「われわれを信じてほしい」という指標の問題
成長のジレンマに追い打ちをかけるのが、ネットフリックスが投資家に求める「成功の測り方」の変更だ。長年、投資家は会員数の伸びを、そして最近では視聴時間を追いかけていればよかった。ところが現在、経営陣自身が「会員1人あたりの視聴時間は減少傾向にある」と認めており、同社は評価の軸足を「エンゲージメントの質」と呼ぶ指標へと移しつつある。
それは何を意味するのか。実のところ、よくわからない。経営陣はこの「質」の指標の詳細について、「競争上の優位性」であるとして非公開にする方針を示した。不完全とはいえ明確だった指標から、外部には見えない独自指標への転換は、重大なリスクをはらむ。目に見える指標が悪化するなかで、「水面下では状況が改善している」と投資家に信じてもらう必要があるからだ。わかりやすい指標からの撤退が投資家に突きつける問いについては、別の分析でさらに掘り下げている。オプション市場はこの不確実性を織り込んでいるようだ。インプライド・ボラティリティ(オプション価格から逆算される、将来の株価変動の大きさの予想)は過去1年のレンジの78パーセンタイルに達しており、株価が異例の大きさで動くとの見方を示している。
ここでの最大のリスクは、投資家からの信頼に関わる問題だ。プラットフォームの健全性を測る主要な指標が同社にしか見えないものになれば、投資家が事業を評価することは格段に難しくなる。市場は、自ら検証できないストーリーに対してより大きな「安全余裕」を要求するため、この透明性の欠如は株価の恒常的なディスカウント(割安評価)につながりかねない。
結局のところ、ネットフリックスの最大の弱点は、成長が減速するまさにそのタイミングで、ストーリーが複雑になりつつあることだ。真の試金石は、隠しようのない唯一の指標である売上高の伸びを、広告、ライブイベント、ゲームという新たな取り組みによって再び加速させられるかどうかだ。


