専門店で見たことのないボトルを探し回り、隠れた名酒や新たなお気に入りを見つけ出すことほど、楽しいことはない。同様に、誰かにお薦めを教えてもらうのも素晴らしいものだ。それが、その道を熟知している人物からの提案であればなおさらである。
ヘリオット・ワット大学醸造・蒸留国際センターの名誉教授であり、マスター・オブ・ザ・クエイチ(ウイスキー業界の殿堂)の称号を持ち、スコティッシュ・ウイスキー・アワードの会長を務めるアラン・G・ウォルステンホルムほど、「その道を熟知している」という基準に完璧に当てはまるウイスキーの専門家は、そう多くない。そのため、先日彼に会った際、私はいくつかのカテゴリーにおける彼のお気に入りを教えてほしいと、不躾ながらもお願いしてみた。
ウォルステンホルムは期待以上に応えてくれ、7つのカテゴリーそれぞれについて複数の銘柄を提案してくれた。見過ごされがちな銘柄から、シェリー樽熟成、ピーテッド(泥炭香)、クラシックなブレンデッドまで多岐にわたるそのセレクションは、ウイスキーファンにとって夢のようなチェックリストとなっている。
試してみるべきピーテッドウイスキー
「スコティッシュ・ウイスキー・アワードの審査員を務めることで、素晴らしいウイスキーに出会う機会が得られます」と、ウォルステンホルムは推奨ウイスキーをまとめたメールで説明してくれた。「そのひとつが、アルコール度数54.2%のアードベッグ ウーガダールです。複雑で蜂蜜のような味わいがありながら、ピート(泥炭)の香りが強すぎることもありません」
アードベッグに代表されるような、強烈なピート香を持つウイスキーにいきなり挑戦する心の準備ができていなくても、選択肢は他にもある。
「ピーテッドウイスキーは、好みが激しく分かれる『マーマイト』のような存在です」と彼は説明する。マーマイトに馴染みのない人のために説明すると、これはイギリスの有名な酵母エキスブランドで、その独特な味わいから「好き嫌いが極端に分かれるもの」の代名詞となっている。ピートを嗜むコツは、自分に合うバランスを見つけることだという。
「私は、アイラ島のピーテッドウイスキー(ラフロイグ、ラガヴーリン、ボウモアなど)の違いを比較テイスティングしたり、タリスカー(スカイ島)やハイランドパーク(オークニー諸島)といった、やや控えめなピート香を持つウイスキーを飲み比べたりするのがとても好きです」
マッカラン以外のシェリー樽熟成スコッチウイスキー
「私が1970年代にこの業界に入った頃、スペイサイドの蒸留所マネージャーたちが『2番目に好きなウイスキー』は、どれもマッカランだと言われていました。残念ながら、今やマッカランは超高級ラグジュアリーのカテゴリーにまで格上げされ、一般の多くの人々には手の届かない存在になってしまいました」と、ウォルステンホルムは説明する。
もちろん、マッカランは傑出したシェリー樽熟成ウイスキーによってその地位を築いたが、スペイサイドをはじめとする他の地域にも、素晴らしい選択肢が数多く存在する。その多くはマッカランの同等品よりも手頃な価格で購入できるため、新たな開拓の余地が広がり、自宅のバーのラインナップを充実させることができる。
ウォルステンホルムは、タムデュー、グレンドロナック、そして数々の賞を受賞しているグレンアラヒーを称賛に値する銘柄として挙げる。しかし最終的に、彼は(ノンピートの)シェリー樽熟成ウイスキーとして、アイラ島に目を向ける。
「これもスコティッシュ・ウイスキー・アワードのおかげですが、ノンピートのアイラウイスキーという意外なところから、卓越した銘柄に出会いました」と、ウォルステンホルムは付け加える。「それが、アルコール度数53.6%のブナハーブン 21年です。複雑で、甘く、そして力強い味わいです」
見逃せないブレンデッド・スコッチウイスキー
自らを愛好家と自負する多くのスコッチウイスキーファンにとって、ブレンデッドウイスキーは時に退屈なものとして片付けられがちだが、決してそんなことはない。
多くのウイスキー専門家にとって、ジョニーウォーカー ブラックラベルが定番の安心できる一杯であることは周知の事実だが、それ以上にスコッチウイスキー産業は、シングルモルトを調合(ヴァッティング)するにせよ、シングルモルトとグレーンウイスキーをブレンドするにせよ、完璧なウイスキーを造り出すマスターブレンダーたちの職人技によって成り立っているのだ。
「デュワーズ ダブルダブル 32年が、先日のインターナショナル・ウイスキー・コンペティションで『ワールド・ベスト・ウイスキー』を受賞しました」とウォルステンホルムは説明する。このブレンデッドウイスキーは、スコットランドのモルトウイスキーや世界中のウイスキーと競い合いながら、見事その頂点に立ったのだ。
「また、原酒の構成を完全に開示するなど、クリエイティブなウイスキー造りでブレンドの常識を覆している新星、ターンテーブル・スピリッツ(Turntable Spirits)についても触れておきたいと思います」と、ウォルステンホルムは付け加える。
ターンテーブル・スピリッツは、グラスゴーを拠点とする比較的若い独立系のブレンディングハウスである。現時点では輸出量が限られているが、もし手に入らない場合は、同じように先進的なブレンドを行うコンパス・ボックス(Compass Box)が、イギリス国外でも比較的入手しやすい。
これだけでは物足りないという人のために、彼はモンキー ショルダーも推奨銘柄として挙げている。「カクテルでの使用を推奨する独創的なアプローチもさることながら、キニンヴィ蒸留所の原酒がふんだんに使われているとされている点も理由です。キニンヴィは、私が1990年代初頭に立ち上げに携わった蒸留所なのです」
最高の低価格スコッチウイスキーとは?
