将来の天才を思い描いてほしいと言われると、たいていの人は「神童」の姿を思い浮かべる。3学年上の数学の方程式を解く子ども、8歳のチェスの天才、あるいは思春期を迎える前にリサイタルを開く若きバイオリニストといった姿だ。
世間一般のイメージでは、才能(ギフテッド)は早い時期に開花するものであり、大人はそれをいち早く見つけ出し、伸ばすだけでいいと考えられている。この信念に基づき、家庭や学校、才能育成プログラムは1世紀近くにわたって運営されてきた。
傑出した子どもを見つけ出し、他の誰よりも早く、より多くの時間、より集中した環境、より専門的なコーチングを提供する。そこには、幼少期の優秀さは大人になってからの優秀さの「予告編」であり、同一人物の縮小版あるいは大まかな下書きであるという前提がある。
しかし、科学誌『Science』などで話題となった近年の画期的なレビュー論文は、その前提がほぼ的外れであることを示唆している。スポーツ科学者のアルネ・ギュリッヒと心理学の国際研究チームは、数十年に及ぶ才能研究における奇妙なギャップに気づいた。それは、実際に「世界最高」になった人々を対象にした研究がほとんど存在しないということだった。
従来の調査が対象にしていたのは、才能ある学生や有望なジュニア選手、音楽院に通う子どもたちといった、若い「サブエリート(エリート予備軍)」であり、彼らの成長パターンがそのままトップ層にも当てはまると暗黙のうちに仮定していた。この偏りを正すため、ギュリッヒらのチームは、ノーベル賞受賞者やオリンピックのメダリスト、チェスのグランドマスター、一流のクラシック作曲家など、現役で最も活躍している傑出した大人約3万5000人の成長履歴を統合。より的確な問いを立てた。それは「才能ある子どもたちがどう成果を出しているか」ではなく、「実際に世界最高となった大人たちは、どのようにしてその域に達したのか」という問いだ。
研究チームが見いだした結果は、科学、スポーツ、音楽、チェスなどのマインドスポーツなど、一見共通点のないあらゆる分野において、驚くほど一貫していた。
真の「才能」を開花させるスローバーン(遅咲き)の法則
分析の結果、3つのパターンが浮かび上がった。第一に、同世代の中で最も優秀とされる若者が、大人になってからもトップに立ち続けるとは限らないということだ。幼少期の優秀さと大人になってからの優秀さの関連性は低く、分野によってはほとんど関連がないことさえあった。
第二に、最終的に世界クラスの地位に達した人々は、活動の初期段階において、成長のペースが遅く、かつ不規則な傾向があった。子どもの頃に同世代の中で最も優れていたわけではないケースが多く、何年もの間、周囲に埋もれて目立たない存在だった人も少なくなかった。



