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2026.08.01 14:15

入場者数900万人、事業規模1500億円。Bリーグ「次の10年」掲げた異例の中身

入場者数が1万人を超えた千葉ジェッツの拠点、ららアリーナ東京ベイ(show999 - stock.adobe.com)

サラリーキャップ自体にも、来シーズンから限定的な緩和措置が加わる。

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B.PREMIERにおける8億円、B.ONEの4億円という上限額そのものは変えないが、現場の担当者が計算ミスや監査時の判定違いで即座に降格処分を受けるリスクを和らげるため、超過分に高い税率を課しつつも、降格などの厳罰は避け、それぞれ3000万円、1500万円というバッファを設けた。「万が一ミスして降格なんてなったら責任を負えない、という立場に置かれているスタッフがいらっしゃるわけです」という言葉には、制度設計を担う現場のクラブスタッフへの配慮がにじむ。ルールを厳格にするだけでなく、運用可能な形に磨き上げていく姿勢が、Bリーグの制度成熟を物語っている。

もうひとつ注目すべきは、B.LEAGUE NEXTをめぐる改革である。2027-28シーズンには、B.ONEとB.NEXTの間に交流戦が導入される。NEXTのクラブは限られた相手と繰り返し対戦する構造にあり、地域でのプレゼンス確立や選手のモチベーション維持が難しいという課題を抱えていた。コミッショナーは「同じチームと対戦することが多く、この構造がいつまで続くのかということで、ネクストのチームへ移籍することに戸惑う選手もいますし、外国籍選手も同じチームとばかり対戦することに驚きを持って受け止める選手もいると聞いています」と率直に語った。

交流戦の導入にあたっては、選手人件費1億円というミニマム水準の担保を必須条件としつつ、売上高2.5億円、平均入場者数1500人という努力目標も設定し、クラブの事業成長を後押しする仕組みとした。「今回こういうことを決めた上で、ネクストのクラブの経営がさらに上向いてB1に入っていけるように、リーグとしても手厚くフォローしていくことを約束させていただきます」と述べ、「私もできる限りネクストのクラブに足を運んで一緒に営業したいと思っています」とまで踏み込んだ発言をしている点は、トップ自らが現場に立つ姿勢の表れといえるだろう。

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優勝賞金は1億円の大台 MVPも300万円

プレーオフの形式変更も、この10年間の成長曲線に組み込まれた重要なピースだ。2026-27シーズンはB.PREMIER 8クラブ、B.ONE 16クラブでスタートするが、2027-28シーズンにはNBAでも導入されているプレーイン・トーナメントを採用し10クラブに拡大、そして2028-29シーズンには16クラブ全てがプレーオフに進出する形に移行する。

コミッショナーは「各クラブの強い願いでしたし、ファンの皆様や地域の皆様も消化試合をなくしてプレーオフに出られることがビジネスチャンスや地元の盛り上がりにつながるため、増やしたいという願いがありました」と説明した。消化試合の減少は、単に競技的な公平性の問題ではなく、シーズン終盤まで地域の熱量を落とさないための経営判断だろう。

表彰規程の見直しも象徴的だ。

B.PREMIERの年間優勝賞金は5000万円から1億円へと倍増し、B.ONEの優勝賞金も1000万円から5000万円に引き上げられた。得点王やアシスト王など個人タイトルの賞金も一律30万円から90万円へと3倍になり、MVP賞金も100万円から300万円に増額された。コミッショナーは「特に選手の皆さんは喜んでください。ここは重要です!」と冗談めかしながらも、選手への還元を成長の証として位置づけている。事業規模の拡大が、選手のキャリア価値や競技へのモチベーションに直接反映される仕組みを整えたことになる。

「リーグ運営の哲学が成熟した」10年

この一連の制度改革を、コミッショナーは東京証券取引所になぞらえて説明。「東証のプライムとスタンダードとグロースみたいな分け方をして、みんな上場企業だけど、成長プロセスや事業規模によってカテゴリーが分かれているだけ」。かつてはB1、B2、B3のそれぞれに「世界に伍する」「地域の活性化に」といった固定的な役割を割り振ろうとしていたが、実際にはどのカテゴリーも世界を目指しつつ地域の盛り上げにも取り組んでおり、役割が重なり合ってきた。「みんなBリーグだし目指していることは一緒なんだけど、今の立ち位置はここにある、という分け方に整理しました」という言葉は、リーグ運営の哲学がここ数年で大きく成熟したことを示している。

2016年の開幕から2026年のB革新まで10年、そしてここから2036年までの次なる10年。コミッショナー自身、任期は2027年9月まで。10年後にはリーグの指揮から退いているはずだ。しかし、ブリーフィングの最後を「まだまだBリーグの成長余力はあると思いますし、次もっと上を目指そうということで『10年後もっともっと上に行くぞ』というメッセージです。感謝をしつつもさらに行くぞ」という言葉で締めくくった。

入場者数548万人という足元の実績は、決してゴールではなく通過点として語られている。サラリーキャップの精緻化、プレーオフ枠の段階的拡大、NEXTの構造改革、そして47都道府県への展開。積み上げられた制度設計の一つひとつは地味に映るかもしれないが、それぞれが「東の頂」という遠い目標から逆算された布石である。

日本のプロスポーツ経営において、ここまで具体的な数値目標とロードマップを併せて公表するリーグは多くない。売上高やアリーナ整備といった経営指標を、国際大会での優勝という競技目標と同じ土俵に並べて公表する姿勢そのものが、Bリーグという組織の自己認識の変化を映し出している。かつてFIBAからの制裁により国際大会への参加禁止を危惧され「独立リーグとしてどう生き残るか」が最大の関心事だったが、今や語られているのは「世界のバスケットボール地図の中でどう存在感を示すか」という一段階上のテーマだ。

次の10年、Bリーグがこの設計図通りに歩みを進められるか、日本のスポーツビジネス全体にとっても注目に値する試金石だろう。アリーナ投資や地域との共創モデルは、他競技のリーグ経営にも応用可能な示唆を含んでいる。コミッショナーの言葉を借りれば、Bリーグはまだ「もっと高く、もっと遠くへ」向かう途上にある。900万人という数字も、1500億円という目標も、通過点として語られている限り、リーグの成長物語はまだ終わっていない。そして、バスケがまだまだ日本を元気にするだろう可能性を示している。

文=松永裕司

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