北米

2026.07.29 08:00

米陸軍の155mm砲弾補充が頓挫 新設工場が主要パーツの製造に失敗、供給網問題も露呈

米東部ペンシルベニア州スクラントンにあるスクラントン陸軍弾薬工場で、155mm砲弾の検査が行われる様子。2023年4月12日撮影(Hannah Beier/Getty Images)

サプライチェーン(供給網)の問題も顕在化している。155mm砲弾用の主要な爆薬、具体的に言えばIMX-104やTNTが不足している。155mm砲弾は1発あたり約10kgの爆薬を使用するので、年間120万発を生産する場合、年間約1万2000tの爆薬が必要になる。

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IMX-104に関しては、需要に対応するため、南部テネシー州にあるホルストン陸軍弾薬工場が年間生産量を約2300tにまで増やしている。

一方、TNTは米国内では現在も生産が行われていない(編集注:米陸軍は2024年11月に南東部ケンタッキー州にTNT工場を新設する契約を結んだが、まだ完成していない)。以前は東部バージニア州のラドフォード陸軍弾薬工場でTNTが生産されていたが、1986年に打ち切られた。TNTの生産過程では「レッドウォーター」や「ピンクウォーター」と呼ばれる有害排水が発生し、これに関しては厳しい規制があるため、米国内での生産には多額のコストがかかる。

したがって、米国が使用するTNTはオーストラリアやインドといった同盟国やパートナー国から供給されている。

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ポーランドもTNTの主要な供給国のひとつであり、米国側はポーランドの化学メーカー、ニトロケムと契約を結んでいる。ただ、ポーランドも国内の需要への対応に苦労しているのが実情だ。また、ウクライナでの戦争や地政学的な情勢の変化により、ロシアや中国からの供給は断絶している。

現下の状況で唯一朗報と言えるのは、ウクライナ軍がドローン(無人機)の活用を進めてきた結果、ウクライナ向けの155mm砲弾の需要が減っていることだ。かつては砲兵戦が日常的に繰り広げられていたが、もはや終わりのない撃ち合いではなくなっている。

新設の工場で製造が難航

米軍が直面している状況は、少なくとも現時点では危機的とまでは言えない。米国の弾薬備蓄を回復するには何年もかかる可能性があるものの、たとえば第一次世界大戦中に英陸軍が経験した「砲弾危機」ほど深刻ではない。

当時、英軍の前線での砲弾不足は、戦時の利得行為も絡んで非常に深刻な問題になった。これは政治危機へ発展し、ハーバート・ヘンリー・アスキス政権が倒れる一因になった。英政府は対応策として1915年、弾薬生産を最大限に拡大することを目的とした軍需法を制定し、英軍に物資を供給する民間企業を新設の軍需省の厳格な統制下に置いた。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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