この数十年間、チェンジリーダーシップは、組織が個別のあるいは相互に関連する変革イニシアチブを成功裏に実行することを支援することに主眼を置いてきた。リーダーたちは、変革の理由を伝え、コミットメントを築き、抵抗をマネジメントし、定着を支える方法を学んできた。これらの能力は今も重要である。
しかし、それらは、組織が管理可能な範囲の相互に関連する変化に対応できる環境を前提として発展してきたものだ。今日の環境は根本的に異なる。
人工知能、絶え間ない技術革新、変化する労働者の期待、経済の不確実性、そして複雑性の増大により、変化は「時折起こる出来事」から「常態としての事業環境」へと姿を変えた。リーダーとチームは、成果を出し続けながら、同時進行で重なり合う複数の変化に対応しなければならない。
世界経済フォーラムは、2025年から2030年の間に、労働者の既存スキルセットの39%が変容する、または時代遅れになると推計している。この規模の混乱は、リーダーとチームが継続的に学び、適応する必要性をいっそう強めている。
私たちはこの数十年、リーダーが変革をリードできるよう準備を重ねてきた。今、私たちは、変化が止まらない中でもリーダーとチームが成長できるよう準備しなければならない。
そのためには、チェンジリーダーシップをより広い視野で捉える必要がある。変革イニシアチブの実行にとどまらず、リーダーとチームがパフォーマンスを維持しながら適応する力を継続的に強化することに焦点を当てなければならない。
現代のチェンジリーダーシップに課された2つの責任
現代のチェンジリーダーシップとは、特定の変革イニシアチブを成功裏に実行しつつ、リーダー自身の適応能力を継続的に強化し、チームが成果を出すために必要な「アラインメント(整合)」「クラリティ(明確さ)」「トラスト(信頼)」を絶えず新たにしていく能力である。
現代のチェンジリーダーシップは、リーダーに対し、同等に重要で切り離せない2つの責任を求める。
- 自らの適応能力と有効性を継続的に強化すること。
- チームが適応し成果を出せる条件を継続的に整えること。
リーダーは、一方だけで持続的に成果を上げることはできない。適応力の高いリーダーであっても、チームにアラインメント、クラリティ、トラストが欠けていれば苦戦する。同様に、健全なチーム環境も、防衛的に反応したり、状況を誤読したり、もはや状況にそぐわないアプローチに頼り続けたりするリーダーを、いつまでも補うことはできない。
絶え間ない変化の中で自分をリードする
リーダーシップは「内から外へ」の営みだ。リーダーはまず、自らを効果的にリードする方法を学んでから、他者を効果的に導くことができる。
状況が変化する中で、自己認識、感情の制御、状況認識、行動の機敏さに苦しむリーダーを、コミュニケーション戦略も組織構造も変革イニシアチブも補うことはできない。
業界を横断してリーダーやリーダーシップチームをコーチングしてきた長年の経験の中で、私は一貫したパターンに気づいた。
長期にわたって成功を持続できるリーダーは、単に最も多くを知っている人ではないことが多い。彼らは、プレッシャーの下でも信頼を保ち、状況を正確に読み取り、自らの行動を適応させ、状況の変化に応じて学び続けられるリーダーである。
リーダーシップの有効性に求められるものは、今や動く標的だ。成功を持続させるには、勇気、謙虚さ、そして継続的に適応する能力が必要である。
この現実を受けて、私はアダプティブ・パフォーマンス・モデルを開発した。
アダプティブ・パフォーマンスとは、経験、フィードバック、内省を通じて、自らの思考、感情、行動を適応させ、有効性を継続的に高めていく能力である。
このモデルは、相互に関連する4つの能力に焦点を当てている。自己認識、感情的コンピテンス、状況認識、行動の機敏さである。この4つの中心にあるのが「フィードバック+内省」であり、経験を学びと成長に変換する仕組みだ。
これらの能力が組み合わさることで、リーダーは、今日のリーダーシップにおいて最も重要な問いの一つに答えられるようになる。
この状況は、自分に何を求めているのか?
