以前はロシア軍もウクライナ軍も、自軍が前進する際に利用することを見込んでいる橋については、基本的に破壊せず温存していた。だが、いまではそうした方針は変わっていように見える。
両軍が敵の作戦後方(編集注:前線からおおむね数十〜数百km後ろの地域で、大規模な部隊編成の兵站拠点や指揮所などがある)の深部にある橋を破壊していることは、双方とも、将来の突破作戦で必要になるインフラを残すよりも、敵の兵站を妨げるのを優先するようになったことを示している。ロシア軍もウクライナ軍も大規模な機動戦を準備するのではなく、現在の陣地を保持し、小幅な前進を積み重ね、消耗戦によって相手に損耗を強いることに重点を置いているとみられる。
こうした戦略による影響が大きいのはおそらく、ウクライナ軍よりもロシア軍のほうだろう。ウクライナ軍は相対的に補給線が短く、利用できる道路網や鉄道網も密なので、兵站経路の迂回も比較的しやすい。一方、ロシア軍は相対的に補給線が長く、利用できる輸送経路にも制約が多いため、橋を1本失った際の混乱も比較的大きくなる。
また、ウクライナ軍の作戦ではドローンへの依存度がさらに高まっている。ドローンは橋が破壊されてもほとんど影響を受けず、引き続き河川を越えて作戦を遂行できる。したがって、ウクライナ軍は引き続きロシア軍に圧力をかけながら、この戦略による影響を吸収していくのに有利な立場にある。
この戦争の帰趨は依然として不透明だが、いつかは終結する。そのときになって初めて、破壊された橋の真の代償が明らかになるだろう。橋が失われたことによる影響は、とりわけ被災地域の復興が始まる段階で、大きな経済的損失として顕在化してくる。恒久的な橋が再建されるまでの間、地域住民は通常より移動に長い時間を要し、商取引に支障をきたし、輸送コストもかさむ。当然、橋自体の再建にも多大な時間と費用がかかる。
だが、ウクライナもロシアも、そうした長期的な代償を受け入れる構えを見せている。敵の兵站を妨害することによる当面の軍事上のメリットが、将来に備えて橋を温存しておくことによる価値を上回ると判断しているのだろう。この戦争が消耗戦であり続ける限り、橋は今後も戦場で最優先の攻撃目標になると予想される。


