ヘルスケア

2026.07.29 10:30

Apple Watchと医療をつなぐ──高血圧や心臓疾患、脳卒中予防に挑む日本の医師たち

7月23日から25日まで、京都で開催された第72回日本不整脈心電学会学術大会のセミナーに登壇した木村雄弘氏(左側)、矢野裕一朗氏(中央)、妹尾恵太郎氏(右側)

「点を線に変える」ことで予防医療を発展させる

慶應義塾大学医学部循環器内科の木村雄弘氏は、2021年ごろからApple Watchを心房細動の臨床研究「Apple Watch Heart Study」に活用してきた。

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近年はApple Watchで記録した心電図のPDFや、睡眠、活動量のグラフを診察室に持ち込み、不整脈のリスクを医師に相談する患者も増えているという。木村氏は、患者のデジタルヘルスへの理解や関心が高まっていると、実感を言葉にした。

研究チームは全国9000人以上のユーザーから得た睡眠サイクル、活動量、心拍数などをもとに、個人ごとの心房細動の発症リスクを評価するアルゴリズムを研究してきた。日ごとに心房細動が起こりやすい状況を予測し、適切なタイミングで心電図記録を促すことが目標だ。

現在は研究を発展させて、Apple Watchや家庭用血圧計の生活データに、電子カルテや植込み型心臓デバイスの情報を統合するプラットフォームの構築にも取り組む。循環器内科に加え、脳神経内科やリハビリテーション科が同じデータを参照し、まずは脳卒中をターゲットに据えて研究を進めている。

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共有候補は心拍数や心電図だけではない。心房細動履歴、心拍変動、活動量、歩行距離と歩行の安定性なども、治療効果やフレイル(予防や改善が可能な心身の衰え)、身体の異変を捉える補助材料になり得る。ただし、データの共有は患者の意思に基づくことが前提で、本人が選んだ項目だけを必要な時に医療者が確認する設計を想定する。

日本では電子カルテの仕様や運用が施設ごとに異なり、医療機関をまたいだ情報共有が難しい。木村氏は限られた外来診療時間だけでなく、患者が大半を過ごす家庭での生活を継続的にモニタリングし、共有することが重要だと指摘する。

木村氏らの研究室は現在、Apple Watchや家庭用血圧計の生活データに、電子カルテや植込み型心臓デバイスの情報を統合するプラットフォームを構築することにも取り組んでいる。日本国内の場合は医療機関等により異なる、電子カルテの仕様や運用のフォーマットを整える所も課題になるという
木村氏らの研究室は現在、Apple Watchや家庭用血圧計の生活データに、電子カルテや植込み型心臓デバイスの情報を統合するプラットフォームを構築することにも取り組んでいる。日本国内の場合は医療機関等により異なる、電子カルテの仕様や運用のフォーマットを整える点も課題になるという

木村氏は「例えば年4回、各15分の診察であれば、医師が患者を見られるのは年間でわずか1時間」と説明する。残る時間の多くを患者は家庭で過ごすため、日常の変化を継続的に捉える意義は大きい。米国では医療情報交換の国際標準「FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)」が浸透しているが、同じような医療情報交換の仕組みを整えて、患者が自身の医療情報をiPhoneなどのデバイスに保持したうえで、必要に応じて医療機関と共有する将来も、木村氏らの研究チームは見据えている。

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編集=安井克至

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