに行く姿勢がなければ、どんな環境にいても成長は難しいと思います。

株田:「育成=研修」とは考えていません。相手の立場に立って仕事を考えた時に、自分の能力に何が足りないのか。そのギャップを自ら見いだし、必要なものを取りに行く。その姿勢こそが成長の土台だと思っています。

人は、本当に必要にならなければ学びません。だから本来すべきなのは、本当に必要になる場を与えることです。当社では、クライアントの前に立って提案したり、展示会で初めて会った方のニーズを聞き、その場で提案したりする機会があります。もちろん、何のフォローもなく放り出すわけではありません。ただ、挑戦した結果として“うまくいかなかった”のであれば、「何が課題だったのか」を一緒に振り返り、本人が助けを必要としたときに支える。そうした関わり方が育成だと思っています。

我々が出社しているのも、分からないことがあれば、横にいる人にすぐ聞けるからです。困っている人がいれば、「大丈夫?」と普通に声をかける。それを制度ではなく、日常の会話としてやっています。また、Claude Codeなどの最新ツールをどんどん使える環境もあります。私たちとしては、こうした機会が非常に贅沢な学びの場だと考えています。突き詰めると、リスクを取って挑戦し、失敗する。学びは、そこからしか得られないと思っています。

山本:自ら課題を見つけ、実践を通じて成長したい人にとって、非常に魅力的な環境ですね。最後に、AIによって自身の経験や専門性をさらに広げたいハイクラス層に向けて、御社で働く魅力と、どのような方に来てほしいかをお聞かせください。

株田:自分のキャパシティを10倍にも広げられるものを、個人でも手の届く価格で使える。非常に面白い時代だと思います。ただ、それを自由に使い、実践できる環境は、大企業を含めてまだ限られています。一人では何から始めればよいか分からないけれど、AIを使って自分の可能性を広げたい。そういう方にとって、当社から提供できるものは大きいと思います。

松本:今の仕事に対して、「なぜこんなことを続けているんだろう」「この非効率をなくしたい」と感じているのであれば、それ自体が主体性の表れです。「これを変えたい」「この仕事をなくしたい」という思いは、AIを活用するうえで大きな原動力になります。淡々と与えられた仕事をこなすのではなく、主体性を持って何かを変えたい方に来ていただきたいです。

当社には、同じような問題意識を持ち、新しいことを仕掛けようとする人間が集まっています。そうした仲間とともに、自分のやりたいことを思い切り実現したい方にとっては、とても面白い環境だと思います。

エンワールド・ジャパン
https://www.enworld.com/


かぶた・たつや◎ GenerativeX執行役員/パートナー。東京大学工学部、同大学院工学系研究科修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてTMT・フィンテック/ペイメント分野のコアメンバーを務める。全社変革や新規ビジネス構築のプロジェクトに多数従事。2025年7月より現職。

まつもと・たくや◎ GenerativeX執行役員/パートナー。東京大学工学部卒業。ボストン・コンサルティング・グループにて、保険・金融領域およびMarketing Sales&Pricingのコアメンバーを務める。パートナーとして、中期経営計画やAI・DX戦略等の全社戦略策定に加えて、営業改革、Agile@Scale等の全社トランスフォーメーションまで幅広い経営アジェンダをリード。2026年1月より現職。

やまもと・ゆうすけ◎ エンワールド・ジャパン代表取締役社長。広告代理店勤務を経てTwitter(現X)日本進出の責任者を務めた後、グーグル合同会社でブランドマーケティング統括部長などを歴任。2025年8月より現職。

promoted by エンワールド・ジャパン / text by Rumi Tanaka / photographs by Shuji Goto /edited by Mao Takeda