贈り、贈られたモノや体験は、人生を変えるほどの力を持つことがある。企業のトップ、リーダーたちが経験した、モノや体験に介在する特別な思い入れを紹介する。自身の生き方、サクセスストーリーにも影響を及ぼしたであろう「GIFT」の逸話には人間味あふれる姿がある。希薄化も言われる現代の人間関係とは異なる、特別な関係だ。
THE GIFT #38
蓑輪雅弘
ローランド 代表取締役社長 CEO
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ステッカーは、一枚も使うことなく大事に保管。
当時、落選にもかかわらず送ってくれたことに驚いたという。
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今も手元に残る、ローランドのステッカー。これは私が音楽に夢中だった高校3年生のとき、同社製品のモニター募集の抽選に落選した際、送られてきたものだ。
当時の私は、バンドでキーボードを担当していた。ローランド製品を弾いてみたかったが、高校生の私にお金はない。そんな折、「FP-8」という新しいキーボードのモニター募集を目にし、応募することにした。しかし、結果は落選。その結果を告げる通知に、ステッカーが同封されていたのだ。そこには、応募が2500件にのぼったことも記されていた。
のちに私はローランドへ入社することになる。この体験が入社の直接の動機ではないが、振り返れば、こうした小さな体験の積み重ねが、ひとつの縁につながったように思う。多数の応募者に対し、宛名を手書きで記し、1枚ずつステッカーを同封する。その企業の丁寧な姿勢は、確かに私の記憶に残った。現在、企業を経営する側となりあらためて感じるのは、人と企業の関係は、日常のささやかなやり取りの積み重ねによりかたちづくられていくということだ。このステッカーは、そんな大切なことを今の私に教えるためのギフトでもあったのかもしれない。
みのわ・まさひろ◎1972年生まれ。明星大学情報学部電子情報学科卒業後、96年にローランド入社。製造現場を経験した後開発部門へ。その後はマーケティング部門で、国内外で活躍。2018年執行役員RPG開発部門担当、22年3月取締役CIO、24年代表取締役COO兼CIO、同年7月代表取締役社長CEO兼CIOを経て、現職。



