AIエージェントは、コストを押し上げ、従業員を悩ませる煩雑な人事管理業務に、数百万社の企業が対処する助けになるのだろうか。ルイジアナ州を拠点とするNetchex(ネットチェックス)は、そうなり得ると考えている。同社は給与計算と人的資本管理のプラットフォームを手がけており、デスクを持たない現場従業員を抱える企業向けに、人工知能(AI)を活用した一連のツールを立ち上げたばかりだ。
「こうした企業は大手給与計算会社から見過ごされている。大手の製品は主にナレッジワーカー向けにつくられているからだ」と、NetchexのCEOであるアビナブ・アグラワルは言う。「これらは米国を支える企業だが、毎日何百もの業務を管理できる人事チームを構築するリソースを持っていない。私たちは、AIがそのチームの代わりになれると考えている」
NetchexのAIエージェントは、Y Combinator(ワイコンビネーター)の支援を受けるスタートアップ、Mesh(メッシュ)が開発した。同社は新技術を使って人事課題に取り組むため、2020年に創業された。筆者がMeshに初めてインタビューしたのは2022年で、その際同社は新たなパフォーマンス管理プラットフォームのために1100万ドル(約18億円)を調達していた。今年初め、Netchexは非公開の金額で同社を買収し、Meshの創業者らに一般的な人事課題へのAI活用を託した。
Netchexが対象とするのは、従業員がデスクに座ったり会社のコンピューターを使ったりする時間がほとんど、あるいはまったくない業界だ。レストラン事業から医療現場まで、例は幅広い。従来型の人事ソフトウェアは企業のオフィスではうまく機能するが、Netchexは、それ以外の組織の従業員には十分対応できていないと主張する。たとえば、手作業のタイムカードで出退勤を記録したり、メッセージングアプリでシフトを調整したりしているからだ。会社のITシステムを通じて業務を管理するオフィス従業員向けに設計された人事ソリューションでは、こうした従業員に対応できないとNetchexは言う。
そこで同社は、従業員がスマートフォンにダウンロードして基本的な人事業務に使えるアプリを提供している。Netchexは今回、MeshのAIエージェント(同社は「AI人事チームメイト」と呼ぶ)をこのアプリに追加し、機能を強化する。取り組みは、給与計算、オンボーディング、コンプライアンス、休暇、労働力データ、トラブルシューティングを管理する6つのエージェントから始まり、今後さらに追加していく見込みだ。
アグラワルによれば、目的の一部は従業員の負担を軽くすることにある。一方で、雇用主にとって効率化を進める大きな可能性もある。現在、多くの雇用主は、オフィス環境であれば自動的に処理される人事業務すべてを管理するために、管理担当者のチームを置かざるを得ない。「AIチームメイトによって、かつては自社の10倍の規模の企業にしか手の届かなかったような強固なバックアップ体制を、すべての事業者に提供できるようになる」と彼は主張する。
Meshの創業者で、現在はNetchexの最高製品責任者を務めるサウラブ・ナンギアは、この取り組みはAIエージェントが約束を実現するまれな例だと強調する。「事業者は、AIがすべてを変えると聞かされてきた。しかしこれまでのところ、大半は質問に答える程度にとどまっている」と彼は言う。
「Meshは業務を先回りして処理し、人々が嫌がる作業を引き受け、本当に重要な業務に集中できるようにする。それが可能なのは、給与計算、勤怠、スケジューリング、人事を、バラバラに切り離されたシステムとしてではなく、1つの業務として捉えているからだ」
Netchexが顧客へのこうしたエージェントの展開を始めたばかりであることを考えると、これは大胆な主張だ。しかし、Netchexの顧客であるホテルグループNorthwest X Southernのタビサ・レーマンは、組織には支援が必要だと語る。「私たちのチームは小規模で、全員が多くの役割を兼ねている」と彼女は言う。「AIエージェントが継続的にエラーを確認し、準備作業を処理し、定型的な手順を担ってくれるなら、状況を一変させる可能性がある」
したがって、この市場にAIソリューションへの潜在需要があることは明らかだ。それでもNetchexは大きな競争に直面するだろう。同様のツールで多額の資金を調達しているFlip(フリップ)やHumand(ヒューマンド)などのスタートアップに加え、この分野で活動する大手IT企業も競合となる。
それでもアグラワルは、Meshとの提携が成功につながると確信している。鍵になったのは、専用ソリューションを開発したことだと彼は示唆する。「これは、従業員の大半が売り場や生産ライン、現場にいて、人事が1人で3つの仕事を担っているような企業のために、目的に合わせて構築されたものだ」



