ロシア・サンクトペテルブルクにある電子商取引大手「ワイルドベリーズ」の物流センター2カ所が米国時間7月24日、ウクライナによるドローンの攻撃を受けた。ワイルドベリーズを率いるのは富豪タチアナ・キム(50)だ。同社の拠点への攻撃はこれで7カ所に達した。
ウクライナのドローン、1週間で物流センター7カ所を破壊
複数の自爆型ドローンが7月24日、ロシア・サンクトペテルブルクの巨大倉庫2棟に突入した。ウクライナが、ロシア一の富豪女性、タチアナ・キムが支配するEC大手ワイルドベリーズのインフラに対する組織的な攻撃を拡大したためだ。この1週間で、ウクライナのドローンはワイルドベリーズの最大規模の物流センターのうち7カ所を破壊し、大規模な火災を引き起こした。報道によると、これまでに少なくとも8人の民間人が死亡し、数十人が負傷している。
「ロシア版アマゾン」として知られるワイルドベリーズへの攻撃は7月18日に始まった。初はロシア中部とモスクワ郊外エレクトロスタリの物流センターが標的となり、7月22日にはクリミア半島に近いクラスノダールとスタヴロポリ地方にも攻撃が及んだ。今回のサンクトペテルブルクでの2カ所を合わせると、ワイルドベリーズの最大級の物流センターの半数超が黒煙を上げて焼失したことになる。
死亡した従業員の遺族に、1人あたり約416万円の支払いを表明
タチアナ・キムは24日、自身のテレグラムで、サンクトペテルブルクの2カ所で起きた火災による死傷者はいなかったと明らかにした。18日の最初の攻撃を受けた際には「一般の人々、私たちの従業員、そしてただ自分の仕事をしているだけの私たちへの攻撃が引き起こしたすべての感情を言い表す言葉がない」と述べていた。
また、「私たちは人々の利益のために、自分たちの仕事を続けなければならない」と付け加え、死亡した従業員の遺族に対してそれぞれ200万ルーブル(約417万円。1ルーブル=約2.1円換算)、重傷者にはその半額をワイルドベリーズが支払うと発表した。ワイルドベリーズの従業員数は4万8000人。
フォーブスの推計によると、同社の2024年の売上高は約8400億ルーブル(約1.76兆円)で、未確認の2025年の売上高は150億ドル(約2.45兆円。1ドル=163円換算)に達したと報じられている。攻撃が始まる前、フォーブスはキムの保有資産を81億ドル(約1.33兆円)と推定しており、彼女はロシアで最も裕福な女性だった。
ゼレンスキー、軍用品を流通させる倉庫を正当な軍事目標と主張
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、7月18日の最初の攻撃直後、声明において一連の攻撃を正当化し、ロシア奥地にある倉庫は正当な軍事目標だと主張した。ワイルドベリーズでは、防弾チョッキ、軍用ヘルメット、ドローン、光ファイバーケーブルのほか、ウラジーミル・プーチン大統領がウクライナへの全面侵攻を「特別軍事作戦」と呼ぶのをたたえる旗やワッペンも販売されている。
今回の攻撃は、オデーサとミコライウにあるノヴァ・ポシュタ(Nova Poshta)が所有するウクライナの配送ターミナルに対するロシアの攻撃への報復とも見られている。キーウ経済大学の今年初めの報告書によると、ロシアはウクライナ国内にある92の工場や倉庫を破壊したという。
ウクライナのドローン部隊指揮官ロバート・ブロブディはテレグラムで、今回の攻撃の狙いはロシアの物流網を弱体化させるだけでなく、ロシア人の心理に打撃を与えることにあると記した。「これは、侵略国の従順な国民にとっての快適な平時の生活という幻想を、わずか数秒で打ち砕くためのものだ」とブロブディは綴っている。
今回の攻撃拡大より前の時点で、モスクワ・タイムズはワイルドベリーズのインフラが被った被害額を13億ドル(約2130億円)以上と推定していた。競合のヤンデックス・マーケットは7月18日の攻撃の2日後、ドローン攻撃などで焼失した商品への賠償責任を負わない規約変更を発効させた。オゾンはこれに先立つ6月12日(7月1日とする報道もある)に同様の変更を済ませていた。



