私はラグジュアリー、ファッション、小売業界に20年間身を置いてきたが、これほど多くの根本的な要素が一度に動いた年はほとんど記憶にない。現在、取締役会で交わされている議論は、勝ちパターンが単純で価格決定力が無限にあるように感じられた2022年の議論とはまったく異なる。2026年、その勝ちパターンは崩壊した。それに代わる新たなルールは現在も模索中であり、いち早く決断を下したメゾンが次の10年を定義することになるだろう。
CEOたちから「実際に何が起きているのか」と尋ねられたとき、私は5つの具体的な変化に注目するよう伝えている。その一つひとつがそれ自体で重要だ。これらが合わさることで、なぜ今、業界の空気が一変しているのか、そして、最も早く適応した経営陣が、躊躇している競合に比べて圧倒的に大きな価値を手にしてこの10年を終えることになる理由が説明できる。
変化1:憧れ層の顧客は、立ち去ることに引け目を感じなくなった
ここ数年、主要なヘリテージメゾンの間で主流だった戦略は、値上げを行い、間口を狭め、上位1%の富裕層にさらに傾斜することだった。それは、通用しなくなるまではうまくいっていた。年に一度、自分へのご褒美やアイデンティティの象徴として大切な一品を購入する、極めて重要な中間層の実務家たち、すなわち「憧れ層(アスピレーショナル・カスタマー)」の顧客は、静かに立ち去っていった。私が驚かされるのは、彼女たちがその選択に極めて自信を持っているように見えることだ。
今年3月、かつてラグジュアリーファッションに年間およそ15,000ドル(約246万円)を費やしていた30代後半の元クライアントとコーヒーを共にした。彼女はこの18カ月間、ほとんどお金を使っていない。彼女は「価格が高すぎて手が届かなくなった」とは言わなかった。そうではなく、「存在を無視されているように感じた」と語ったのだ。彼女が10年間忠誠を誓ってきたメゾンは、彼女のような顧客こそが、あらゆる不況期にブランドを支えてきた存在であるという事実を認めるのをやめてしまっていた。
変化2:富裕層の支出は、ファッションからウェルネスへ移行している
米国、英国、フランスなどの特定の国における富裕層の消費者が、2026年にウェルネスへの支出を増やしていることにも私は気づいている。さらに重要なのは、彼らの多くが、従来のラグジュアリーファッションから、健康の最適化、長寿(ロンジェビティ)プログラム、あるいはウェルネス不動産へと、資金を積極的に振り替えている点だ。
かつてハンドバッグを購入していた憧れ層の消費者は、今や長寿診断パッケージを購入している。かつてシーズンごとのワードローブに投資していた超富裕層のクライアントは、ウェルネス・コミュニティのレジデンスに投資している。ウェルネスはもはや、ラグジュアリーの隣接分野ではない。同じ財布をめぐってラグジュアリーファッションと直接競合しており、現在はウェルネスが勝利を収めている。この変化を認識し、ウェルネス、長寿、そして健康志向のホスピタリティ分野へと確かな説得力を持って進出するメゾンは、ハンドバッグの販売だけでは生み出せない成長を取り込むことができるだろう。ウェルネスを中核カテゴリーとしてではなく、単なるマーケティングの体裁として扱うメゾンは、シェアを失い続け、その理由に困惑し続けることになる。
変化3:「体験」が「モノ」を凌駕する
また、より若い世代の富裕層バイヤーが、ハンドバッグやプレタポルテ(高級既製服)を犠牲にして、旅行、ウェルネス、プライベートイベント、文化的体験へのアクセスに支出しているのも目にしている。この層の支持を集めているメゾンは、製品カタログではなく、エコシステムを構築している。
彼らは顧客が住む都市でプライベートなディナーを主催する。顧客が実際に足を運ぶ文化的イベントのスポンサーを務める。顧客サービスを単なる取引業務から戦略的業務へと移行させ、それにふさわしい予算と人員を配置している。現在も主に新商品の発売によってブランドを定義しようとしているメゾンは、顧客の財布に占めるシェアが縮小していくのを目の当たりにしており、その原因を大抵見誤っている。
変化4:ヘリテージこそが、新たな差別化要因となる
過去10年の大半において、ブランドが注目を集め続けるための手段は、ストリートウェアとのコラボレーション、著名なクリエイティブディレクターの起用、そして積極的なカテゴリー拡張だった。しかし2026年、競合他社を凌駕する実績を上げているメゾンは、十分に活用されてこなかった奥深いアーカイブを抱え、それを本格的に掘り起こし始めているところだ。
本物であること(オーセンティシティ)こそが、新たなロゴなのだ。顧客は、模倣や二番煎じのコレクションを瞬時に見抜き、そうしたものへの支持をやめている。クリエイティブディレクターが今取れる最も戦略的なアクションは、メゾン外部の誰よりもアーカイブを熟知し、単に過去の意匠を借りてくるのではなく、その文脈を真に受け継いだコレクションを構築することだ。
変化5:AIが最初の接点になる
これこそが、クライアントを最も驚かせる変化だ。私たちは、ブティックやウェブサイトを訪れる前に、対話型AIを通じてラグジュアリー商品の購入をリサーチする富裕層の顧客がますます増えていることにも気づいている。彼らはAIに対し、各メゾンの比較や、職人技(クラフツマンシップ)の評判の要約、特定の機会に適したアイテムの推薦などを求めている。ほとんどのヘリテージメゾンは、このようなAI環境において自社製品がどのように表示されるかについて、まったく投資を行っていない。彼らのカタログは機械が読み取れる構造になっておらず、製品のストーリーもAIが正確に要約できる形式で書かれていない。2026年にこの仕組みを解明したメゾンは、現時点では損益計算書に現れない顧客開拓チャネルを手に入れることになり、それがラグジュアリーにおける次世代の新規顧客獲得を定義することになるだろう。
今、取締役会に伝えていること
取締役会のセッションを締めくくる際、私は経営陣に一つの見解を残している。ラグジュアリー業界の次の10年は、最も高い価格を設定したり、最も排他的な顧客リストを持ったりしたブランドが勝つのではない。最も低い価格帯を含め、あらゆる価格帯において顧客に「インサイダー」であると感じさせる方法を見出したブランドが勝つのだ。上記の5つの変化は独立した変数ではない。それらは互いに補強し合っている。憧れ層の顧客を連れ戻し、彼らの資金の動きを追ってウェルネスや長寿分野へと進出し、本物の体験型インフラを構築し、知性を持ってアーカイブを掘り起こし、AIの検索で見出されるようにするメゾンは、競合が容易に模倣できない複合的な優位性を築き上げることになる。
このことを認識し、意図を持って再構築を行うメゾンが、次のサイクルを支配することになる。2022年の勝ちパターンへの回帰を望むメゾンは、失敗のケーススタディとなるだろう。私はこの業界が多くのサイクルを生き抜くのを見てきたため、各経営陣が自分自身でまだ認めていないとしても、今どちらの道を選ぼうとしているのかが分かる。このリセットは危機ではない。物事を明確にする瞬間であり、それがもたらす明確さは、多くのCEOにとって、できれば目を背けたい種類のものだ。それこそが試練である。これからの18カ月は、不快な明確さに基づいて行動を起こす覚悟のあるメゾンと、快適な混乱を好むメゾンとを容赦なく振り分けることになるだろう。



