米国時間7月28日、複数のメディアは国際サッカー連盟(FIFA)がワールドカップ事業の少数株式の売却を計画していると報じた。新会社を設立した上で、事業全体を200億ドル(約3兆2800億円)と評価し、民間投資家に株式を売却する構想だ。
タイムズとフィナンシャル・タイムズが第一報として伝えた計画によると、FIFAは新子会社の株式の約20%を評価額200億ドル(約3兆2800億円)で売却することで、今年中に推定42億ドル(約6900億円)の資金調達を目指しているという。
FIFAは28日午前の発表でこの計画を事実と認めた。新会社の名称は「FIFA Forward Enterprise(FIFAフォワード・エンタープライズ)」となり、非営利団体であるFIFAの「商業活動およびイベント運営業務」を管轄することになる。
この株式売却が実施された場合、FIFAに加盟する211の国・地域のサッカー協会に対してそれぞれ2000万ドル(約32億7700万円)が分配される見通しで、加盟協会への年次支援金は2038年まで増額され続けるとしている。
FIFAは新子会社の筆頭株主にとどまり、大会や試合の日程策定、ガバナンス、各種規程に関する決定権を引き続き保持する。
FIFAによると、投資家グループを主導するのはジョシュア・クシュナー率いるスライブ・キャピタルの投資ファンド「スライブ・エターナル」で、同ファンドは過去にサンフランシスコ・ジャイアンツ(MLB)の少数株を取得した実績を持つ。また、FIFA側のアドバイザーはJPモルガンが務めている。
なお、この計画の実現には、FIFA加盟協会の過半数による承認が必要となる。
タイムズは28日、FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長がこの株式売却で重要な役割を果たす可能性があると伝えた。インファンティーノは2027年に会長再選を目指す選挙を控えているが、任期制限により2031年には退任することが決まっている。同紙に対し関係者は、インファンティーノが最終任期終了後に新会社の「コミッショナー」またはCEOに就任する可能性があると語った。ただしインファンティーノ本人は後日同紙に対し、「そうした構想が議論されたことは一度もない」と否定している。FIFAの公式声明でも、新会社におけるインファンティーノの役割については触れられていない。
インファンティーノをめぐっては、昨年12月にドナルド・トランプ大統領に対して第1回「FIFA平和賞」を授与するなど、トランプとの密接な関係に強い批判が寄せられてきた。タイムズが2人の関係者の話として伝えたところによると、FIFAはこの計画についてトランプ政権と協議を行っていたとされる。ただし、ジョシュア・クシュナーの兄でトランプの義理の息子にあたるジャレッド・クシュナーは、今回の投資家リストには含まれていない。
この構想は、サッカーファンやアナリスト、他のサッカー統括団体の間で大きな物議を醸している。
欧州サッカー連盟(UEFA)はタイムズの報道に対し、「サッカーの統括機関が決して越えてはならない一線を越えた」と反発する声明を発表した。「UEFAはこの問題を極めて重く受け止めている。すべての国々のサッカー協会、リーグ、クラブ、選手、サポーター、政府など、サッカーの未来を案ずるあらゆる関係者も同様に重く受け止めるべきだ。サッカーの魂と統治体制は売買されるべき資産ではない。とりわけ誰が財政的な利得を得るのか、その透明性が一切ない状況下ではなおさらだ。誰ひとりとしてサッカーを所有することはできない。それはFIFAが売りに出せるような代物ではない」と強く難色を示した。
FIFAの発表によれば、2026年ワールドカップの収益額は150億ドル(約2兆4600億円)で、前回2022年大会の推定収益75億7000万ドル(約1兆2403億円)から大幅に増加する見通しだ。インファンティーノは今年初頭の演説で、「FIFAが秘める商業的可能性とチャンスを解き放つ」と述べていた。FIFA側は新会社設立の意図を説明する際、この発言をたびたび引用している。



