パリ同時テロで見えたソーシャルメディアの光と影

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今年1月にパリで発生した仏週刊誌「シャルリー・エブド」への襲撃事件を受け、フランス政府は「イスラム国」(ISIS)の支持者らが特定の人種や民族へのヘイトスピーチを行うために、SNSを使用することの法規制を訴えてきた。「イスラム国」はテロ攻撃の準備にもSNSを利用している。


同国のアルレム・デジール欧州問題担当相は、暴力を助長するようなメッセージの拡散に利用された場合、フェイスブックやツイッターに責任を負わせる国際的な法的枠組みの導入を提案している。


一方で、11月13日にパリで起きた同時テロ攻撃は、被害者の家族や地元民らにとって、SNSがどれほど有効なコミュニケーション手段になり得るかを浮き彫りにした。


フェイスブックは昨年10月に開設した新機能「災害時情報センター」の下で、「安否確認ページ」を公開。また、ツイッターでパリ市民らは「#PorteOuverte」(フランス語で「扉は開いている」の意)のハッシュタグでメッセージを送り、行き場をなくした人たちに避難場所を提供した。


このほか、行方が分からなくなった家族や親しい人を探すため、「# rechercheParis」(「recherche」はフランス語で「探し求められている」の意)のハッシュタグも使われている。さらに、「#ParisAttacks」(パリでの襲撃)、「#FranceUnderAttack」(フランスが攻撃を受けた)、というハッシュタグでは、事件に関する最新情報が伝えられ、「#PrayForParis」(パリのための祈り)では被害者やその関係者に対し、団結や支援の気持ちを伝えるメッセージが投稿されている。


しかし、ソーシャルメディアには負の側面もある。大事件や大災害の発生時にはいとも簡単に、偽情報の発信源となる。例えば、フランス北部のカレーの難民キャンプで火災が発生した際、漏電が出火原因だった可能性が高いとみられているにもかかわらず「報復だ」とのつぶやきが投稿された。また、さらにひどいことに「イスラム国」の支持者らは英語で「#ParisInFlames」(炎に包まれるパリ)、「#ParisBurns」(燃えるパリ)を意味するアラビア語のハッシュタグを付け、ツイッター上で今回のテロを称賛している。


ソーシャルメディアの短い歴史が私たちに教えてくれたことがあるとすれば、それは強大な力を持つこれらのツールが「両刃の剣」だということだ。救助活動への支持を表明できる一方で、デマやヘイトスピーチを拡散する道具にもなる。今回のテロ事件を受け、仏政府が当局による監視の強化を訴え、ソーシャルメディアへの法規制の厳格化を求める声は一層勢いを増すかもしれない。これは当然の反応かもしれないが、SNSの短所と共に、長所までもが削がれてしまう危険は免れない。

編集=上田裕資

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