次の10億人のデジタル資産ユーザーは、ウォレットを開くことも、取引所アプリをダウンロードすることも、自分がブロックチェーンを使っていると認識することさえないかもしれない。彼らは、人間や企業に代わってデータ、コンピューティング、ソフトウェア、サービスの支払いを行うAIエージェントである可能性がある。
企業向けソフトウェアアプリケーションの33%超が、2024年の1%未満から、2028年までにエージェント型AIを搭載すると予想されている。また、顧客サービス上の問題の80%が自律的に解決され、2029年までに運用コストを30%削減すると見込まれている。これらの数字は目を引くが、今後起こることの一部を示しているにすぎない。
AIをめぐる予測が一段と強気になるなか、ハイテク株の最近の上昇は、投資家やテクノロジー企業がAIを過去のソフトウェアサイクルよりも大きな経済機会と見ていることを示唆している。その確信は資本の流れにも表れており、AIスタートアップは2023年から2025年にかけて約5000億ドル(約81兆9000億円)のベンチャー資金を集めている。
そして、その見方は正しいかもしれない。ただし、多くの人が想定している理由とは異なる可能性がある。AIエージェントが実験段階から導入段階へ移行するにつれ、機械同士のやり取りを支えるために設計された、まったく新しいインフラ層への需要が生まれている。
そのシナリオでは、AIブームの最大の受益者の1つは、エージェントが大規模に取引し、稼働できるようにするネットワークやプラットフォームになるかもしれない。
AIエージェントの成長がデジタル資産にもたらす意味
月曜の朝に目覚めると、スマートフォンを確認する前に、日々のタスクの大半がすでに終わっている場面を想像してみてほしい。あなたのAIエージェントは、カレンダーからその週の後半に東京で会議があることを把握している。夜のうちにビザ申請が承認されたことに気づき、航空券の価格を比較し、あなたの予算内で最適な選択肢を提案する。あなたは承認するだけでよい。さらに会議会場近くのホテルも予約しているが、支払いボタンを押すのを待っている。
仕事に向かう準備をしているあいだに、AIアシスタントは出発日に大雨が予想されていることに気づく。配車予約を20分早め、その変更を確保するために少額の手数料を支払う。その過程では、複数の通知も届く。
一日を通じて、AIエージェントは調査タスクを完了するためにクラウドコンピューティングリソースの料金を支払い、期限切れが近いソフトウェアのサブスクリプションを更新し、あなたに代わって利用するオンラインサービスへの複数の少額決済を処理する。
この一連の過程で、あなたはクレジットカード番号を入力することも、銀行アプリを開いて支払いを行うこともない。少額取引を一つひとつ手動で承認することもなく、一日の終わりにレポートを受け取るだけだ。
エージェントは、あなたが設定した予算とルールの範囲内で行動するだけである。つまり、あなたの代理人として機能する。ただし、エンドユーザーは別の進め方を提案したり、継続的にフィードバックを提供したりすることもできるため、エージェントは時間をかけてあなたの習慣、期待、予算を学習できる。あなた専用に訓練され、あなたが示した好みや指示を決して忘れないパーソナルアシスタントのようなものだと考えればよい。
まさにここで、デジタルウォレットが極めて重要になる。従来の金融システムは、人間のユーザーと企業を前提に設計されている。AIエージェントは銀行口座を開設できず、クレジットカードを取得することも、従来型のKYC(本人確認)審査を通過することもできない。人間や法人と異なり、AIエージェントには現在、認められた法的アイデンティティがないため、従来の金融インフラと直接やり取りすることが難しい。エージェントが成功するには、資金を保有し、支払いを受け取り、自律的に取引できる、独自のプログラム可能なデジタルウォレットが必要になる。
インターネットの次の段階は自律型エージェントである
インターネットの次の段階は、AIエージェントが他のエージェント、サービス、インフラ提供者とリアルタイムで取引することで牽引される可能性が高い。銀行の営業時間、請求書、人間による承認を前提に構築された従来の決済システムは、この種の機械ネイティブな経済のために設計されたものではない。
未来はすでに形を取り始めている。今年初め、あるAIエージェントが米国で自律的に自社を登記し、IRS(内国歳入庁)からEIN(雇用者識別番号)を取得したことで話題になった。規模はまだ実験的だが、エージェント主導の経済がどのようなものになるかを垣間見せた。
すでにMastercard(マスターカード)やCoinbase(コインベース)といった企業が、エージェントがサービス、データ、コンピューティング、ツールの料金を自律的に支払える、いわばAPIネイティブな決済を可能にするインフラ構築を試み始めている。ブライアン・アームストロング氏は、AIエージェントの未来と、機械間取引の決済インフラとしてのステーブルコインの利用について、かなり積極的に発信してきた。アームストロング氏は、ステーブルコインウォレットをAIエージェントにとってのクレジットカードに相当するものだと表現している。
2025年7月18日に成立したGENIUS法は、ステーブルコインを決済レールとして利用するための法的基盤を提供する。この規制枠組みにより、開発者はAI主導の経済に向けたステーブルコインベースの決済インフラを、より大きな確信を持って構築できるようになる。
エージェント型の未来はいつ到来するのか
機械ネイティブな商取引インフラの時代に入るなか、エージェント型決済インフラについては、承認、説明責任、信頼、実行保証、決済サービス間の連携をめぐる大きな未解決課題がなお残っている。
とはいえ、今後10年の終わりまでには、AIエージェントがユーザーや企業に代わってデータ、コンピューティングリソース、デジタル商品を日常的に購入するようになる可能性がある。2030年代初頭までには、機械間商取引がインターネット上の経済活動において意味のある割合を占めるかもしれない。
ソフトウェアが自律的な労働システムへと進化し、それ自体がサービスとなるなら、決済インフラはスタック全体の中核になる。そして暗号資産(仮想通貨)は、そのボラティリティや過剰さにもかかわらず、過去10年にわたりインターネットネイティブなマネーの構築に執拗に取り組んできた数少ない産業の1つである。約18年前にビットコインが誕生して以来、最も重要な融合が、いま起きているのかもしれない。
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