ロシア通販最大手ワイルドベリーズの物流施設を標的としたウクライナ軍による度重なる無人機(ドローン)攻撃は、同軍の戦略転換を示唆している。ウクライナ軍は、ロシアの日常的な商業活動を支える施設を標的とすることで、低迷する同国の経済の弱点を突こうとしている。
「ロシア版アマゾン」とも称されるワイルドベリーズは国内の電子商取引市場を席巻しており、広大な国土全域で、衣料品や電子機器から食品や日用品に至るまで、あらゆる商品を販売している。2022年のウクライナ侵攻開始を受け、西側の小売業者がロシアから相次いで撤退したことから、ワイルドベリーズの重要性は一層高まっている。
しかしこの1週間、首都モスクワ近郊をはじめ、サンクトペテルブルク、クラスノダル、スタブロポリ、エカテリンブルクなど、ロシア全土にまたがる同社の物流施設がウクライナ軍の無人機によって攻撃されている。一部の施設では大規模な火災が発生したほか、空襲警報を受けて操業を停止した拠点もある。
現地の報道によると、ワイルドベリーズの物流網の約10%が一連の攻撃で被害を受けた。ウクライナ当局は、同社の倉庫はロシア軍の後方支援施設として利用されているため、正当な軍事目標だと主張しているが、ロシア側はこれを否定している。だが、石油精製所や軍事基地への攻撃とは異なり、物流倉庫への攻撃は一般の消費者に直接的な影響を与える。特に実店舗の小売が限られている地域では、数百万人もの市民が翌日配送可能なワイルドベリーズに頼っている。
ワイルドベリーズと競合する通販大手オゾンの2社は現在、ロシアの商取引で圧倒的な割合を占めており、同国の国内総生産(GDP)の約8.5%を占めるほか、国内労働人口の5%以上を雇用している。ワイルドベリーズとオゾンは市場として機能しており、ロシア全土の売り手と買い手を結び付け、商品の保管、配送、決済処理を行っている。
ワイルドベリーズの倉庫への攻撃については、同社の創業者で億万長者のタチヤナ・キム最高経営責任者(CEO)が事実を認めた。キムCEOは2004年、英語教師であり母親であった当時、衣料品の販売に特化した事業を立ち上げた。同社は現在、200カ所以上の物流施設を保有しており、隣国のベラルーシやカザフスタンのほか、ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島にも進出し、年内にも新たな倉庫を建設する計画だ。



