1986年、大半の人が地球温暖化や気候変動という言葉を耳にするずっと以前のことだが、私はNASAのゴダード宇宙研究所(GISS)にある新しい上司のオフィスに行き、今後の研究計画について尋ねた。数週間前にジュニア科学プログラマーとして採用され、基本的な要領は掴めていた私は、チームとしてどのような科学的研究に取り組むのかを知りたかったのだ。
上司は「地球がだんだんと温まっている可能性があるとみられる」として「これが起きている兆候を探す研究を行う予定だ」と話した。
もしこの兆候が見つかり、実際に化石燃料のせいで地球の温暖化が進行中だとすると、未来はどのような姿になると考えられるかについて、上司は説明してくれた。ミーティング終了後、私は頭を冷やすために長い散歩に出かけなければならなかった。
これは40年前のことだ。あの日の午後に上司が説明してくれた内容の、ほぼ何もかもが実際に起きていることが明らかになっている。現在、欧州や米国が過酷な「ヒートドーム」に相次いで襲われ、制御不能な森林火災の影響で健康に害を及ぼす大気汚染が米北東部の大半に広がる中、現在起きていることについて今こそ立ち止まって考える良い機会だ。
化石燃料の大規模な利用が、地球の気候状態を転換させ始めるのに十分な太陽エネルギーを捕捉する可能性があることは、40年前に科学によってすでに特定されていた。この現象が気候変動と呼ばれることがあるのは、そういう理由からだ。新たに大気中に排出された二酸化炭素(CO2)によって捕捉される全ての熱が、平均すると、地球の気温を上昇させる。温暖化と呼ばれることもあるのは、そういうわけだ。この変化の影響として予測されていたのは、ご想像の通り、ヒートドームの拡大と森林火災の増加だった。
つまり、このような事態が起こることは、かなり以前からわかっていた。わかっていなかったのは、それがどう「感じられる」かだ。これは大きな違いになる。地球温暖化はグラフ上の数値に過ぎず、抽象的な概念だった。それが今や実際に本格的に始まることにより、自分の喉に吸い込む煙として実感できる。真昼に空が赤くなるのを目の当たりにする。ヒートドームが引き起こす激しい暴風雨によって多数の航空便が欠航になる中で、この状況に耐え抜かなければならないのだ。
今まさに人類はその方向に向かっている。今夏に目にしているのは、地球温暖化のティザー予告のようなものだ。月日が過ぎると本予告編が発表され、そして今の子どもが大人になる頃までには、映画の本編が公開される。未来は予測し難いけれども、ある程度の確信を持って言えるのは、この映画がコメディーにはならないことだ。



