宇宙部門はすでに軌道投入総質量の80%を占めている。これ以上のシェア拡大には限界がある。仮に、世界の宇宙ビジネスにおいて事実上の技術的独占状態にある同部門が、業務量と売上高を2倍に増やし(市場規模を超えるレベル)、そのすべての売上高が純粋な利益になったとしても、なお赤字を免れないことになる。
AI部門に関しては、赤字額が売上高の3倍に達している。競争相手は宇宙打ち上げ事業に比べてはるかに多く、強力であり、中国は新しい安価なAIリソースを次々と提供し続けている。AI事業が競争力と財務的な存続可能性を維持できるとするビジネス上の根拠は乏しい。
価値評価に関するアナリストの見解
ここでモルガン・スタンレーの試算に話が戻る。ブルームバーグが伝えたところによると、モルガン・スタンレーのアナリストであるアダム・ジョナスは、7月24日に顧客へ送ったメモの中で次のように述べている。
「我々が対話する投資家の多くは、対話型AI「Grok」やAIコードエディタ「Cursor」の価値を著しく割り引いて見ている。宇宙部門やコネクティビティ部門に比べて多額の設備投資が必要であること、採算性が極めて不透明であること、そして経営陣の多くの時間がこの事業に割かれていることを考慮し、多くの投資家がAI事業の価値をゼロ、あるいはマイナスと評価している」
同行は、「投資家の弱気姿勢が強まる一方で、ファンダメンタルズがほとんど変わっていないという現在の乖離は、スペースX株にとって魅力的なエントリーポイントを生み出している」と考えている。つまり、多くの株主の売却制限(ロックアップ)が解除されて売却が可能になるタイミング、特に株価が100ドルまで下落した時点であれば、多くのアナリストが同社株の目標価格を数百ドルに設定していることを踏まえると、購入を検討する価値があるかもしれないということだ。
彼らの見方は正しいのだろうか。それを知るのは困難だ。かつて、どれほど多くの「賢い投資家」たちがセラノスに素晴らしい投資価値があると信じ込んでいたかを思い出してほしい。あるいは、英経済紙『Financial Times』の長期にわたる調査によって不正疑惑の塊であることが暴かれるまで、どれほど多くの目ざとい投資家たちがワイヤーカードをまともな企業だと信じていたか、ということを。
今でも多くのアナリストは、スペースXには見た目以上の高い価値があると確信している。彼らが正しいのかもしれないし、すべてがうまくいく可能性もある。しかし、投資に踏み切る前に、自身の許容できるリスクの度合い(リスク許容度)を確認しておくべきだ。