この問いは、不確実性に対するリーダーの向き合い方を根本から変える。
迅速に反応したり、好みのリーダーシップ・スタイルに頼るのではなく、適応力あるリーダーは十分に立ち止まって、自分自身を理解し、感情を整え、状況を正確に診断し、望む結果を得るために最も効果的な対応を意図的に選ぶ。
したがって、リーダーシップの機敏さとは、より速く反応することではない。状況が何を求めているかをまず理解した上で、より効果的に応答することである。
アダプティブ・パフォーマンスは、リーダーが継続的に適応する能力を強化する。しかし、リーダーシップの有効性は、自らをリードすることだけで完結しない。リーダーは、成果や健全な関係を犠牲にすることなく、チームが絶え間ない変化を乗り越えられる条件も整えなければならない。
絶え間ない変化の中でチームをリードする
いかに適応力の高いリーダーであっても、周囲のチームに絶え間ない変化を通じて適応し成果を出す力が欠けていれば、組織のパフォーマンスは持続しない。
リーダーの最も大きな責任は、常に、人々が一貫して最良の仕事ができる環境をつくることだった。その責任は変わっていないが、リーダーがそれを果たす環境は変わった。
変化のペースが加速し続ける一方で、チームがリーダーに求めているものは驚くほど一貫している。今日の環境で成長するチームは、次の3つの条件を一貫して経験している。
- アラインメント(整合)
- クラリティ(明確さ)
- トラスト(信頼)
ACTリーダーシップ・モデルは、絶え間ない変化の中でチームが成果を持続させるために必要な3つの条件(アラインメント、クラリティ、トラスト)を生み出し、継続的に更新していくための実践的なフレームワークを提供する。
アラインメント
アラインメントは、組織の戦略と、チームの構造、責任の分担、業務の進め方をつなぐ。リーダーは、誰が何に責任を負うのか、その権限の範囲、そして組織の優先事項を実行するためにどのように協働すべきかを、メンバーが理解しているようにしなければならない。
アラインメントを定義する5つの領域は以下のとおりだ。
- 組織の優先事項との明確な結びつき:チームの目標と意思決定が、組織のビジョン、ミッション、戦略的優先事項に直接結びついている。
- 適切な能力と組織構造:チームは、優先事項を実行するために必要な人材、能力、組織設計を備えている。
- 整合された相乗的な役割:メンバーは、自らの責任、権限、相互依存関係を明確に理解している。
- フィードバック・ループ:従業員、ステークホルダー、パートナーから定期的なインプットを得ることで、チームは状況を理解し、適切に調整できる。
- シンプルなスコアカードと問題解決:可視化された指標が、チームが軌道に乗っているかを示し、成果が不足したときには集団的な問題解決を促す。
これらの要素が組み合わさることで、従業員とチームは組織戦略を日々の協調的な行動に落とし込むことができる。
クラリティ
クラリティは、チームにアイデンティティと方向性を与える。リーダーは、チームが存在する理由、達成すべきこと、そして時間とエネルギーを集中させるべき場所を、従業員が理解しているようにしなければならない。
クラリティを定義する5つの領域は以下のとおりだ。
- 目的:メンバーは、チームやプロジェクトが存在する理由と、その仕事が持つ意義を理解している。
- チーム目標:共有された目標がメンバーを結びつけ、協働する理由を与える。
- チームの優先事項:状況の変化に応じて、最も重要なことをチームが継続的に評価し、再設定する。
- 個人目標:各従業員は、チーム目標と整合し、それに貢献する明確な目標を持つ。
- 個人の優先事項:従業員は、どの責任に最も集中すべきかを理解し、それに応じて調整する。
これらの要素は、イニシアチブ、期待、状況が変化しても、人々が焦点と協調を保てるようにする。
トラスト
トラストは、健全な人間関係、効果的な協働、持続的な成果の基盤をつくる。リーダーは、思いやりを示し、組織の価値観と一貫した行動をとり、課題が生じたときに建設的に対応することで、信頼を築く。
トラストを定義する5つの側面は以下のとおりだ。
- リーダーの共感力:リーダーは、従業員の視点、ニーズ、ウェルビーイング、目標を理解し支援するために時間を取る。
- 価値観を体現する:リーダーは組織の価値観を自ら体現し、その価値観が意思決定、報酬、アカウンタビリティを導くようにする。
- 健全なアカウンタビリティ:挫折は、罰や報復ではなく、責任、学習、適応、成長を通じて対処される。
- 不適切な行動への対処:リーダーは、たとえ高業績者であっても、チームの価値観、関係、成果を損なう前に有害な行動に立ち向かう。
- 健全な関係を築く:メンバーは、互いの視点への配慮、尊重、信頼性、感謝を示すことで、関係に投資する。
アラインメント、クラリティ、トラストは、一度達成すれば終わりというものではない。
- アラインメントは絶えずずれていく。
- クラリティは絶えず薄れていく。
- トラストは、日々の行動によって絶えず強められたり弱められたりする。
リーダーの責任は、単にこれらの条件を確立することではない。それらを絶えず更新していくことである。
新たなAIイニシアチブによって、チームの優先事項が突然揺さぶられた状況を考えてみよう。リーダーはまず、自分自身の思い込みを管理し、感情を整え、状況が何を求めているかを正確に見極め、対応を適応させなければならない。次にリーダーは、チームが優先事項を再整合し、変化する責任を明確化し、誠実なコミュニケーションと有意義な関与を通じて信頼を維持できるよう支援しなければならない。これこそ、アダプティブ・パフォーマンスとACTがともに機能する仕組みだ。前者はリーダーの適応能力を強化し、後者はチームが適応し成果を出すために必要な条件を整える。
チェンジリーダーシップの未来
チェンジリーダーシップを向上させるための最大の機会は、根本的に変わった。かつて組織は、リーダーが個別のあるいは相互に関連する変革イニシアチブをより効果的に実行できるよう支援することに多大な投資を行ってきた。その仕事は今も重要である。
しかし、複数の変化が同時進行かつ絶え間なく発生する状況では、最大の機会はもはや、各イニシアチブをより効果的にマネジメントすることだけには存在しない。それは、リーダーとチームがパフォーマンスを維持しながら適応する持続的能力を築くことにある。
アダプティブ・パフォーマンスは、リーダーの適応能力を強化する。ACTリーダーシップ・モデルは、アラインメント、クラリティ、トラストを継続的に更新することで、チームの適応力と実行力を高める。両者を組み合わせることで、変化が止まらない世界におけるリーダーシップのより完全なアプローチが提供される。
未来は、適応を「変化の時期にのみ人々が行うもの」として扱うのをやめ、それを継続的な組織能力として育成し始める組織のものとなる。
そのためには、リーダーが切り離せない2つの責任を受け入れる必要がある。すなわち、自らの適応能力を継続的に強化することと、チームが同じことをできるようにする条件を継続的に更新することである。
現代のチェンジリーダーシップは、もはや人々が変革を成功裏に実行するのを支援することだけではない。それは、変化が止まらない世界で成長できるリーダー、チーム、組織を築くことにある。



