最近、保有しているAI(人工知能)銘柄に不穏な傾向があることにお気づきだろうか。アナリストが人気のAI銘柄の収益や目標株価の予測を引き上げ続けているにもかかわらず、株価は下落し続けている。大幅な売上成長予測が出ているにもかかわらず、だ。ヤフー・ファイナンスの集計によると、6月下旬以降、半導体銘柄だけで2兆3000億ドル(約376兆円)以上の時価総額が失われたという。
しかし、アナリストコミュニティが強気の姿勢を崩さないなか、なぜ株価は下落しているのだろうか。好奇心旺盛な筆者は、大量のデータを調査し、このような乖離が過去数十年の間に3回発生していたことを突き止めた。その結末は決して好ましいものではなかった。この乖離を引き起こしている要因を見てみよう。
(なお、本分析に含まれるエヌビディアとクアルコムは、筆者の会社であるカンブリアンAIリサーチ[Cambrian-AI Research]のクライアントである)
アナリストが見据える継続的な強さ
まずはアナリストから始めよう。彼らはバリュエーション(投資価値評価)の上昇に基づいて高過ぎる予測を立てているわけではない。実際、大半のアナリストは保守的なバリュエーション指標を用いている。マイクロン(MU)が良い例だ。キーバンクのジョン・ヴィン氏は、これまで株価上昇の原動力となってきた現在のメモリ不足が、少なくともあと18カ月は続くと考えている。アジアへの出張を経て、同氏は月曜日の調査レポートで、マイクロンの目標株価を1600ドル(約26万円)から1750ドル(約28万円)に引き上げた。これは、現在の株価である904ドル(約14万円)から93%の上昇を示すことになる。ヴィン氏の目標株価は、彼が予測するマイクロンの2027会計年度の収益に対する株価収益率(PER)の9倍に基づいている。マイクロンは本日7%以上、先週比で10%以上、6月30日以降で25%以上下落している。ヴィン氏と同僚のアナリストたちが間違っているのか、それとも市場が間違っているのかのどちらかだ。
アナリストはさまざまな要因に基づいて予測を立てるが、一般的には売上高と利益率を予測して予想収益を決定し、それにPERを掛け合わせて目標株価を算出する。そして、すべてのAI企業は、競争環境にほとんど変化がなく、前途は洋々であると考えている。したがって、エヌビディアやマイクロンをはじめとする多くの企業が魅力的な目標株価を掲げているのを見ても、驚くには値しない。
マイクロンの例は、数多くあるうちの1つに過ぎない。筆者は、過去60日間にAI企業の目標株価を更新したアナリストのリストを作成した。長いリストだが、以下の表にその結果をまとめている。調査対象には、AIアクセラレーター(エヌビディア[NVDA]、AMD)、カスタムシリコン/ネットワーキング(ブロードコム[AVGO]、マーベル[MRVL]、アーム[ARM])、AIサーバー(スーパー・マイクロ・コンピューター[SMCI])、メモリ/高帯域幅メモリ[HBM](マイクロン[MU])、ファウンドリ(TSMC[TSM])、CPU(インテル[INTC]、クアルコム[QCOM])が含まれ、アナリストの予測は合計50件を超えた。ご覧の通り、最も大きな乖離が見られるのは、破竹の勢いで上昇してきた企業(マイクロンやアームなど)や、目標株価が上昇する中で株価の低迷という苦難に長く喘いできた企業(エヌビディア、君のことだ)である。
最後に、歴史的な比較対象を探したところ、過去25年間で3つの事例が見つかった。そのうちの2つのケース(ドットコムバブルのピークと2021年のテック株のピーク)では、株価はピークから6カ月後および12カ月後に大幅に下落していた。2018年の半導体/メモリのピーク時には株価は回復したものの、それには1年を要した。明らかに、わずか3つのデータポイントから結論を導き出すべきではないが、これらは立ち止まって考えさせるのに十分な材料だ。
しかし、市場は怯えている
AIの投資家は多大な含み益を抱えており、利益を守るために常に早期の売りシグナルを探している。需要はいつピークに達するのか。競合他社はどのようにして主導権を握る企業の牙城を崩すのか。ディープシーク(DeepSeek)が突如として登場したときに多くの投資家が懸念したように、競合による不意打ちや、現在のリーダー企業を脅かすイノベーションの可能性を、アナリストは過小評価しているのだろうか。あるいは、巨額の設備投資(CAPEX)はピークに達し、減少に転じるのだろうか。
天まで伸びる木はない。
現時点で少しの警戒感を持つことは健全なことであり、今後のあらゆる決算発表は、懸念の種を見つけ出そうと細部まで精査されることになるだろう。明日発表されるTSMCの決算はその好例となるかもしれない。次の決算発表があるまでは、その繰り返しだ。
市場は「不安の壁」を登るものだ。そして今、懸念すべき材料はいくらでもある。同時に、興奮すべき材料もたくさんある。不安とスリル、どちらが勝るかは、投資家自身が判断しなければならない。



