コウモリは飛んでいる鳥を捕まえて食べていた。そう聞くと、遠い国のジャングルにいる巨大なコウモリを連想してしまうが、これは日本で普通に起きていることだった。北海道から沖縄まで、日本全土に生息するヤマコウモリというやや大型のコウモリが、夜間に飛行する小鳥を襲って捕らえる瞬間を、東京大学、同志社大学などによる研究グループが世界で初めて観察し、撮影に成功した。
コウモリはおもに昆虫を食べているが、特定の時期になると小型の渡り鳥を捕食するコウモリがいることが、糞のDNA解析により以前から知られていた。しかし、飛んでいる鳥を捕獲しているのか、ねぐらで休む鳥を襲っているのか、その捕獲方法は謎だった。上空から降下して飛行中の鳥を捕獲している可能性が有力視されているが、あくまで音響データや実験データに基づくもので、実際に観測されたわけではない。
そこで、東京大学農学生命科学研究科、同志社大学音響ナビゲーション研究センターほか、鳥類の研究者などからなる研究グループは、サーチライト、デジタルカメラ、赤外線カメラ、サーモカメラを組み合わせ、多くの渡り鳥が夜間に通過する地点で、2023年10月、8晩にわたり観察を実施した。その結果、ヤマコウモリが飛んでいる鳥を追跡する行動が56例観察され、うち22回はコウモリが鳥の捕獲を試みる(アタックする)様子が見られた。捕獲に成功したのはそのうちの6回だった。
追跡されていたのは、ウグイス、アオジ、クロジなどの小型の鳥類だった。自分よりも大きいアオバトなどを追跡する行動も見られたが、実際にアタックには至っていない。またコウモリが一旦捉えたものの取りこぼして落下した鳥の傷口をDNA鑑定したところ、襲ったのはヤマコウモリであることが確認された。
今回の観測では、ヤマコウモリが捉えた小鳥を掴んで飛行する様子までは確認できたが、その後、鳥をどのように食べているかなどは不明のままだ。また、エコロケーション(音波を発して獲物を捕捉する能力)をどのように使っているのかなど、詳細な捕獲戦略の解明など課題が残る。しかし、捕食者に狙われる危険がほとんどない夜間の渡り鳥という豊富な餌資源を、コウモリがほぼ独占する形で利用していることが視覚的に確認できた意味は大きい。



