最近の映像でモスクワは空が厚い黒煙に覆われ、さながら「ロード・オブ・ザ・リング」の冥王の国「モルドール」のような光景を呈している。「ロシア版アマゾン」とも言われるロシアの大手EC(電子商取引)事業者、ワイルドベリーズがモスクワ近郊で運営する物流施設がウクライナのドローン(無人機)に攻撃され、完全に破壊された。同社のほかの施設も相次いで同様の事態に見舞われている。
A helicopter tries to extinguish the massive Wildberries warehouse fire in Elektrostal, Moscow region, after the overnight drone attack on Russia. https://t.co/tALI6HnZwx pic.twitter.com/0uch06CG1j
— Special Kherson Cat 🐈🇺🇦 (@bayraktar_1love) July 18, 2026
この攻撃による経済的損害は甚大であり、推定で少なくとも1500億ルーブル(約3100億円)に達する。モスクワ市民のなかには注文を取り消された人が大勢いるだろう。そのうえ、大気も深刻に汚染された。この戦争を“他人事”と思っていた人たちも考えを改めつつあるかもしれない。ワイルドベリーズのマーケットプレイスに出店している販売事業者の多くが事業停止に追い込まれていると伝えられ、彼らこそその筆頭ではないか。
とはいえ、軍事的な観点から見ると、この攻撃やワイルドベリーズのほかの施設をのみ込んだ大火は、他国に対しても重要な教訓を与えている。ウクライナは現代のオンライン経済に潜む新たな弱点を見つけ出し、それを効果的に突いたのだ。
「起爆装置」ドローン、再び
ウクライナのファイア・ポイント製「FP-1」のような攻撃ドローンは、ミサイルや軍用機に比べるとペイロードが格段に小さい。たとえば、トマホーク巡航ミサイルは450kgの弾頭を備える。F-15E戦闘爆撃機は通常、合計で4.5t超の爆弾などを搭載し、最大積載量はもっとある。B-1B爆撃機にいたっては最大で34tもの兵器を搭載できる。
それに対してFP-1は、長距離攻撃仕様の場合、弾頭重量は50〜60kg程度しかない。したがって、こうした兵器では目標を入念に選ぶ必要が出てくる。この程度の炸薬量では、バンカー(主に地下に設けられる堅固な構築物)はびくともしないかもしれない。また、工場やオフィスビルのような大型施設に与えられる損害も限定的であり、攻撃を有効なものにするには複数回の命中が必要になるだろう。
ウクライナの作戦立案者たちは、小型ドローンによる攻撃の有効性を高める秘訣は、その爆発力ではなく「手法」にあるという点を熟知している。米海兵隊出身の軍事専門家T・X・ハメスが2016年に生み出した言葉を借りれば、ドローンは「起爆装置を持ち込む(bring the detonator)」だけでよい。ドローンはそれ自体の威力で目標を破壊しなくても、火がつくと自ら破壊していくような目標を見つければ、あとはそれを起爆させるだけで破壊できるということだ。



