サイエンス

2026.07.27 15:00

魚類初となる「伝染するがん」発見、北米の湖でナマズに感染拡大中

ブラウンブルヘッド(stock.adobe.com)

トマによれば、確認されているタイプの数自体も実際より少ない可能性が高い。というのも、伝染性がんを一つ見つけるには腫瘍と宿主を対にしてゲノム解析する必要があるが、こうした調査は「野生生物を対象に体系的に行われることがほとんどなかった」からだ。

advertisement

ワシントン州立大学の進化遺伝学者アンドリュー・ストーファーは、同じことをより率直に表現した。

「私たちが考えているほど、珍しいものではないと思います」

ドラゴンはさらに歯に衣着せず、こう述べた。

advertisement

「ナマズに注目する人は、あまりいませんから」

現在、ドラゴンの研究チームは、釣り人が釣り情報アプリ「Fishbrain(フィッシュブレイン)」に投稿した写真から、腫瘍のあるブラウンブルヘッドを探し出している。新たな伝染性がんを監視するシステムとして、釣り人向けのソーシャルネットワークを活用しているわけだ。

即席の方法に聞こえるかもしれないが、実際にはそうでもない。一般の人から集めた画像は現在、生物多様性情報学で認められた調査手法となっている。病気の発生、生物の侵入、分布域の変化を、どの野外調査チームにも不可能な規模で捉えられるからだ。

ドラゴンにとって、これらの写真は、あらゆる疑問の根底にある問題を浮かび上がらせる。伝染性がんは本当にまれなのか。それとも、単に誰も観察してこなかっただけなのか。

何ができるのか

メンフレメーゴグ湖でこの病気をどのように管理すべきか、また、ほかの内陸水域への拡散をどう防ぐべきかについては、まだ答えが出ていない。

タスマニアデビルの病気を研究するストーファーは、一部の個体群で確認された約90%の減少という最悪の事態でさえ、永続するとは限らないと述べた。ストーファーの研究グループは、タスマニアデビルの個体数は減少した後に自然回復すると見込み、管理当局に対して積極的な介入を行わないよう助言している。

釣り人がメンフレメーゴグ湖から生き餌や水を持ち出すことを禁じる規則は、外来生物対策として設けられたものだ。この湖にがんが潜んでいると誰も知らない、何年も前のことである。エマーソンはこの規則をがんも念頭に置いた内容に見直してほしいと考えているが、それがどう進むかも承知している。

「私は、あの場では小さな一つの声でしかありませんから」

筆者はエマーソンに、このような魚を釣り上げた人が、自分の手にしているものを理解できると思うか尋ねた。

ボート乗り場に注意を促す掲示はない、とエマーソンは答えた。そして、こう続けた。

「そんなことを聞かれたのは、初めてです」

SEE
ALSO

サイエンス

タスマニアデビルが絶滅の危機、原因は「伝染するがん」

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事