経営・戦略

2026.07.28 10:30

ソニー復活劇を支えたCFOの決断 撤退と大胆投資、組織文化育成がもたらした企業価値向上

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継承されるCEOとCFOの補完関係

私は当時ニューヨークで投資家としてソニーを見ており、IRチームと接する機会があった。当時から印象的だったのは、組織全体に漂う企業文化の変化である。吉田氏は役職に関係なく社員を「さん」付けで呼ぶことで知られていた。外部から見ればささいなことかもしれない。しかし、そのような姿勢は確実に組織へ浸透していたように感じる。実際、ソニーのIRチームとのやり取りにおいても、投資家に対して誠実かつ率直に向き合う文化が根付いていた。都合の良い話だけをするのではなく、課題やリスクも含めて説明しようとする姿勢があった。

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吉田氏は優れた資本配分や財務戦略を実行しただけではない。そうした組織文化を育み、ソニーの長期的な企業価値向上を支える基盤づくりにも貢献した。CFOというと資本配分や財務戦略が語られがちだ。しかし、本当に優れたCFOは数字だけでなく、組織文化の形成にも深くかかわる。

その後、吉田氏自身がCEOに就任すると、今度は十時裕樹氏がCFOとしてその隣を支えた。現在は十時氏がCEOを務めている。ソニーが興味深いのは、個人の能力だけに依存するのではなく、CEOとCFOが互いを補完しながら意思決定を行う仕組みや文化を継承してきた点にある。

現在のソニーは、ゲーム、音楽、映画、イメージセンサーなど多様な事業を抱える巨大企業である。しかし投資家が評価しているのは、現在の事業ポートフォリオだけではない。どの事業に投資し、どの事業から撤退し、どこに人材を配置し、どのようなリターンを目指すのか。その意思決定を継続的に行う経営陣への信頼である。

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優れたCFOとは、財務の専門家であることにとどまらず、企業の信頼を支える経営者なのである。

加藤寛之◎コロンビア大学工学部電気工学科を卒業。ドイツ証券、Point72 Asset Managementおよびゆうちょ銀行などで日本株のファンダメンタルズ・ボトムアップ戦略のアクティブ運用に従事。現在は、Gyosekiで投資プロセスの可視化・共有を支援するプラットフォームの開発・提供を手がける。また、メイテックグループホールディングスCEOアドバイザリー・ボード・メンバー、および、一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻(一橋ICS)客員教授を務める。

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