そして、もう一つ強く伝えておきたいのが、「紹介」という言葉の扱い方です。
お店に対して自分から「〇〇さんの紹介で来ました」と名乗るのは、かなり際どい行為だと心得てください。よほど親密な間柄でない限り、お店側の内心は「は? 誰ですか、それ」であることがほとんどです。もちろん、そう口には出せません。代わりに「ああ、〇〇様の……」と曖昧に微笑みながら話を合わせてくれるものの、その空気にはどこか薄い気まずさが漂います。本当の「紹介」であれば、本来は紹介した側が先回りしてお店に一声かけているものであり、こちらから名乗るまでもなく店側は既に事情を把握しています。
もしお店から「どちらでお知りになりましたか?」と尋ねられたら、その時に初めて「〇〇さんに教えてもらいまして」と答えれば充分です。最初から「〇〇さんの紹介です!」と自己申告するのは、正直なところ少々格好悪い。そもそもまともな店であれば、紹介であろうと一見であろうと、料理の内容や接客の質が変わることなどないのです。
「本当に良い情報を惜しみなく差し出してもらう」には
身近な食通の「活用法」というテーマで書いてきましたが、実のところ、これは活用というより「知見を分けてもらうための礼儀」と呼ぶ方が正確かもしれません。
相手がどんな分野に強く、何を面白がって飲食店と向き合っているのかを見極める。その上で、自分がその会食に何を求めているのかを言語化し、出し惜しみせず具体的に伝える。そして結果を報告し、感謝を伝え、一方通行の関係にしない。書き出してみれば、どれも特別なことではなく、ビジネスの相談ごとにおける当たり前の作法をなぞっているだけだとお気づきでしょう。
逆に言えば、「オススメある?」の一言で最高の答えを引き出せると思っているうちは、そもそも本気で相手にしてもらえることすらありません。手間と礼儀、その両方を尽くせる人にだけ、彼らは本当に良い情報を惜しみなく差し出してくれるのです。
貴方の周りにいるグルメな友人は、単なる便利な検索窓ではありません。その一軒一軒は、彼・彼女らが自らの時間と足、そして少なくない身銭を切って積み上げてきた、かけがえのない蓄積の結晶です。その蓄積を、貴方はこれまでどれだけ大切に扱ってきたでしょうか。次に「いい店ない?」と口にする前に、一度だけ立ち止まって考えてみてほしいのです。


