欧州

2026.07.24 08:00

6月の熱波による英経済の損失は2500億円 労働生産性の低下で

英首都ロンドンで、36度の猛暑の中を歩く人々。2026年6月24日撮影(Richard Baker / In Pictures via Getty Images)

英首都ロンドンで、36度の猛暑の中を歩く人々。2026年6月24日撮影(Richard Baker / In Pictures via Getty Images)

6月に英国全土を襲った熱波により、2400万時間の労働時間が失われ、同国の経済への打撃は11億5000万ポンド(約2500億円)に上ったことが新たな調査から明らかになった。

英グランサム気候変動・環境研究所と欧州・地中海気候変動センター(CMCC)が公表した報告書は、記録的な熱波によって生じた経済損失の規模を浮き彫りにした。両研究所は、英国の成人1950人を対象に、熱波が労働時間、睡眠の質、通勤手段や職場環境に与えた影響について、どのように認識しているかを調査した。その結果、1週間の平均労働時間の減少は0.47時間であることが判明した。これは、3440万人の労働人口に換算すると、約1600万時間の労働時間が失われたことになる。この労働時間の損失は、経済に7億7000万ポンド(約1700億円)の打撃を与えたと推定される。

調査によると、回答者の3.6%(約125万人に相当)が、猛暑のためにその週は全く働かなかったことが分かった。両研究所は、これは800万時間の労働時間の損失に相当し、経済損失は3億8000万ポンド(約830億円)に上ると推定している。さらに労働者の87%が、職場での疲労感から、めまいや失神といった重篤な症状に至るまで、少なくとも1つの健康への影響を報告した。

筆者の取材に応じたグランサム気候変動・環境研究所のエリザベス・ロビンソン所長は、二酸化炭素濃度の上昇が続く限り、熱波の頻度や強度も高まり続けるだろうと述べた。同所長は、熱波が経済に与える損失の規模を示す証拠が増えていることを踏まえ、二酸化炭素排出量削減と気候変動への適応の両面で対策が必要だと指摘した。「私たちの調査は、適応策が猛暑による労働時間の損失を実際に減らし、労働者の健康を守るという説得力のある証拠を示している。労働者からは、勤務時間や勤務場所、通勤方法の変更など、職場で実施した適応策の事例が多数寄せられた。とはいえ、すべての労働者がそのような柔軟性を持っているわけではない」

ロビンソン所長は、雇用主は冷房を設置したり、職場の服装規定を緩和したり、屋外作業を朝や夜にずらしたりすることができると提案した。「それでもなお、疲労が増したり睡眠パターンが乱れたりするなど、労働者の健康と安全に悪影響が出る可能性は依然としてある」

一方、CMCCのシュロ・ダスグプタ博士は、猛暑によって労働者間の既存の格差が拡大していると指摘した。同博士によると、健康状態が悪化したと回答した人の多くは女性や若年労働者、持病のある人で、賃金だけでなく健康面でも格差が拡大している。

英シンクタンク、バーダントも、6月の熱波が英経済に少なくとも23億6000万ポンド(約5100億円)の損失をもたらしたと報告した。損失の原因は生産性の低下のほか、社会基盤や設備の過熱による故障にあるという。バーダントは、欧州で気温が30度を超えると、1度上昇するごとに1時間当たりの平均労働生産性が3%低下すると推定している。

英気象庁は、異常気象が新たな「常態」になりつつあると警告した。英政府の助言機関である気候変動委員会(CCC)は5月、気候変動の影響の拡大が英国の生活のあらゆる側面に影響を及ぼしており、中でも、熱波、洪水、干ばつが3大リスクとなっているとして警鐘を鳴らした。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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