経営・戦略

2026.07.26 14:02

効率化の果てに——企業が失った「顧客を気にかける力」

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ナタリー・ベッカーマン氏の新著『When Did You Stop Caring?(いつから顧客を大切にしなくなったのか?)』は、すべてのビジネスリーダーが考えるべき問いを投げかけている。リーダーたちが顧客を気にかけていないからではない。彼らは気にかけている。しかし、多くの組織がいつの間にか効率化や自動化、コスト削減に集中しすぎるあまり、顧客はかつてひいきにしていた企業から「自分たちは大切にされていない」と感じるようになってしまった。その結果、顧客は自分の存在価値が低くなったかのように感じてしまうのだ。

効率化が行き過ぎるとき

効率化そのものが悪なのではない。実際、顧客は取引を簡単かつ効率的に進めてくれる企業を高く評価する。問題は、効率化が手段ではなく目的になったときに始まる。

ベッカーマン氏は著書の中で、多くの企業が顧客体験を向上させるためにシステムや自動化を導入しているものの、気づかないうちに顧客との関係を損ねていると指摘する。企業と顧客の距離を縮めるはずの体験が、結果的に顧客を遠ざけてしまっているのだ。

行き過ぎた効率化は、顧客満足度よりも業務指標を優先するポリシーを生み出す。こうした決定はどれも、悪意を持ってなされたものではない。意思決定者も、意図的に顧客を遠ざけようとしているわけではないが、結果はそうなってしまう。面倒なセルフサービスを操作させられ、欲しい回答が得られず、ようやくオペレーターにつながるのを待たされた挙げ句、最初から説明し直すよう求められたら、顧客がどう思うかは想像に難くないだろう。

その結果は予測可能だ。顧客は企業とのつながりを感じられなくなる。顧客体験は、何度も繰り返されるやり取り(リピート購入)ではなく、単なる一回限りの取引となり、その企業は競合他社と変わらないコモディティになってしまう。そして顧客は、この企業は問題を解決してくれるほど自分たちのことを気にかけてはくれない、と諦めるようになる。

テクノロジーは人間を支援するものであり、その逆ではない

私はAIの熱心な支持者だが、それはAIが正しく活用されている場合に限る。筆者が実施した2026年顧客サービス調査によると、顧客はAIが体験をより迅速、簡単、便利にするものであれば歓迎している。具体的には、58%の顧客がAI技術は顧客体験全体を向上させる可能性があると考えており、54%がAIやチャットボットによってカスタマーサービスのスピードと効率が大幅に向上したと回答している。しかし、顧客が不満を抱くのは、テクノロジーのせいで自分の問題を解決してくれる人間の担当者にスムーズにつないでもらえないときだ。

自動化は、摩擦をなくすためのものであり、共感を排除するためのものであってはならない。AIは定型業務を処理し、従業員が関係構築や複雑な問題の解決に使える時間を増やすべきだ。優れたテクノロジーは、思いやりの代わりにはならない。システムが機能していれば、それは企業が機能するシステムを構築するだけの配慮を払ったという証拠になる。そして、さらなるサポートが必要な場合には、顧客を人間の担当者へとシームレスにつなぐ仕組みが整っているべきだ。

スマートな企業は、テクノロジーを人間のサポートと競合させるのではなく、両者を連携させるべきだと認識している。

「ハート(心)」を採用する

「態度(人柄)で採用し、スキルは訓練せよ」という格言を聞いたことがあるかもしれない。ベッカーマン氏はこれをさらに一歩進め、「態度」を「ハート(心)」に置き換え、さらに経験の必要性を加えた。彼女のアドバイスは、「ハートと経験で採用し、スキルは訓練せよ」というものだ。

これは、私が数年前にアメリカン・エキスプレスのグローバル・カスタマーサービス部門バイスプレジデント(当時)だったジム・ブッシュ氏にインタビューした際、彼が語ってくれた素晴らしいエピソードを思い起こさせる。その内容は、著書『The Amazement Revolution』にも収録している。ブッシュ氏は、カスタマーサポート担当者の採用について語り、コールセンターでの数年の実務経験を持つ人物と、コールセンターの経験は皆無だがホテルのフロントで働いた経験のある人物のどちらかを選ばなければならないとしたら、ホテルの元従業員を採用すると述べた。

ブッシュ氏は、有能な従業員であれば、システムやプロセス、製品の知識は誰にでも教えられるが、心から気にかけることを教えるのははるかに難しい、と続けた。優秀なホテル従業員はホスピタリティ精神を備えており、そこにはブッシュ氏が求めていた「ハート」と「思いやり」が含まれているのだ。

サービスこそがブランドである

ベッカーマン氏の著書の中で、私が特に気に入っているのが第14章の「サービスこそがブランドである」だ。

多くの企業が広告やマーケティングキャンペーンを通じてブランドを定義するために多額の費用を投じているが、顧客が定義するブランドは異なる。顧客は自らの体験を通じてブランドを定義する。企業とのあらゆるやり取りは、ブランドプロミスを強化するか、さもなければ弱めるかのどちらかだ。

求められたことをこなすだけでは、単に取引が完了するにすぎない。そこに思いやりを持って対応することで、感情的なつながりが生まれる。それこそが、顧客の記憶に残るものだ。

もしサービスがあなたのブランドであるなら、他人に話したくなり、何度も足を運びたくなるような体験を提供しよう。

おわりに

企業は顧客を思いやる心を忘れてしまったわけではない。ただ、多くの企業が効率化を重要視しすぎるあまり、以前のように顧客を大切に扱う能力が損なわれてしまっているのだと私は信じている。

ベッカーマン氏の『When Did You Stop Caring?』は、顧客を思いやることが決して甘えではなく、戦略的なものであることを思い出させてくれる。AI、自動化、セルフサービスは、顧客対応を容易にするためのものであり、顧客を避けることを容易にするためのものであってはならない。将来勝ち残る企業は、従業員をAIに置き換える企業ではなく、テクノロジーを人間と連携させて活用する企業だ。多くの顧客は、質問に対する迅速な回答や問題の簡単な解決方法を求めているが、それと同時に、企業や従業員から大切にされていると感じたいとも思っている。

forbes.com 原文

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