ウクライナ軍の無人機(ドローン)がロシア軍の後方支援網を混乱させ、ロシア国内の軍事施設や産業施設を攻撃する中、同国政府は新型中距離弾道ミサイル「オレシニク」に注力しようとしている。こうした動きは、ウクライナによる長距離攻撃作戦がロシアの戦争支出を増大させている状況下で強まっている。
米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は最近、ロシアは最大45万人の戦死者を含む推定140万人の死傷者を出したことで、軍事的主導権を失ったと結論付ける報告書を公表した。フィンランドを拠点にウクライナ侵攻に関する情報を分析するブラックバード・グループは、ロシア軍が6月末時点でわずかながら領土を失ったと推定しており、攻勢作戦を継続しているにもかかわらず、同軍は2026年に入って2度目の領土損失を記録した。
ウクライナ軍の作戦は、ロシア国民の日常生活にも混乱をもたらしている。ロシア独立系ニュースサイトのメディアゾーンは、6月下旬時点で同国の56の地域で燃料配給制が実施されたと報じた。英非営利団体「情報レジリエンスセンター(CIR)」の研究員カイル・グレンは筆者の取材に対し、こうした燃料不足がウクライナ侵攻開始以来、ロシアが直面する最大の国内問題の1つになっていると語った。グレンによると、輸送費の上昇が食品をはじめとする商品の価格を押し上げており、ロシア政府が国民に対し、ウクライナ侵攻は依然として制御下にあると説得するのが困難になりつつあるという。
ロシアはなぜオレシニクを使い続けるのか?
ロシア軍はオレシニクの導入以来、ウクライナのキーウ首都圏に対する大規模な5月の攻撃を含め、少なくとも3回発射している。オレシニクは通常弾頭と核弾頭を搭載できるものの、通常弾頭による攻撃で同等の有効性をまだ実証できていない。オレシニクの軍事的成果が限定的であるにもかかわらず、なぜロシアはこの兵器を強調し続けるのだろうか?
アナリストへの取材や新たに明らかになった技術的証拠によると、オレシニクの主な役割は、西側諸国政府の意思決定に影響を与えつつ、国内では大統領府(クレムリン)の力を強調することにあるようだ。
筆者の取材に応じた米非営利団体「ウクライナ・フリーダムプロジェクト」の創設者であるスティーブン・ムーアは次のように説明した。「オレシニクの軍事的な価値はほとんどない。他方で、核弾頭を搭載可能なミサイルをウクライナに向けて発射することで、西側の軍事当局者を震え上がらせようとしているのだ」
オレシニクは戦闘に勝利することより、核による威嚇を通じてウクライナに対する西側からの追加支援を阻止することを目的としている。さらに、オレシニクの発射によって、クレムリンは国民に対して自国の強さを強調している。これについて、ムーアは次のように分析している。「ロシア国民は、ウラジーミル・プーチン大統領の自国を防衛する能力について、疑問を持ち始めている。同大統領は強さを示す必要があるが、その手段は尽きかけている。オレシニクは、自分自身の小ささを感じている男にとっての大きな爆弾なのだ」



