ここで、教育関係者が、まず理解すべきは、これらの力は、狭いキャンパスで「知識」や「理論」や「マニュアル」を「他律的に教える」ことによって身につけさせることはできない力であり、職場の同僚や市場の顧客、地域の市民など、様々な人々と仕事やプロジェクトを通じて接する実践体験によってのみ「自発的に学べる」ものだということである。
従って、これらの力の「学びの場」を創るためには、まず、大学や学校という「教育の場」と実社会という「実践の場」の垣根を取り払うことである。そして、体験学習やインターンシップ、サークル活動やアルバイトといった次元を超え、学生が自発的にチームを作って企画を立て、地域起こしの活動に取り組むことや、役所や企業との連携でプロジェクトを実施すること、実際にビジネスを立ち上げることなどの実践体験ができるようにすることである。
そうすれば、この実践体験の場において、学生たちは、苦労しながらも、自然に、(1)コミュニケーション力、(2)コラボレーション力、(3)チームワーク力、(4)リーダーシップ力、(5)マネジメント力、という「五つの力」を、階段を登るように身につけていくだろう。
しかし、そのとき、大学や学校の教員は、こうした実践体験を通じて、学生が、どうすれば「状況推察力」「心理感受力」「対人共感力」に基づく「成熟した人間関係力」を体得できるか、適切な助言ができなければならない。だが、当然ながら、教員自身が、この力を身につけていなければ、その体得方法を学生に助言することはできない。
実は、これからのAI世紀、ここにこそ、大学や学校にとっての最大の難問が待ち受けている。
田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、21世紀アカデメイア学長。多摩大学大学院名誉教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議元メンバー。元内閣官房参与。全国から1万名を超える経営者が集う田坂塾・塾長。著書は『人類の未来を語る』『教養を磨く』など、国内・海外で150冊余。tasaka@hiroshitasaka.jp


