アストロスケールホールディングスを例に取ってみよう。同社は非協力物体へのRPO技術(姿勢制御が行われておらず、通信も不能な物体への接近・捕獲技術)に関して世界最先端をいく企業だ。一般に、デブリ(宇宙ゴミ)除去を行う企業と認識されていると思うが、デュアルユースという観点では、それは敵対国衛星という“デブリ”の除去に関して世界有数の技術力をもつことを意味する。この技術力の高さが、自衛隊だけでなく米軍や英軍からも案件を受注できる理由であり、潜在市場規模の大きさを示唆するものと考えている。しかし、衛星防護も大事であるが、地球上でのミサイル防衛のほうが、各国政府にとっての緊急度は高い。それゆえ、利益創出のタイミングは、ミサイル防衛に近しい衛星コンステレーション領域で事業展開を行う企業よりも遅くなると予想している。このような潜在市場規模の大きさと時間軸の違いを株価がどのように織り込んでいくのか、予想するのは難しい。これが宇宙株投資の難しさであり、醍醐味でもあろう。
宇宙は「夢を買う産業」
こうした宇宙銘柄に対して、個人投資家はどのように対峙すべきか。まず宇宙とは本質的に成長期待という「夢を買う産業」であることを認識する必要がある。宇宙銘柄への投資をさらに難しくしているのは、長期的な利益創出力とは関係のないニュースで株価が平気で急騰することにある。日系企業の利益創出力にほとんど影響を与えない、スペースX上場に伴う株価の乱高下はその典型例だ。
個人投資家の最大の武器は、短期のパフォーマンスを気にしなくていい「時間軸の自由度」にある。機関投資家が触れない赤字段階から長期的な視点で仕込むことが可能だ。宇宙というテーマには、今後も熱狂の波がやってくるだろう。こうした熱狂は、あくまで「投機」ゲームである。宇宙銘柄に「投資」するのであれば、波が引いて株価が将来の利益創出力に対して大きく下に乖離した平時に静かに仕込むことが、ボラティリティに惑わされないひとつの効果的なアプローチだろう。
26年下半期の宇宙市場で機関投資家が注目しているのは、防衛3文書改定に伴う宇宙防衛予算の動向だ。予算の重点配分先が、これまでの衛星コンステレーションから、ミサイル探知・追尾のための赤外線観測や衛星間光通信、宇宙空間を監視す「SDA(宇宙領域把握)」領域へとシフトしていく可能性がある。それに伴い、市場のフォーカスが移り変わり、新たな波が発生すると予想する。そのときにまた、何を信じて宇宙銘柄に投資しているのかが問われる局面がやってくるだろう。

たての・としゆき◎フィリップ証券所属。セルサイド・アナリストとして宇宙・防衛を含む中小型株を調査。宇宙・防衛需要の拡大が上場企業の成長性や市場評価に与える影響を追う。CFA、日本証券アナリスト協会認定アナリスト。


