バビロンヘルスは月額5ポンド(約930円)で、いつでも何度でも一般開業医と話ができるアプリだ。追加料金を払えば処方箋を出してもらうこともできるし、コレステロール値の測定などの検査も受けられる。専門医を紹介してもらうことも可能だ。アクティブユーザー数はここ2年間で約25万人に増えた。このアプリを福利厚生の一環として導入している企業はシティグループなど60社に上り、アクティブユーザーの半数を占めている。
バビロンヘルスの最大の強みはコストだ。アメリカでは医師とのビデオ面談を1回40~50ドルで提供するサービスが多い。HealthTapでは6万人の医師が副業として登録しており、いつでも医師に相談できるサービスが月額99ドルだ。バビロンヘルスは約100人の医師をフルタイムで雇うことでコストを抑え、低価格でサービスを提供している。創設者でありCEOのAli Parsaは「少ない人材を有効活用している」と言う。
このアプリでは、現在は医師が患者に質問したうえで対処法を決めるが、数か月後に発表予定の新バージョンではiPhoneのSiriのような音声アシスト機能を導入し、医師の診断が必要かを判断する。
例えば「頭が痛い」と話しかけたとしよう。すると具体的にどの部分が痛むのか、どのように痛みが始まったのか、痛みは10段階でどの程度か、熱やめまいはあるかなどの質問が返ってくる。
アプリが回答をもとに“症例チェックエンジン”を駆使して対処法を導き出す。ここ2年間で蓄積した膨大な症例と照らし合わせて導き出した最善のアドバイスがこれだ。
「自宅で対応できます。水分をよく摂って安静にしていてください。でも光を見るのが辛くなったらすぐに病院に行くと約束してください。絶対ですよ」
親しみやすい口語を使うのも最近のAIの傾向だ。
「医師が質問に通常5分かけるところを1分に短縮することによって、コストが5分の1になる」とParsaは言う。取締役には出資者でもあるAI関連企業Deep Mindの共同設立者2人が名を連ねている。
Parsaは、国の医療制度内で医者に通う代替手段として、バビロンヘルスが選ばれるようになってほしいと願っている。アプリでは医師に直接会うことはできないが、スピードと効率が売りだと主張する。
「我々が医療分野で行っていることは、グーグルが情報分野で行ったことと同じだ。すべての人々に、手ごろな価格で提供しているのだ」とParsaは述べた。