経済

2026.07.28 15:14

経済成長のトレードオフ:創造的破壊か安定か

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長期的な経済成長は極めて重要だが、普段から最優先に意識されることはほとんどない。将来世代、あるいは次の一世代だけを考える人にとっても重要である。企業にとっては、長期成長予測は大規模な設備投資計画が採算に合うかどうか、また自社が高価格帯の商品を狙うべきか、低コストの代替品を狙うべきかを示す手がかりになり得る。

公共政策の決定は、国や州の成長率に影響を及ぼす。ビジネスリーダーは、そうした公的決定を理解することで、より的確な長期予測を立てられる。本稿では、成長率のわずかな差がなぜ大きな意味を持つのか、悲観論と楽観論、そして成長と安定のトレードオフを検討する。

経済成長率が重要な理由

米国経済に関する最も古い推計は1790年にさかのぼる。1790年から1850年まで、1人当たり国内総生産(GDP)はインフレ調整後で年平均1.2%成長した。その後、2000年までの成長率は年平均2.0%だった。これは大きな差なのか。実際には、非常に大きい。投資口座の利息と同じように、毎年複利で積み上がるからだ。

世代の間隔は約30年である(子どもが生まれるときの母親の平均年齢だ)。したがって、孫は祖父母から平均で60年離れている。60年間で経済成長率が1.2%であれば、孫は祖父母のおよそ2倍豊かになる。しかし成長率が2.0%なら、孫は3倍超豊かになる。

これらの比率を数字に置き換えてみよう。祖父母が年収4万ドル(約655万円)で暮らしていると仮定する。成長率が1.2%なら、平均的な孫は年収8万2000ドル(約1340万円)で暮らすことになる。一方、成長率が2.0%なら、平均的な孫は年収13万1000ドル(約2150万円)で暮らす。これははるかに大きな差だ。

GDPは幸福度を測る完全な指標ではないが、健康、教育、平均寿命、総合的な生活満足度などの重要な指標と非常に高い相関がある。したがって、長期成長率は公共政策をめぐる議論で考慮されるべきである。

長期成長率が企業に及ぼす影響

設備投資や製品開発について長期的な判断を下す企業は、20年後の製品需要を考えなければならない。たとえばカリフォルニア州最大の発電所は、計画と建設に20年以上を要し、これまでのところ40年以上稼働している。これは企業経営者に極めて長期的な視点を求める。他の業界では時間軸がもっと短いが、複利的な成長はわずか10年でも目に見える差を生み得る。10年は、建物や多くの機械の平均耐用年数よりはるかに短い。

新製品を開発する企業は、将来の消費者が相対的に豊かになるのか、貧しくなるのかを考えるべきだ。長期成長率の感覚はその助けになる。より速いペースで成長が続けば、人々は購入する多くの財やサービスをアップグレードしようとする。たとえば、より高級な車を買い、より豪華な場所で休暇を過ごすようになるだろう。

長期成長率の予測

長期成長率の予測は難しいように見える。この問題を研究する経済学者の間でも論争は多い。悲観論者の主張は慎重に検討されるべきだが、長期成長に関する研究でノーベル賞を受賞した最新の受賞者たちは楽観的である。

悲観論の単純な形は、手の届きやすい果実はすでに収穫されてしまったというものだ。より形式的にいえば、経済学者は長らく、多くのプロセスには収穫逓減があると考えてきた。たとえば、労働者が何人かいて、そこに少し設備を与えれば、大きな助けになる。さらに設備を与えれば助けにはなるが、最初に追加したときほど大きな増分にはならない。いずれ、設備をさらに増やしても総生産への影響はごくわずかになる。この例は、設備量を固定し、労働者を増やす場合にも当てはまる。最初に追加された労働者は第2シフトを担当できるかもしれない。次の労働者は第3シフトを担当するだろう。4人目は他の労働者の昼食休憩やコーヒーブレイクを補うかもしれない。しかしある時点で、労働者をさらに増やしても全体の生産にはほとんど寄与しなくなる。

医療は良い例である。疾病の細菌説は大きな前進であり、汚染された水源が病気を広げることを医師が理解する助けとなり、その後の抗生物質の開発にもつながった。細菌説に匹敵するほど大きな科学的ブレークスルーを想像するのは難しい。