コストパフォーマンスの高いボトルを求めているなら、クラシックな銘柄にこだわるのがウォルステンホルムの提案だ。
「最低3年間原酒を保管するコストやエンジェルズシェア(蒸発による減少)を考えれば、すべてのスタンダードな大手ブランドのブレンデッドウイスキーや、多くのプライベートブランド(PB)商品は、信じられないほどコストパフォーマンスが高いと言えます。粗悪品に当たることは滅多にないでしょう」
もし具体的な銘柄を探したいのであれば、ホワイトホースやウィリアム・グラント社のブレンデッドウイスキーを手に取ることを彼は薦める。「私はホワイトホースのピート香(伝統的にはラガヴーリン、現在はおそらくカリラ由来)が好きですし、ウィリアム・グラントのブレンドには素晴らしいモルトウイスキーが詰まっていることを知っています」
価格に見合う価値がある、高級スコッチウイスキー
「私は『ラグジュアリー』と称されるウイスキーは自分には無縁だと考えがちです。中身よりもパッケージに費用がかけられているのではないかと心配になってしまうのです」と、ウォルステンホルムは明かす。
幸いなことに、ウイスキーの品質よりも見た目を重視するようなパッケージングを懸念する愛好家のために、彼はいくつかの提案を用意している。
「『高いのには理由があり、それだけの価値がある』ウイスキーとして、タイムカプセルのような素晴らしい場所であるスプリングバンク蒸留所の製品はどれもお薦めです」と彼は付け加える。「まずはスプリングバンク 15年から始めて、3回蒸留で力強い味わいのヘーゼルバーン 15年や、ピーテッドタイプのロングロウも検討してみてください」
さらに、彼は新興の蒸留所についても言及している。「近年登場した新しい蒸留所の中では、アービキー・ライ(Arbikie Rye)が傑出しており、もし見かけることがあれば試してみる価値は十分にあります」
探し出す価値のある、見過ごされがちなウイスキー
「140以上あるモルト蒸留所の大部分や、数百種類におよぶブレンデッドウイスキーは、実質的に見過ごされています。一般の小売店では数十種類程度しか置いていないからです」とウォルステンホルムは説明する。
専門店に足を運んだとしても、流通している蒸留所、ブレンダー、あるいは独立系ボトラーズ(インディペンデント・ボトラー)の全容から見れば、ほんの一部を目にしているにすぎない。では、隠れた銘酒を探すにはどこから始めればよいのだろうか。
「グレンスコシア、ディーンストン、ロングモーン、インチガワーといったシングルモルトを探すことをお薦めします。これらは存在しないかのように過小評価されています」。また、独立系ボトラーズについては、ノース・スター・スピリッツ(North Star Spirits)のシングルカスクの「逸品」から始めることを薦めている。
最も過小評価されているスコッチは?
最後に、ウイスキーの玄人でさえ見落としがちな銘柄を追い求めるなら、いくつかの道がある。
ひとつ目は、珍しい、規格外の、あるいは伝統的な製造方法や要素を維持している蒸留所を探すことだ。自分の味覚とウイスキー体験の限界を押し広げたいと考えているなら、ここから始めるのが最適だろう。
「私は、蒸留したアルコール蒸気を冷却するために、今では時代遅れとなったワームタブ(冷却槽)の技術を残しているウイスキーに目がないことを白状します。現在では約7カ所しか残っておらず、その中ではクレイゲラキのラインナップをお薦めします。銅との接触が制限されるため、力強く肉厚なスピリッツが生まれるのです」
2つ目のルートは(「見過ごされがちなウイスキー」セクションでの提案を超えて)、その原酒が主にブレンデッドウイスキー用に供給されている数多くの蒸留所を探ることだ。ディアジオ社だけでスコットランドに約31の蒸留所を所有しており、その多くは世界的に有名なブレンデッドウイスキー向けの原酒を製造しているが、それら自体も単体で極めて優秀である。
「スペイサイドの真髄とも言えるクラガンモアを挙げたいと思います。もしこれほど多くの選択肢を持つ企業(ディアジオ)の所有でなければ、もっと大々的にプロモーションされていたはずです。繊細でありながら、実に味わい深いのです」
以上、次に購入する際の参考となるスコッチウイスキーの数々を紹介した。これであなたも、ウイスキーアワードの審査員のようにウイスキーを愉しめるはずだ。あなたはこのうち、いくつ名前を知っていて、実際に試したことがあるだろうか。



