今日のリーダーシップは、すべての問いに答えを持っていることによって定義されるものではない。私の経験では、優れたリーダーであるとは、決断が現実に重大な結果をもたらす局面において、明晰さ、自信、そして冷静さを維持できることを意味する。
上級リーダーの職務においては、意思決定の質が企業文化、信頼性、そして長期的な業績を形づくる。今日のビジネス環境において、この能力をどのように活用・育成すれば、人材を守り、組織を保護し、信頼を築けるのかを見ていこう。
なぜ「人を中心に据えた意思決定」がリーダーにとってこれほど難しくなったのか
業界を問わず、リーダーの意思決定はより迅速で、リスクが高く、複雑になっている。オーストラリアの経営者、特に労使関係や人事上の義務に対処する立場の人々にとって、環境はますます厳しさを増している。
職場関連法制は引き続き厳格化している。従業員の公平性、共感、透明性に対する期待は高まっている。市場環境は依然として不透明だ。そして、オンボーディングから業績管理、組織再編、紛争解決に至るまで、ほぼすべてのリーダーの意思決定が、法的、業務上、または人的な結果を伴う可能性がある。
私が目にする、苦境に立つリーダーの多くは非常に有能な人物である。しかし彼らは、規制やコンプライアンスの枠組みが一段と複雑化するなかで、迅速に意思決定を行い、しかも毎回正しい判断を下すことを求められる現実に直面している。場合によっては、そうした判断に必要な研修や支援を得られていない。そして、あらゆる企業の最大の資産である従業員の満足度が、組織の成長、人材の維持、エンゲージメントに直接影響を及ぼす時代においては、意思決定はタイムリーであるだけでなく、慎重さと共感の双方をもって行われる必要がある。
これらすべての要因は、意思決定が、あらゆるリーダーが伸ばすべき中核的なリーダーシップ能力であることを示している。
優れたリーダーの意思決定に共通するもの
解雇、苦情、不祥事、業績不振など、扱いの難しい人事案件が発生したとき、リーダーはしばしば直感に頼る。直感は重要な役割を果たすが、それだけでは通常不十分である。私の経験では、リーダーによる意思決定、とりわけ複雑な人事関連の事柄を扱う際の意思決定には、次の5つの特性が求められる。
1. タイムリーであること:ためらいは混乱とリスクを招き得る一方、性急に動きすぎれば誤った対応や人間関係の悪化につながる。行動に移るのに十分な情報がそろったタイミングを見極められることが重要である。
2. 法的理解に基づいていること:雇用法の基礎を深く理解していれば、感情ではなく、公平性と手続きに根ざした意思決定ができる。
3. 明確さと共感をもって伝えられること:私の経験では、従業員は誠実さ、一貫性、敬意を重視する傾向がある。難しい決定であっても、思慮深く伝えられれば受け止められ方はよくなる。
4. 十分に文書化されていること:公正な決定であっても、何も記録されていなければ争いになりうる。適切な文書化を通じて透明性を確保し、関係者全員を守ることが重要である。
5. 専門家の支援を受けていること:リスクの高い意思決定を、リーダーが一人で進めるべきではない。人事や労使関係の専門家が存在するのには理由がある。意思決定を安全で持続可能なものにするためである。
意思決定力を高める方法
今日から意思決定能力を高めるために実践できる3つの方法を紹介する。
1. 自分自身の意思決定フレームワークを構築する。決定を下す前に、次の問いを自分に投げかける。
・これは事業、顧客、従業員にとって公平か。
・これは自社の価値観や事業計画と合致しているか。
・これはコンプライアンスに適合しているか。
・専門的な助言が必要か。
・法的リスク、法的なメリット、業務上のコストは何か。
・どのような結果が、事業と関係する人々の双方を支えるか。
2. 事態が悪化してからではなく、早い段階で計画し助言を求める。リーダーは、何かがうまくいかなくなってから初めて支援を求めることが多い。私の経験では、最も優れた意思決定の多くは、最初の段階から専門家の支援を受けて形づくられている。
3. 職場関連法と人々の期待を理解することに投資する。法務の専門家になる必要はないが、基本を理解していれば、判断を下す必要があるときに自信を持ち、ためらいを減らすことができる。
最後に
優れたリーダーシップには、公平性、共感、法的理解をもって難しい決定を下す力が含まれる。CEOの役割に就こうとしている、あるいはそれを目指しているリーダーに1つ助言できるとすれば、こうである。プレッシャーの下で、自信を持ち、人を中心に据えた意思決定を卓越したレベルで行えるようになれば、それはどんな戦略文書、取締役会、年間目標よりも、あなたのリーダーシップを形づくり得る。そしてそのスキルは、組織と従業員が次に何に直面しようとも、それを乗り越える力になり得る。