だが、手の届きやすい果実という比喩について、経済学者ジョエル・モキイアは、私たちはもっと高いはしごを作れると述べた。非経済学者にも理解できる見事なノーベル賞講演で、彼は、私たちのイノベーションの一部が多くの派生的成果を生み、その重要性を増幅させてきたと指摘した。生物学におけるCRISPR技術は、さらに多くのイノベーションを可能にした。人工知能(AI)は膨大な数の新たな発見を可能にしている。成長が逓減するのではなく、指数関数的に拡大するという有力な議論がある。

別のノーベル賞受賞者は企業を研究し、一部の企業は過去のイノベーションの地位を、さらなる開発をあまり行わずに維持しようとしていた一方、既存企業を置き換えたいと考える若く「ハングリー」な企業が存在することを見いだした。フィリップ・アギオンは、私たちはこれまで達成してきた以上に速い成長を実現できるが、そのためには支配的企業が他社によるさらなるイノベーションを妨げないようにしなければならないと論じている。そしてこれは、成長と安定の選択を考えることにつながる。

経済成長と安定

経済成長は経済にとって明白な目標のように見えるが、別の目標である安定とは対照をなす。モキイアは「Conversations With Tyler」で、中世の中国の目標についてこう述べている。「彼らが何より望んだのは、欧州人が望んだ進歩と成長ではなく、安定と国内の平和だった」

ヨーゼフ・シュンペーターは、次のようなプロセスを説明した。「(それは)絶えず内部から経済構造に革命を起こし、絶えず古いものを破壊し、絶えず新しいものを創造するプロセスである。この創造的破壊のプロセスこそが、資本主義の本質的な事実なのだ」。破壊の側面には、従業員が慣れ親しんだ仕事を失うこと、古い企業が閉鎖されること、古い制度が縮小することが含まれる。これは安定の正反対である。

安定を重視する政策の例は数多い。1990年代の日本の「失われた10年」には、政府が銀行に対し、破綻しつつある企業への融資を続けるよう圧力をかけた。銀行の資源は限られていたため、小規模で革新的な企業に多くを貸し出すことができなかった。破壊を避けようとしたことが、創造的な成長を妨げたのである。

多くのヨーロッパ諸国には強力な労働者保護法があり、従業員の解雇には多大なコストがかかる。このような環境では、企業は新規の従業員採用を伴うリスクを冒すことを非常にためらう。また、解雇が極めて稀であるため、スタートアップ企業は経験豊富な人材を採用することに苦労する。

米国では、環境保護によって経済成長を促す多くのプロジェクトが停止または遅延し、私たちは何も建設できないという不満につながっている。たとえば、人工知能が創造的破壊の別の例として勢いを増すなか、AIに必要な新たなデータセンターの建設に反対する動きが起きている。

安定重視の政策はいずれも、何らかの形で一部の人々を助けるだろう。古いものが終わらなければ新しいもののための余地が生まれないとしても、仕事を解雇されるのはつらい。それは正当な公共政策上の議論である。企業の視点からは、2つの問題が重要だ。第1に、経済全体は過去と同様に成長するのか、それとも安定への懸念が勝るのか。第2に、特定の企業のイノベーションは安定重視の政策によって阻まれるのか。

将来がどう展開するかについて確信はないものの、私はより大きな成長を予測する方向に傾いている。私たちが目にする可能性の高いイノベーションの一部は、安定重視の政策によって生じる制約を回避する巧妙な方法である。銀行が優れたアイデアを持つスタートアップに資金を提供しないなら、ベンチャーキャピタリストが従来の金融システムの外側で資本を供給する。労働者保護のために従業員の採用が難しいなら、自動化をさらに進め、仕事を他国に外注する。そして光ファイバー伝送線を敷設できないなら、衛星インターネットシステムを構築する。

生み出され得る潜在的な製品やサービスの幅は大きく、おそらく無限である。潜在的な生産方法の幅も同様に大きい。そして人間の創造性の幅もかなり大きい。

ジョエル・モキイアはノーベル賞講演でこう述べた。「では、技術進歩とイノベーションの未来について、私の結論は何か。非常に単純で、いかにも米国的な表現だ。あなた方はまだ何も見ていない。最高のものはこれからやって来る」

forbes.com 原文

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