経営・戦略

2026.08.22 10:30

元Number編集長が聞く日本ハム「Fビレッジ」急成長の理由「現状維持こそリスク」

敷地面積約32ヘクタールを誇る「北海道ボールパークFビレッジ」の俯瞰図。球場を「城」、周辺エリアを「城下町」に見立てた広大な街づくりが今も進化を続けている。(C)H.N.F.

「いろんな声をいただくなかで、何が事実で何が思い込みなのか、振り分けていったんです。『なんでできないんですか?』と聞くと、『できるわけないでしょ』という、答えにならない答えが大半でした。やったことがなかったり、見たことがない。暗い道だとお化けが出そうというのと同じなんだと思います。僕自身は逆に、絶対にできる、できないはずがないと思っていました」

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大谷翔平の活躍で有名になった名言「先入観は可能を不可能にする」を想起させる話だが、それでも、ボールパーク事業の投資額は約600億円。日本ハムグループにとって過去最大の投資だった。そもそもファイターズには、07年の北海道への移転以来ずっと本拠地にしてきた札幌ドームがある。なのになぜ新球場が必要なんだ? 投資リスクをどう考えているのか? 社内外から当然のように上がる声に、前沢は当時、次のような主張を繰り返した。

「現状維持で進めれば、おそらく利益の微増ぐらいは達成できると思います。ただし、10年後、20年後、30年後というスパンで見たら、間違いなく目減りしてしまう。つまり現状維持は逆に、大きなリスクなんです。新しい球場をつくることにも当然リスクはある。あるけれども、リスク・リターンの軽さと重さを考えると、新しい球場をつくるほうが、明らかにリターンが大きくなるんです」

これからの時代で重要なのは、現状の安定感ではなく未来志向。そう確信していた。

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「日本の人口も野球競技者も今後減り続けていくのはデータ上明らかです。そんな状況で、このまま野球頼りの“一本足打法”を続けていては明るい未来は開けない。野球を好きになってもらったり、観戦することを『選択肢のひとつ』にしてもらうために、野球とは関係のない温泉やサウナや子どもの遊び場を設ける。野球を見なくても、野球好きでなくても楽しめる空間をつくるためには、自分たちで球場をもつしかない。そういう論理の組み立てです」

日本ハム社内で新スタジアム建設が本格的に検討され始めたのは15年。北広島市に新球場を建設するという計画に正式なGOサインが出たのは18年3月のことだった。

「その間の3年間、話し方はかなり熱かったと思いますが、すべて論理的に説明しました。三谷さんと細部に至るまでメリット、デメリットを議論して積み上げていたので、1から100までどんな質問をされても即答できるようにしていました。そういう説明を繰り返すことで、信頼感を積み上げていったんです。途中から味方も増えてくれて、陰ながら『頑張れよ』と本社の役員に言われたのは今でもよく覚えています」

「三谷さん」というのは、前沢がずっと二人三脚でこの事業を進めてきた、財務のスペシャリストで現FSE常務取締役の三谷仁志のことだ。

日本ハム本社に示した「リターンの見込み」について、三谷は「アップサイドについては特段描かず、ミニマムでもこうなるから大丈夫なんだという説明をしました」と振り返る。

KEY PERSON|三谷仁志
ファイターズ スポーツ&エンターテイメント 常務取締役事業本部長。1973年生まれ。京都大学卒。住友商事、米ノースウェスタン大学ケロッグ校MBA卒業、オリックス野球クラブ等を経て2009年北海道日本ハムファイターズへ転職。前沢 賢とともにボールパーク構想の立上げとプロジェクトを推進した。現在は、FSE事業全般の責任者を担う。

次ページ > スタジアムと周辺は『城と城下町』の関係

文=宇賀康之 写真=能仁広之

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