運テリアで心の安らぎと不安の軽減を
結論から言えば、風水そのものは韓国社会に昔から根付いていたが、それが「玄関に明太を吊るす」「月壺を飾る」といった具体的で手軽な消費行動として爆発的に広まったのは、ごく最近の現象と見てよい。
かつて風水は、家の増改築や墓の位置を選ぶ際に専門家へ相談するような、やや大掛かりで敷居の高い実践だった。それが今や、数千ウォンの雑貨店で月壺のレプリカを買い、SNSで「これで金運アップ」と気軽に共有できる、ライフスタイルの一部として消費されるようになっている。
この変化の第一の要因は、価格帯の劇的な低下と流通チャネルの多様化である。ダイソーのような均一価格店が風水アイテムを扱うようになったことで、誰でも手軽に「運テリア」を実践できるようになった。
第二に、SNSの存在が大きい。インテリアのアカウントやライフスタイル系インフルエンサーが明太や月壺の飾り方を紹介し、それが「かわいい」「センスがいい」という美的な文脈と、「福を呼ぶ」という実利的な文脈の両方で拡散されている。
伝統的な民間信仰が、インテリアという中立的で「恥ずかしくない」形を取ることで、若い世代にも抵抗なく受け入れられるようになったとも言える。
この運テリアの流行は、実は単独の現象ではない。韓国の街を歩けば、観光地や繁華街のいたるところに小さなタロットや四柱推命(四柱八字ともいう)の店やブースが並んでいるのに気づくはずだ。
ソウルの弘大(ホンデ)通りでは、わずか100メートルほどの区間に20軒近い占いカフェがひしめき合い、益善洞(イクソンドン)のようなレトロブームの観光地でも、伝統家屋を改装した店先で若者が気軽にタロットカードを引く光景が日常となっている。
就活に悩む学生が友人と連れ立って店を訪れ、恋愛の行方や進路について相談する姿は、もはや珍しいものではない。
以前は「四柱」と言えば、生まれた年月日時をもとに人生全体の流れを占う、いわば長期的な羅針盤としての性格が強かった。それに対し、近年急速に人気を集めているのがタロットである。
タロットはもともと占い店で四柱に付随するオプション的な存在にすぎなかったが、今では数枚のカードを引くだけで「明日の面接は受かるか」「この会社に転職していいか」といった目先の悩みに即座に答えを出してくれる手軽さが、忙しい2030世代のニーズに合致している。
オンライン教育プラットフォームでは「タロット講座」がライフスタイル系人気検索ワードの上位に入り、受講者の6割以上が20代から30代の人間だという調査結果もある。友人同士でタロット占いをし合う「趣味」としての側面も、この流行を後押ししている。
市場調査会社の分析によれば、占いサービスを利用する理由として最も多く挙げられるのは「心の安らぎ・不安の軽減」であり、次いで「前向きなエネルギーや希望を得るため」「不確実性の解消」が続く。
かつて自己分析ツールとしてMBTI診断が若者の共通言語だったが、今では「MBTIより四柱推命」と言われるほど、生まれた年月日時から性格や運勢を読み解くサジュや、短期的な悩みに即答をくれるタロットが、代わりの位置を占めつつある。
就職、恋愛、住居など、親世代が当然のように手にしていたものが、今の若者にとっては「選択の連続」となり、絶え間ない意思決定に疲弊する「決定疲れ(decision fatigue)」という言葉さえ生まれた。
蛇足だが「決定障害」という言葉も生まれた。これは小さなこと、たとえばランチを何にするかも決められない人のことを言う。
四柱推命は、その選択の重みを一時的に軽くしてくれる「羅針盤」としての役割を担っているというわけだ。


