要約
- 世界の航空旅客数は過去最高水準にあり、空港は小売、駐車場、不動産から得る収益の割合を高めている。
- 自然独占という堀が、公益事業に似た安定的なリターンを生み、航空会社を大きく上回ってきた。
- 米国の空港は年間3000億ドル(約49兆1000億円)を超える資金不足に直面しており、公的資金だけでは埋められない。
- 世界の多くは民間資本を呼び込むことでこの問題を解決してきたが、米国はそうしていない。その理由は経済ではなく政治にある。
投資カンファレンスで講演するたびに、私はいくつもの上場空港運営会社に投資していることをよく指摘する。具体名も挙げる。スペインのAena、Aeroports de Paris、Zurich Airport、Airports of Thailand。世界最大級の運営会社であるGrupo Aeroportuario del SuresteとGrupo Aeroportuario del Pacificoの2社は、メキシコで取引されている。
すると、ほぼ決まって聴衆はきょとんとした表情を浮かべる。米国には上場空港が一つも存在しないからだ。
これは投資家だけでなく、乗客にとっても実に残念なことである。
航空旅行がこれほど好調だった時期はまれだ。国際空港評議会(ACI)によると、昨年、世界の空港が扱った旅客数は過去最高の98億人に達し、100億人の大台にさらに近づいた。利用者数上位20空港だけで15億9000万人を運び、これは航空機を利用した全員のおよそ16%に相当する。
米国内に目を向けると、旅行代理店による航空券の販売額は、旅行回数自体は横ばいであるにもかかわらず、5月に98億ドル(約1兆6000億円)を超え、前年同月比15%増となった。頻繁に飛行機を利用する私の実感としても、機内は満席で、ターミナルは活気に満ちている。
滑走路から小売へ
過去10年の間に空港を利用したことがある人なら、空港が滑走路を備えたショッピングモールに近い存在に変化していることを知っているだろう。
空港はいまも航空会社から着陸料などの料金を徴収している。業界でいう航空系収入である。しかし収入のうち、巨大かつ拡大しつつある部分は、いまやそれ以外のすべてから生まれている。免税店、レストラン、駐車場、ホテル、不動産である。世界全体で見ると、2024年には小売コンセッションが空港の非航空系収入の約4分の1を占め、駐車場も同じく約4分の1を占めた。不動産と飲食がそれに続く。
例えば欧州全域では、2025年に空港の非航空系収入が14%超増加した。旅客数の伸びを大きく上回るペースである。運営会社が、利益率が高く、利用者を囲い込めるこうした事業に注力したためだ。ターミナルで2時間をつぶしているとき、あなたは言葉の最も正確な意味で「囲い込まれた消費者」なのである。
広い堀がもたらす利点
私が空港ビジネスで最も好む理由の1つは、その堀(参入障壁)の大きさにある。ヒースロー空港やオヘア空港の向かい側に、競合する国際空港を簡単に建設することなどできない。大都市圏の大半が支えられる主要空港は、ちょうど1つだ。2つ目をつくるための障壁、すなわち用地、資本、規制当局の承認、10年に及ぶ建設期間は、これ以上ないほど乗り越えがたいものといえる。
この種の自然独占は、安定的で予測可能なキャッシュフローを生み出す。
下の図を見てほしい。過去5年間で、Dow Jones Brookfield Airports Infrastructure Indexで測定される上場空港関連株は、トータルリターンで約66%を記録した。これは米国の公益株の約60%をわずかに上回り、Dow Jones U.S. Airlines Indexで測定される航空株に20パーセンテージポイント以上の差をつけている。
見ての通り、空港株は航空株というより公益株に近い値動きをしており、投資家に一定の安定性を提供してきた。
誰も語らない資金調達の崖
では、米国人はなぜ国内で買えない事業を気にかけるべきなのか。米国の空港には資本が必要であり、従来の調達手段は枯渇しつつあるからだ。
3年前、私は米国が急増する需要に応えるためインフラ支出に賭けていることについて書いたが、同時に財政上の深い谷がなお残っていると警告した。
それ以来、その谷は広がる一方だ。米国の空港は現在、年間300億ドル(約4兆9100億円)超のインフラ費用に直面している。ACI北米は、2025〜2029年の必要額を約1740億ドル(約28兆5000億円)と見積もっており、前回の推計から15%増加した。総じて、公的資金で賄えるのは年間約120億ドル(約1兆9600億円)にすぎず、必要額はその2倍を超える。
これは私自身の身近な場所でも起きている。U.S. Global Investorsの本拠地であるここサンアントニオでは、国際空港が待望の新ターミナル建設を含む25億ドル(約4090億円)規模の拡張工事の真っただ中にある。米国のすべての中規模都市で同じことが起きていると考えれば、不足の規模感が見えてくるはずだ。
世界の他の地域はすでに答えを見いだした
他の先進諸国は、数十年前に民間資本を招き入れることでこの問題に対処した。現在、90カ国超の850以上の空港が、何らかの形で民間部門の参画を得て運営されている。パンデミック前には、欧州の航空旅客の約75%、中南米の3分の2、アジア太平洋地域の全旅客のほぼ半数が、民営化された空港を通過していた。
北米ではどうか。約1%である。
英国は1987年、ヒースロー、ガトウィック、スタンステッドを運営する会社を売却し、この流れの口火を切った。現在、上場空港会社の上位10社の時価総額は合計1520億ドル(約24兆9000億円)に達する。
その結果は心強いものだ。民営化された空港に関する独立した調査によれば、競争の促進によって、より多くの航空会社がより多くの目的地に就航し、平均運賃が低下したほか、生産性と旅客満足度スコアも向上したことが確認されている。空港を政府のコストセンターではなく、本物のビジネスとして扱う運営会社が担えば、空港は改善する傾向がある。
公平を期せば、これはただで得られるものではない。民間運営会社が料金や航空券価格を押し上げる可能性を批判者が懸念するのはもっともであり、米国自身の実験も繰り返し頓挫してきた。セントルイスは2019年にランバート国際空港のリースを検討し、18の国際入札者を集めたが、その後、市長が地元政治を理由に計画を白紙に戻した。
議会が空港民営化への道を初めて開いて以来、米国の主要空港でその扉をくぐったものは1つもない。その障害となっているのは、経済的な理由ではなく、ガバナンスと政治の問題なのだ。
いざ離陸
私は本来、楽観主義者であり、最終的には数字が勝つと信じている。国が数千億ドル規模の資本を必要とし、参考にできる実証済みの世界的モデルがあり、地球上で最も深い資本市場を擁しているなら、要素はおのずとそろっていくものだ。
空港は実質的に、世界旅行の長期成長にかかる料金所である。代替不能な資産を保有し、市場で最も広い部類の堀を享受し、公益事業に似たリターンを生み出す。他のほぼすべての主要経済国はすでに、自国民が空港の一部を所有することを認めている。米国も投資家に同じ機会を与えるべき時だと、私は考えている。



