ハーレーによれば、これらの実証着陸船は、着陸トラブルによって危険にさらされた宇宙飛行士のための緊急避難所として機能するだけでなく、最初の着陸に先立って配置される予備の月着陸船に対する「第二のバックアップ」にもなり得る。
NASAの査察官らはその興味深い報告書の中で、「NASAは1970年代のスカイラブ(Skylab)計画において、そして2003年のコロンビア(Columbia)号空中分解事故(乗組員喪失)を受けてスペースシャトル計画においても、宇宙空間での救助計画を策定していた」と述べている。
しかし不可解なことに、世界最高峰の宇宙機関であるNASAは「2011年のスペースシャトル退役以降、宇宙空間での乗組員救助能力を要求してこなかった」と同報告書は続ける。
「アルテミス計画に救助能力がなければ、有人着陸システム(HLS)が月面で機能停止した場合、乗組員は失われる」
監察官らによると、NASAが多層的な月飛行士救助体制を構築しなかった理由として、「主要着陸船が故障した場合に備えて、月面に予備のHLSを待機させておく費用」などが挙げられていた。
だが、当時NASAの監察総監だったポール・マーティン(Paul Martin)は2023年、下院科学・宇宙・技術委員会で「NASAは2012会計年度から2025会計年度までにアルテミス計画に930億ドル(約15兆2000億円)を支出することが見込まれる」と述べている。
着陸船開発のためにNASAがBlue OriginとSpaceXに渡した資金を加えると、アルテミス月飛行への総支出は1000億ドル(約16兆4000億円)を超える。
それに比べれば、選定された着陸地点に1機または2機の救命艇兼着陸船を配備するために追加で30億〜50億ドル(約4910〜8180億円)を投じることは、月探査全体へのNASAの途方もない投資が新世代の米国人宇宙飛行士の死で終わらないようにする助けとなり得る。
この比較的控えめな投資は、NASAの評判と将来にわたる存続を守ることにもつながる。
NASAの月面ランデブーミッションに包括的な救助戦略を組み込まないという高レベルの決定は、新宇宙産業の象徴であり卓越した宇宙飛行士であるジャレッド・アイザックマン(Jared Isaacman)が、2025年のクリスマスを控えた上院で圧倒的多数の賛成を得て第15代NASA長官に承認されるよりもずっと前に下されていた。


